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妖奇譚  作者: kazu
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プロローグ『月見』

久しぶりの投稿です。勉強のつもりなので、少しでも評価等を頂けたらと思います。

広い部屋の中、一言、呟きが漏れる。

「悪くない」

白い指が、小さな顎へと添えられる。続いて、華奢な首も、僅かに傾く。やがて、指はそっと離され、頭が左右に軽く振られる。

 「いいえ、違う。とっても良いの」

 面を上げる。見るからに冷たそうな床の上、両膝をついた姿を、静かな光が照らす。露わになった容姿を、誰が覗いていようと構わないとばかりに、自然な姿を保っており、隠す仕草も見受けられない。

実際に目にする稀有な者がいたとして、表現する。長い黒髪について云えば、束ねず、床へ只広げていても、流麗さの消える事はない。顔の作りからして、和洋付かずとも、極めて端正である。一つずつ挙げても、遥か年代を経た宝石の如き、深い輝きを秘めた蒼い瞳、『娘』を扱った中の名画の如く、鮮やかに色づいた頬、魅入った者には等しく乾きを促す、潤いと柔らかさを併せ持つ唇等、並外れた魅力を備えている。

総じて万人の認めざるを得ない、美しき少女の形をした彼女は、額に片手を翳した。

眩しく目を細めて、目の前を見据える。 

大きく長方形に縁取られた夜景があって、より宙を臨めば、遥か空に浮かぶ巨大な球体のみが、静かに輝きを放つ。 

 「只、見ているの? 時に隠れて。全てのもの、営みを。ずっと」

 謳う様に言って、可笑しそうに微笑む。思い立った様に、片腕を宙へと伸ばすと、手を広げた。細く長い指を妖しく動かす。時には掴む様な仕草もみせる。また、微かな風が流れているのを感じ取った様に、身を軽く揺らして、夜の空気を存分に吸い込む。

体を動かし始め、幾らか時を経たのか。頃合であるかの様に、視線を下ろす。闇を纏いつつ、仄かに明るさを宿している山野を見渡す。

彼女の瞳が更に遠く、全く別の対象を見るかの様に透き通っていく。

 「整っているのに、歪んでいて、上手く出来ているの。数の分だけ営みはあって、数多の業は尽きず。超然とした貴方は、確かに綺麗なもの」

優しげな声調であり、指の動きも、いつしか緩やかなものとなる。口を閉じると同時に、手遊びも終え、片腕は脱力し、そっと降ろされる。

 「複雑な心。本当、凄い、と思うけれど」

 一つでも残念に思う事があった様に、瞳を閉じる。たっぷりと間をおいた後で、再び視界を開く。碧い瞳には、強い意志が宿り、形良い唇は、言葉を紡ぐ。

「触れたいの」

 頬はより紅潮し、目は潤んで、声は掠れる。

 「交わり、感じて、ほんの少しでも良いから、何かを変えてみたいの」

 迸る想いに釣られるかの如く身じろぎする。紅い薄布が、自然と肩からずり落ちた。小柄な割に、極めて肉付きの良い肢体が、また新たに蒼白く染められる。可愛らしい口唇からは、甘い吐息が漂っていく。沈黙し、もはや美しい彫像へと化したと思われる程に、時が経つ。

「だからお願い」

 返る言葉のない問答の最後、再度月を見上げ、無邪気に素直な言葉を綴る。

「見届けてね。惑わし、愉しむ。とこしえに快楽する姿を」


すでに書いてある時点では、45話で完結予定です。変更も、あるかもしれません。手直し等して、早めに投稿していきたいと思います。

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