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灼熱の紋章を持つ王子  作者: 雪乃
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芽生えた力

あの儀式の日から平和な時が流れた続けた。


レヴィン王子は相変わらず、城におらず、どこで何をしているのか謎だった。


灼熱の紋章はやはり鮮やかな光を称え存在を主張していた。


サーマスは、儀式の日からレヴィン王子の事を見直し、あまり干渉しなくなった。

あんな謎の男を前にしても、怯む事無く冷静で勇敢なお姿、サーマスは意識が薄らいでいる中で目に焼き付け見ておりました。


国の人々の事もちゃんと考えてお出でだった。

王子の無事を喜ぶ国の人々の歓喜の声が今でも耳に残っている。ただ遊び回ってるだけではあそこまではならないな。


ただ肌身離さず持ち歩いていた愛刀が無くなり、少々元気の無い様子。


城の兵士から借りたり、木刀をひたすら振るう王子を見てると、何とか新しい物をご用意してあげたくもなりますな。



レヴィンは、人気の無い、城下町からも離れた岩山に来てきた。


手には、兵士から借りた練習用の剣を持っていた。


灼熱の紋章を刻まれ、あの苦しんだ一夜から妙に腕が疼く。

いや、腕だけじゃ無く体全体に訴えかけてくる、この溢れ返りそうな力を早く出させろ、と。

まるで、自分の中で大人しく寝ていた化け物が突然目を覚ました様な、精神まで支配し兼ねない危険な物。



レヴィンは剣を構え、暫く素振りを始める。

だが、こんなんじゃ物足りない。


ふと、このそそり立つ岩山を、睨むように見上げた。


思い切り、この衝動に似た物をぶつけたい・・!!

そう何かに駆り立てられる。


レヴィンは深呼吸し、気持ちを落ち着かせ、岩山に向き合い、一気に駆け出す!!


俊足に風を切って行き、一心に岩山に向かい、何も考えず本能の赴くままに体を預け、刃をうねらせ十文字に斬りつけた。


金属音が鳴り響いて、確かな手応えを感じる。

岩山には十文字に切り傷が入る。



「うわ!?」


だが、剣が耐えられなかったのか、粉々に粉砕され、破片が飛び散り、無残にも残骸が地面にバラバラと落ちていく。



ピシッ・・、ピシッ・・。

何か、岩山から妙な音が聞こえてくる。


ま、まさか・・・な?


恐る恐る岩山を見上げる。


岩山は十文字に亀裂が入った所から更に亀裂が広がり、ボロボロと次から次へと岩盤が崩れて来て、まるで人が前のめりに倒れて来る様に、頭上から、レヴィンに向かって来る。



「ギャアア!?」


慌てて逃げると、そそり立つ岩山はレヴィンにより足場を崩され、轟音を立て、呆気なく崩壊した。


その衝撃音は凄まじく、城下町は愚か、城にも響き渡り、何事かと国中が騒ぎ出す。



「ヤッベエエ〜〜!!」


こんなの俺がやったってバレたら、大騒ぎになる!!


レヴィンは城下町にある、とある店に慌てて駆け込んだ!


「レヴィン!どしたの?」


今日も、レストランに入り浸っているトアは目を丸くする。


カウンターにも、顔なじみのリリスがグラスを拭きながら、驚く。


「ちょっと匿ってくれ!!」


リリスの立つカウンターにしゃがみ隠れる。


何やら外が騒がしい。

又この、王子が原因か。

リリスは、ため息を吐きつつ澄まし顔で仕事を続ける。


大怪我をして生死を彷徨ったかと、懲りずに思ったら又トラブル。

もう、庇わずに差し出してやろうかしら。


リリスは家族とこのレストラン・ルナを経営する看板娘だ。

この店にトア含め、入り浸っている連中と仲良くなり、しょっ中レヴィンは顔を出していた。


案の定城の兵士がここに、王子を探しにやってくる。


「レヴィン王子は来ておりませんか!?」

「来てませんけど?」


リリスはテーブルを拭きながらクールに答えた。


トマも素知らぬ顔してカウンターにいるレヴィンを横目で見る。


「営業中失礼いたしました!!」


兵士は律儀に敬礼をし、慌ただしく出て行った。



カウンターからひょっこり顔を出すレヴィン。


「又なんかしたの??今度は何?」


リリスは腰に手をやり睨みつける。


「い、いや〜別に何もしてないんだけどよ、逃げてきた」

「何もしてないのに、あんなに探しまくる訳ないでしょ!?」

「ま、まあ。ちょっとな」

「全く!とんだトラブルメーカーね?」


「レヴィン〜!?会いたかったよ〜!!」


昔から顔なじみである、あどけない顔のトアはレヴィンに抱き付き頬擦りをする。


「気持ち悪い」

「良いじゃ〜ん!?僕はレヴィンに会いたくて仕方無いのにぃ〜!?」


「あんたらはどんだけ仲良いのよ」


このお騒がせ王子のレヴィンと庶民中の庶民トアは何故だかウマが合う。

最近仲が良すぎてトアのスキンシップが過剰になりつつある・・。



トアとリリスとで、話していると店に客が入って来て、リリスは出迎えた。


「いらっしゃいませ」

「冷たい飲み物が欲しいんだ」

「はい、じゃあ今空いてるのでお好きな席にどうぞ?」

「ああ」


客はレヴィンの座る席の後ろに腰掛けた。


「やあ、王子」


背後から響く聞き覚えのあるその声にレヴィンは貫かれた様に硬直した。


「何でお前が・・・」


忘れ様にも忘れられない、圧倒的な力の差でこの紋章を刻んだ張本人インフェル。

燃えるような赤い髪に、切れ長の目、口元は思考が読めない作った微笑を常に浮かべている。


偶然か必然かどちらにしても喜ばしくない再会にレヴィンは、ただ時が止まったかの様に困惑していた・・・。
















































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