少年と亡霊王子 4
こんな拙い作品を、読んで下さる方々がいらっしゃる事に、感謝します。
本当にありがとうございます。
『あ、大事な事忘れてた。カナメちゃん、あそこ見てくれる?』
王子が指差すその先、ベヒーモスが罠にかかった穴の上に、光の球がぽっこり浮かんでいた。
『あの光に掌を向けて、「来い」って念じてみてくれる?』
「いいけど、なんなのあれ?」
『あれがドロップアイテムだよ。手に取ると、光から物に変わるんだ。五分くらいすると消えてしまうから,早く取った方がいいよ』
言われた通りに掌を向ける。
…来い…
念じると、光はぽよぽよ浮かびながらこちらにくる。
掌に当たると、光が一段と強まった。
『何が出るかな、何が出るかな』
王子が覗き込む中、光から何かがボトリと落ちてきた。
骨付き肉と、革だな。
「へえ、アイテムってこうやって出てくるんだ」
『モンスターは、命が尽きると体内のマナが変質して、体の一部をアイテム化するらしい、てのがダヴァンク族の学者が言い出した理屈らしいけど、まあ謎だわな。』
「ダヴァンク族?」
『塔型ダンジョンに住んでる種族だよ。頭が良い奴や、魔法が得意な奴が多いんだってさ。ほとんど塔から出て来ないらしいから、俺も見た事無いけど。何でも、頭に生えてる触覚でマナに触れることで、世界の理を知るとかなんとか。』
「頭に触覚…もしや身体は緑色ですか?」
口から卵とか生みそうである。
『?緑はないんじゃないかな。見た目は純粋な人族と変わらないらしいし。それよりも、優しい優しい俺様が、またもやカナメちゃんに魔法を教えてあげようじゃないか』
「マジすか。今度はどんな魔法ですか、師匠?」
『クフフ、泣いて平伏して、足に縋りつけ‼今度の魔法は「インフォメーション」だ‼』
一々魔法の前に言う戯言が、どんどん酷くなっていってるのはスルーの方向で。
「また地味な魔法じゃないんすか、師匠」
『いいから、つべこべ言わずにやる。アイテムに向かって言うんだよ』
「はいはい、「インフォメーション」…お」
唱えてみると、アイテムの上に名前が出てきた。
ベヒーモスの肉と、凶獣の革ね。どうやら、それが正式名称らしい。
『名前が出てきたアイテムを手に持って、更に「インフォメーション」を唱えると、頭の中に詳しい情報が浮かぶよ』
へえ、と思いながらやってみると…確かに、頭の中に、情報が入ってきた。
ベヒーモスの肉・・・凶獣の骨付き肉。焼いて食べると美味しい。
だってさ。
「なかなか便利な魔法じゃん」
『だろ。ちなみに一度倒した事があるモンスターに、「インフォメーション」を使うと、名前が出てくるよ』
「へえ」
『経験値ってのは、つまる所倒したモンスターのマナの事らしいんだけど、そのマナの中に倒したモンスターの情報が刻み込まれてる。「インフォメーション」をを使うことで、倒した事があるモンスターの名前が分かるようになるのは、そういう理屈らしいよ』
「ちなみに「インフォメーション」を人間に使うと?」
『何も分からない。人間には効かないよ』
そいつは、朗報。ジョブがたまごだってバレるとか、嫌すぎる。
『なんにせよ、これで食材ゲットだぜ!!カナメちゃんやったね』
「飯が食えるのは素直に嬉しいけど、生じゃなあ。焼くと美味いってなってたし」
『だよねえ、その為にも火魔法と、後、水魔法も早急に修得しないとなあ。水が飲めないと死んじゃうもんね。カナメちゃん、さっきレベル上がってたろ。MP幾つになってた?』
「えーと、「ステータスオープン」…5、だな」
『うーん、ギリギリいけるかあ。よし、いっちょやってみっか』
「お、やっと魔法らしい魔法が使える様になるのか。んで、魔法ってどうやったら使えるの?」
『使いたい魔法をイメージして、名前を言う』
「え、それだけ?」
『もうちょっと複雑だけど、基本的には。詳しく言うと、火魔法が使いたかったら、火を強くイメージする。なるべく具体的に。おへその辺り、丹田を意識して。上手くいくと、プラーナの色が変わるのが、分かる。理解できる。魔法を出すのに一番適しているのは、手なんだけど、色の変わったプラーナを手に移す様にイメージして、定められた魔法名を言う』
「定められた魔法名?」
『うん、魔法の名前は、一つ一つ決まっているんだ。他の名前じゃ、どんなに上手くプラーナが練れても、発動しない。名前を付けたのは、「始まりの魔法使い」って言われてる』
「始まりの魔法使い…」
ヤバイ、物凄く中二くさい。ドキドキする。
『全ての始まり、生みの親、魔法の理を解いた者。御伽噺に出てくる英雄で、歴史書に出てくる偉人。彼の魔導書は、入門書であり、実践書である。冒頭の一文に「理を知り、あらましを裡に描け。真名を呼べば、現はその姿を変える」ってあるんだけど、それが魔法を使う上で一番重要なんだってさ』
「へえ、そんな人がいたんだ」
『大昔の人だけどね。何でもダヴァング族だったらしいんだけど』
頭に触覚の生えた偉い人ね。界〇神みたいな感じか。どうしよう。
『よし、とりあえずやってみよう。まずは火魔法からにしようか』
「よろしく、お願いします」
姿勢を正す。…しかし、本当に俺の手から、火なんか出んのかね。ドキドキしてきた。
『集中しやすい格好とかあるか?できれば最初は、リラックスしてた方が良いんだけど』
「わかった」
言い、背筋を伸ばし胡坐をかく。
「準備オッケーです」
『良し。じゃあまずは、火をイメージしてみよう。丹田に意識を集中してな』
「了解です」
目を閉じて、火をイメージする。火、熱い。火、燃える。メラメラ燃える。
…んー、何も変わって無い気がする。上手くイメージできてないのかな。
あ、そういえば丹田に意識を集中する、って言ってたっけ。
よし、深呼吸してもう一回だ。
…火。風もないのに揺れる炎。赤い、炎…
あっ、今色が変わった。腹の中にある、無色の円形の渦巻きが、確かに赤く染まった。
『色が変わったかい?』
「うん、今渦巻きが赤に染まった!!」
『渦巻き…それが、カナメちゃんのプラーナに対するイメージなんだね。それは大切に覚えておいた方が良いよ。それじゃあ、、その渦巻きを掌に移すイメージをして』
腹から胸、腕を通して右の掌に、赤い渦巻きをイメージする。
…熱等は感じ無いけど、確かに掌にソレを、感じる。
『それじゃあ、左手に肉を持って…用意はいいかい?リピート、アフターミー。俺は今、猛烈に熱血しているっ!!「ファイア!!」』
「ファイア!!」
唱えた途端、ゴォーーー、って感じに掌から、50センチくらいの火柱が吹き上がった。
…やべえ、俺、今、魔法使ってる!!
掌に熱を感じないのが不思議だが、確かに炎は出ていた。というか、良く見たら掌から直接出ているんでは無いみたい。掌から3センチ程の所に赤い紋様が浮かんでいる。炎はそこから出ていた。
『カナメちゃん、肉、肉焼いて!!早くしないと消えちゃうから!!』
やべっ、魔法に感動して忘れてた。
「王子、どれくらい焼けばいいの!?良くわかんないから教えて!!」
軽くパニックになりながら肉を焼く。火が当たりそうになった左手は、熱を感じていた。
『外側はこんがり焼いちゃっていいよ。その内肉汁が垂れてくるから、そうそう回しながら焼いて…おし、そんぐらいでオッケー。火は「消えろ」って思えば消えるから』
火を消して、手元に残ったのはこんがり焼けた肉。見た感じ牛肉の様に見える。すんごい良い匂いがする。
『さあさあ、召し上がれ』
「いただきます!!」
言うなり肉にかぶりつく。
…うんまい、ナニこれ、とにかく美味い。今まで食べてきたどの肉より美味い。味付けなんてしてないのに、とにかく美味い。…とりあえず、食う。貪り食う。
…早々に無くなってしまったそれを、残念な気持ちで見つめる。
『美味かったか?気持ちは分かるが半日後まで待ちなさい。さて、お次は水だな。調度良いから、革の形を整えて椀の代わりに使おう』
気持ちを切り替え、再び胡坐をかく。
『良し、準備は良いな。お次は、水だ。水のイメージ』
…深呼吸。腹の渦巻きに、水を重ねる。
水。たゆたう、水。小川を流れる、清らかなる、水。母なる、水。
…来た、色が変わった。掌に移し、王子に告げる。
「王子」
『早いな、カナメちゃん魔法の才能あるかもよ。…それでは、ご唱和ください。水でもかぶって反省しなさい!「ウォーター」』
…どうでもいいけど、魔法を言う前の台詞はやめろ。大丈夫なのか?
「ウォーター」
左手で椀を押さえて、唱える。結構な勢いで水が噴出した。やはり、掌から3センチ程、紋様が出ている。今度は青だ。椀がすぐ一杯になったので、魔法を消す。
水を飲んでみる。考えてみると、起きてから何も飲んでいない。しかし、それを差し引いても、感動的な美味しさだった。余った水で顔を洗う。すこぶる気持ち良い。
『カナメちゃん、MP確認してみて』
言われて、確認する。
「2になってた」
『3しか減ってない、か。燃費もいいのかな』
「魔法が苦手な人もいるんだっけ」
『魔法と言うより「外気」ね。て言うより、俺たちみたいな純粋な人族には、「外気」が使えない奴の方が多いよ。亜人種の方が、魔術師系は多いよ。人族は、「内気」を使う方が得意みたいだね。』
「内気」…戦士系が得意だっけ?
『「外気」は問題なく使えたから、次は「内気」だな。…て、いうか疲れたろ。一度寝た方が良いよ。MPも回復させた方が良いしさ。半日経ったら起こすから』
そういえば、起きてから結構色々あった。言われて気付いたが、若干疲れてる。
「寝させてもらう事にする。…おやすみ」
『おやすみ』
異世界に来て初めての眠りにつく。…起きたら俺は、どこにいるのだろう?