智癒の過去
智癒さんは逃げるように、自分の部屋へ向かった。
おれは追いかけるようにして智癒さんの部屋に入った。
...ここが智癒さんの部屋...!
やはり女の子らしい部屋だった。
だが、今はそんな智癒さんの部屋を楽しんでみている状況じゃない。
部屋については一切触れず先ほどの理由を聞き出そうと頑張ってみる。
「...別にたいしたことじゃないんです...」
智癒さんは消え入りそうな声で自分に言い聞かせるかのように話し出す。
「眠くんの顔が...眠くんの顔が..」
俺の顔?俺の顔になにか原因があるのだろうか?特に面白い顔というわけでもなく、いたって普通の顔をしていると自負していたのだが...
「あの人に見えてくるんです...」
「あの人...?」
あの人とは一体??
「あれは、まだ私がこの世界に入って間もない頃でした..」
ー..ー..ー..ー..
「ここは...どこなんですか?」
ある日いきなり、私の病室に神様となのる人物が欲しい魔法をいえといってくるのです。
てっきり私は夢でも見てるのかと思い、その時思った魔法を口にします。
その魔法は、治癒魔法。
理由なんて特になかったのです。私の名前が智癒っていう名前だったし、それに私は元の世界では病気がちだったのです。
生まれつき、足が悪く車椅子がしながら学校にいき、もちろん運動などもってのほか...
それに他にも様々な病気を患っていて病院暮らしの毎日でした..
こんな病気治癒できればいいのに!
そう思ったから言っただけなのです。
そうしたら、いきなりこんなわけのわからない世界に飛ばされて...
足は何故か治っていたのですが、
その足が動かないほど、怖くて...不安で...心配で...
そんな時、私の救世主が現れたのです。
「もしかして、新しい冒険者か?おれの名前は 空洞寺 空。いずれ、神様をぶっ殺す男の名前だ!」
「えっ..えっ...」
私は困惑するばかり。いきなり神様をぶっ殺す男となのる人が話しかけてくれたのです。
「俺たちのパーティ、SOLAに入らないか?おれたちは来るもの拒まず。3食風呂付優良パーティだぜ!!」
「は...はい!」
こんな私を救ってくれるの..?
それが..私の初恋でした。
ー..ー..ー..ー..
「その空洞寺って人が...?」
「はい、眠くんみたいな人でした。だけど..だけど...しばらくたったあと、悲劇は起こるのです..」
ー..ー..ー..ー..
それから、しばらくたって、冒険はつづいていき困っている人がいるたびに仲間にしていた空さんのおかげもあってパーティSOLAはまたたく間におおきくなっていきました。
当時、神殺しに最も近いパーティとまでいわれるようになりました。
そして、ある日のこと。
いつものように困っている人がいたのです。
もちろん空さんは手を差し伸べチームに入るよう勧誘したのです。
しかし、その手は空を切りました...
空さんのお腹には、刃が鋭く尖ったナイフ。
油断している人1人殺すのは造作もなかったのです。
「悪くない....人生だったな...」
最後にそういいのこして、空さんは消えて行きました..
ー...ー..ー..ー..
「なんてやつだ!せっかく優しくしてくれた空さんにナイフを突きつけるなんて..」
「後から知ったことによると、その人は別のパーティの一人で前々から勢いずいていたSOLAのことが気に入らなかったようなのです.
...」
「許せねぇ..許せねぇ...」
「そこから、後はもう酷いものでした..」
ー...ー..ー..ー..
そして、次にSOLAをまとめることになったのはその時、副団長をやっていた 夜鬼と呼ばれる男でした。
その男は、かつての団長だった空さんとは間逆といっていい性格でパーティが強くあるためには弱い奴はきりすてるという方針でした。
そのため、子供達や魔法がたいしたことはない人たちが次々と切り捨てられました。
そして、私の番が来たのです。
私の他にも回復魔法ができる人がいたのです。しかもその人は攻撃にも参加できる...
回復しかできなかった私はお荷物だったのでしょう..
「貴様のような弱者はパーティにはいらん。さっさとSOLAから脱退しろ」
脱退...脱退....脱退...脱退...
私は逃げるようにその場を後にし、そして必死の思いでこの場所に戻ってきたのです。
理由はただひとつ。
あの時、空さんに受けた恩を返すため...
私はあの時の空さんの面影を探すように初心者の人をみかけたら助けるようにしたのです.....
ー..ー..ー..ー...
「 夜鬼とかいうやつは一体どこにいるんですか.....?」
「 夜鬼さんたち、最強の布陣で揃えたパーティは実際に神様を倒したそうです...そして、願いは自分の王国を作るといって神様が住む場所から近いところに自分の王国を作っているのです...」
「よし...決めた...」
おれが決意する。
これを乗り越えなきゃ智癒さんはトラウマを消せない!!!
「智癒さん...神様を殺した後、夜鬼をぶっ殺しましょう」
「え..でも、相手は神様を殺した実力で、しかも私じゃ足手まといに...」
「ならない!!!」
おれが、智癒さんの弱気を否定する。
「智癒さん、もう一度だけ冒険してみませんか?ぼくと...一緒に!!」
智癒さんは涙を流す。
だが、この涙はおれは拭わない。
嬉しいときの涙は流していいものなのだから!
「はいっ!!!!!」
これで異世界にやることがまた一つできた。
俺たちの冒険はここから始まるんだ!!