思わぬ再会
「インフェル・・・」
インフェルは、顔だけこちらを見据えると口元のみを上げ笑顔を作った。
「レヴィン王子?どうしました?」
「知り合い?」
看板娘である顔なじみのリリスは、キョトンとした顔で飲み物を運んできた。
レヴィンの向かいに座るトアも、テーブルに頬をつけ呑気にインフェルを眺めた。
「ありがとう、こんな可愛い人がいるなら通おうかな?」
インフェルは、リリスに微笑みかけたが、リリスは愛想良くかわす。
「レヴィンと同じ席にしますか??」
「そうしてくれる?」
レヴィンとインフェルは向かい合い座る。
トマはカウンターに入り口を尖らせながらリリスの手伝いをさせられブツブツ文句を垂れ流す。
ひんやりとした水滴の付いたグラスは、空になり氷を溶かしカランと音を立てた。
腕を組み眉間に皺を寄せ、明らかに穏やかでは無いレヴィンに対し、インフェルは手を組みにこやかにレヴィンを眺め続けた。
何考えてんだ?こいつ??
又、何かしに来たのか?
全く考えが読めない。
「何か仲は悪そうね?」
「だね」
レヴィンが怒りを露わにする相手を見たのは久しぶりだ。
インフェルはレヴィンの様子に構わず唐突に口を開いた。
「前にも思ったけど、レヴィン王子って随分良い顔してるよね」
何を言い出すかと思えば、世間話をしに来たのか?
言葉を返そうと口を開く。
「そうなんです!!レヴィンは本当に顔だけはやたら良くて〜うちのお母さんもレヴィンが通る度喜んじゃって!リリスちゃんなんか自分より肌が綺麗だってちょっとショック受けてるんですよお!?」
「何で今そんな事をバラすのよ!?」
が、なんか煩いのが会話に入ってきた。
しかもお前の母ちゃんの評判かよ。顔だけはってどういう意味だよ!?
開いた口を一旦閉じ、ため息をついた。
インフェルはレヴィンの頰に触れ肌を撫で感触を確かめた。
「うん、確かにすごいスベスベしてるね」
「!?」
ゾワッと鳥肌が全身をなぞった!!
「ちょっとレヴィン、何でそんな肌綺麗なのよ!?何か秘訣があるの!?」
「やっぱり王子は食べてる物が違うのかな」
「レヴィンはお風呂好きだからじゃない??」
ああっ!何か喧しい!?
そんなの男の俺が知るかああ!!
「俺の肌の話はどうでも良いんだよ!?それより何しに来たんだよ!?インフェル!!」
「うん、じゃあ場所変えようか」
レヴィンは警戒しつつインフェルの後に続く。
リリスとトマは顔を見合わせる。
「あれ、誰だったんだろ」
「さあ??友だちでは無さそうね??」
インフェルは森の奥にどんどん入って行く。
戸惑いつつ着いて行くものの、ここはさっき通ってきた道だった。
そこはさっきレヴィンが破壊した岩山だった。
「見てたのか」
「まあね、レヴィン、ちょっと僕と一緒に来てくれないかな??」
「はあ??」
インフェルはにっこりと笑い破壊した岩山に手を置いた。
「じゃないと」
赤い瞳が更に燃える炎の様に光る。
「!!!!」
右肩に燃えるような痛みが発した!!
あの夜の様に怒涛の如く痛みが襲い掛かる!!
堪らず悶絶し、右肩を強く押さえ膝を付き蹲る。
「君には答えは一つしかないよ?レヴィン」
怪しい笑みを浮かべたインフェルを痛みと戦いながら睨み続けるレヴィン。
「さあ行こう??」
インフェルはレヴィンに手を差し伸べた。