出発
今回はあまり話が進行しなかったです(笑)
ズバズバすすめるのもいいんですがそれをしちゃうとあんまり文字数が少なくなっちゃいますのでw
「月華ちゃん!私旅に出ます!!」
智癒さんは決意を伝えにまず柿音のところにむかった。
柿音はさして驚いた様子もみせずに、本にひたすら読みふけりながらこっちに一度も目を向けずに答える。
しかし、おれは全く本になど集中せずこっちの話を聞いていたかなんてわかっていた。
「柿音。本が逆だぞ」
そんな状態で本を読んでいるやつがいたらよっぽどの変人か、全く本に集中してないかのどっちかであろう。
その指摘を受けると、柿音の顔は羞恥で頬を朱に染めながら慌てて本来の向きに戻す。
しかし、もはや今更変えたところでもう既に意味をなさない。
智癒さんに至っては、クスクスと笑いだしたほどだ。
「それでよ..柿音?お前も一緒に来てくれないか?」
「智癒が行くなら行く」
即答だった。さすが、柿音。
智癒さんのことだったら地獄でもついていきそうだな。
「.....ただし葛城はじゃま....」
うん。要約したところ、3人で旅するより二人っきりで旅したいわけね。
おそらく、この要求が飲まれない場合昨夜みたいな仕打ちを受けることになるだろう。
「眠くんは必要です!そんなこと言わないでください。そんなこと言うなら私と眠くんだけでいってしまいます」
おれが、反撃しようと思ったら思わぬ伏兵が現れたのだった。
え...智癒さん??
さすがにいいすぎじゃ...
そろそろおれは止めようと思ったがヒートアップした智癒さんを止めるものはもはやだれもいなかった。
「......智癒.....ごめん......」
「私じゃありません。謝るなら眠くんに謝ってください。」
「智癒さん..?おれは別にそんな怒ってなんて...」
「もうっ。智癒さんなんてかたっくるしい呼び名はなしにしてくださいよ。智癒でいいですよ。智・癒・で♪」
「ええ..でもいきなりそんなこと...」
「智癒って呼んでくれないなら私だけで旅にいっちゃいますよ...?」
そ..それはダメだ。
し...しかし、女の子の下の名前を呼び捨てにすることに抵抗があるおれにはなかなか恥ずかしいことであった。
「ち.......智癒?」
おれは勇気を振りしぼり少し掠れ気味の声であったがなんとか言えることができた。
「ふふっ。それでいいです。ちなみに私が下の名前を呼ぶことを男の人に許可したのは私の初めてだったんですよ...?」
は....初めて!!?初めてという響きは素晴らしい。
女の子が言うとあたかもそれが恥ずかしい表現に聞こえてしまうのだ。
まさに魔法の言葉。
「ふふっ..私の初めて大事にしてくださいよ....?」
あれ??おかしいな。智癒ってこんなキャラだったっけ...?
もはや明らかにこのいいかたは狙っているとしか思えないぞ!
「は.....はい...」
おれはもう明らかに動揺しながら肯定することぐらいしかできなかった。
わかってしまった。このパーティが誰が一番の強者なのか...
強い..強すぎる...もはやおれには...打つ手なし.....
「次は、月華ちゃんです。まだ眠くんに謝っていませんよ」
ギクッ!!っていう擬音が響いてきそうなぐらい慌てていた柿音であった。
出来れば、今の話でなかったことになることを願っていたのであろう。
「........ヵ...ッ....ラ...ギ....ゴ...メ..........ン.......
...ナ....サ..............ィ......」
いつも、声が小さい柿音がさらに声が小さく震えながら発した。
「なにをいったのですか?きこえません」
も...もういいですって智癒さん!!
おれはとっくに許しましたよ!!?
しかし、もう智癒の目には許そうとするような優しい目は消えていた。
「.......カツラギ.......ゴメン......ナサ......ィ」
「なにをいってるのですか?さっきから全く聞こえないですよ?」
いやいや、聞こえていますよね!!?
むしろいつもより大きな声ですよ!!?
しかし智癒さんはとどまることをしらない。
「....カツラギ!!ごめんなさい!!」
いつもの柿音じゃ想像つかないことぐらいの大きな声だ。
こんな声、出会って初めて聞いたことがするよ...
すっげぇ不謹慎だと思うけど結構柿音っていい声してるんだなぁ..と少し感心してしまった。
「そろそろ聞こえましたか?眠くん?」
「いや..!もうとっくに聞こえて...」
「それは良かったです。じゃあ改めて旅の出発です!行きましょう!」
智癒さんはもはや有無を言わさぬ態度で旅の支度をし始めた...
女の子は.....強いなぁ....
「葛城....絶対.....殺す...」
こっちの女の子もべつのいみでつよいなぁーとおれはその場から逃げるように部屋においていたカバンを取りに行くのであった。