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柿音の過去2


鼓動が加速する。関谷君は私の為にこんなに怒ってくれるんだ。

自分でも自分の為にこれほど怒ったりはしないだろう。

私以上に私を大切にしてくれている人がいるんだ。

もう、鼓動が張り裂けそうだ。

その時、私は確信に近い感情を覚えていた。

こんな経験は今までしたことが無い。

・・だけど、はっきりわかる。


これが・・私の初恋だ。


・・そして、何時もの4時間目を終えるチャイムが鳴る。

何時もは、嬉しくもなんともなかったこの時間。

私はお弁当を広げるふりをして・・戻す。

その、行動を怪しまれない程度に繰り返していた。


・・何故なら、関谷君と一緒の時間に食べたかったからだ。

私は何度も意味のない繰り返しをしていると・・


「すまんすまん!柿音!少し遅れた!」


何時ものように、お弁当を片手に机を拳一つ分程空けてくっつけて来る関谷君。


「別に・・待ってない」


嘘だ。私は自分で自分のセリフにツッコミを入れざるを得なかった。

意味のない動作を繰り返す程待っていたのにいざ、関谷君を前にすると思っていることと反対の事を言ってしまっているのだ。


・・これが世にゆうツンデレってやつなのかもしれない。今まで本などで見てきたツンデレっていう属種に私はいつも疑問を浮かべていた。

何故その人の事が好きなのに反対な事を言ってしまうのだろう。

本当に意味がわからない。そう、思っていた。


・・だけど今なら意味が分かるどころか共感してしまう程だ。

好きだけど・・こんなに私の中では関谷君が好きな気持ちで溢れているのに態度はどうしても優しくできない、素直になれない。


・・だけどほんの小さな勇気を私は振り絞ってみる。そうすれば何かが変わるわけではないだろう。

これは私の自己満足なのだから。


「・・もっと席近づけてもぃぃけど?」


私は冷静をあくまで装いつつ、提案する形にした。

これなら、私がガッついてるとは思われないと思える最大限の努力だ。

少し声が震えてしまったがこれがもう私の限界だ。


「まじで!!?」


関谷君の表情が純粋な笑顔に変わる。

眩しい、眩しすぎる。


私の仏頂面とはまさに正反対だ。


「よいしょっと!」


関谷君は満面の笑みで、電光石火のごとく机を横に近づけた。

これで、本当に一緒に昼ご飯を食べることになるんだ。

私は回想する。ほんの少し前の私なら考えすらもしたことなかっただろう。


いつものお弁当。内容も特に変わりがあるわけでもない。それなのに・・それなのに・・


こんなに温かい弁当は初めて・・!


それから、私は本は卒業した。


だって・・今私は自分の世界を生きているから!!


本なんて読んでいる暇なんてない。

他人の世界を覗いている時間なんてない。

自分を・・磨かないと。

関谷君に相応しい女の子に。


その一大決心を決めた翌日から、私は今までの自分を大幅に変えることにしたのだ。

今まで全く興味がなかったクラスメイトとも積極的に話せるようになった。

最初のうちは、クラスメイト達にも戸惑いの色が隠せていなかったが諦めずに話しかけることを目標にしているとしゃべれる友人程度ならできた。

その次に変えようとしたのはファッションだった。

今まで読んでいた本の内容を忘れるほどファッション雑誌を読み漁った。

そして、実際服屋に行って服も買ってみたり全く興味のなかった化粧だって挑戦してみた。


あまり私は厚化粧をしたくなかったのでいわゆるナチュラルメイクに挑戦したのだがこれは大成功だった。


やはり、ノーメイクとナチュラルメイクは雲泥の差だ。


関谷君に可愛いねって言われた時は顔が真っ赤になってもうなにも考えられなくなったほどだ。


・・恋は人を変えるなんて言うのは信じてはいなかったがどうやら本当のようだ。

現に私は変われた。


後は・・最後の変化。

勇気。つまり、告白するということだ。


私は告白する。それで最後の変身。昔の私と決別するための最後の砦を突き破りに行くのだ。


いつもの・・お昼ごはんの時間。

いつものように関谷君は私の席に自分の席をくっつけて話してくれる。

時が遅く感じる。時間だけが一向に過ぎてゆく。


ただ、一言昼休みに屋上に来てというだけだ。

告白は屋上でっていうのは私の決定だった。

屋上は滅多に人が集まらない最高の穴場スポットだ。

告白するならあの場所意外ありえないでしょうる

他の世間話などはだいぶ出来るようになった私でも恋話になるとやはり昔の自分が出てきてしまうのだ。


私はそんな自分と決断するために、勇気を振り絞る。

緊張で身体は最早人間としての役割を果たしていない。

それでも・・


「あのさっ!!今日の昼休み・・屋上!!きて・・・・くれ・・ない?」


・・言えた。言葉は少し詰まったし拙かったかもしれない。

それでも、私は自分の気持ちは伝わったと確信めいたものを持っていた。


「あぁ、わかったぜ!」


本当に私の真意が分かっているのかは分からないけど大きくうなづいてそのまま昼休みに間に合うように急いで昼ご飯をかきこんでいった。


ーー昼休み。

色々正念場だ。私は気持ちを引き締める。

恐らく先に関谷君は向かったから待っているだろう。

正直今からでも逃げ出したくないといったら嘘になる。

やっぱり何にもないと今から訂正したくなる。

だけど、今ここで逃げ出したら一生私の胸の内を打ち明けることはできないだろう。

そんな気がするのだ。


屋上に着いた。このドアの向こうには彼がいる。

ええい、私は変わるんだ。

半ばヤケクソ気味に私はドアを開ける。

視線の先には・・ 関谷君。


頑張れ、私。変わるんだ、私。


「関谷くん!!私貴方の事が好きです!」


もう、後戻りはできない。逃げられない。

私は変わるんだ


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