狭間にいる有川くん
有川は孤独だった。
別段孤独であることが苦痛というわけでもない。ただ,独りでいると周囲の見下すような目線が痛くて,どうにか改善しようと志してみた。
ということで,久しぶりに高校の友達と連絡を取ってみたら,意外に誘いに乗ってくれた。大学という場所は結構暇を持て余している奴らばかりらしかった。忙しいといっても他校と女子と合コンやら飲み会で多忙といった感じ。
高校を卒業して専門学校を進んだ有川には,特別何か考えがあった訳ではなかった。ただなんとなくだ。不況である今,とりあえず何か資格とかそんなものを手に入れとけば就職に有利なのかなあぐらいだ。そんな適当な志だから勉強にも身が入ってはいないが。
そして,まずは山田の部屋に行ってみた。高校の頃はなんというか真面目の塊みたいなやつだった。あまりに融通がきかないせいで,クラスメイトからは少しばかり忌避されていた眼鏡男。いい口が他人を見下すような奴だが,話してみると面白いやつだったから今でも多少連絡のやり取りをしている。
そんなやつの家にいって驚いたのが,まずは部屋の中にあふれかえっているグッズの数々だった。オタクというやつだろうか。異常に瞳が大きかったり,何故か頬を染めていたりしている女の子たちのフィギュアやらBDやらポスターが部屋を覆っていた。
どうせ,お前も馬鹿にするんだろう?
と,こちらは何も言っていないのに卑屈に笑う山田を宥めながら,疑問を投げかけてみた。
これを集めてどうするのかと?
何やら地雷を踏んだようで憤慨されてしまったのだが,収集することに意味を見出しているらしい。どうにも作品の中身にはあまり興味がないようだった。今まで真面目すぎた反動がでたらしく,娯楽作品には一切触れてこなかった山田。たまたま深夜に放映していたアニメを観て,最近の映像グラフィックに驚嘆した山田は,猛ハマりしたらしい。
なんだかよく分からない単語を一斉に並びたてながら,矢継ぎ早に話す。というか,話すスピードが速すぎてあんまり聞き取れない。そのくせこっちが話を振ったらなぜか無視をしてしまう。なんだか自分の中にある台本をずっと読んでいる感じだった。
山田とはそのまま,ぐだりながら,ぽつぽつ話しながら,TVゲームをしながら適当に過ごした。最初はこういうアニメがあるとかいう話をしていたんだけど,こちらが詳しくないせいで盛り上がらなかった。
そういえば山田は別れ際にこういった。
――リア充と過ごすのは面倒くさい。だって,知っていて当たり前の単語の意味を訊いてくる。いちいち訊かれるこっちの身にもなれよな。
有川はそうだな,と言って,次の友達のところにいった。
次は川野と鈴木と飲みをすることになった。
二人とも高校三年間部活をやってきているから,かなり体格ができていた。大学でもスポーツをやっているせいか,そっちの話が多くなってしまった。二人とも同じ大学に通っているから共通の話題で盛り上がるのは自明の理だった。
飲みの席でぽつんといる有川に気を使ったのか,気遣いのできる川野はせっせと話題を振ってくれた。当たりさわりはないが,こちらも話題に乗れるような話。そういう時は,川野の気遣いに気づかない振りをして一生懸命話してみた。
でも,川野と鈴木の話が時間を経つごとにぽつりぽつりとなってきた。ちょっとばかり沈黙になるときもある。怪訝に思いながらも,なんとか三人が盛り上がれるような話題,高校のころとかの話を提供してみた。それでも一瞬盛り上がっても,なんとなく違和感がある。
なんというか,山田のときは,話がディープ過ぎてとっつきにくかった。でも川野と鈴木の場合は,話題が軽いというか,浅いというか。とにかくどんどん話題が飛んでいくので,長時間もたない。もたないという表現は変だか,とりあえずあんまりいい雰囲気とはいえないままにその日の飲み会は終わった。
そういえば,去り際に二人はいった。
――オタクっていやだよな。コミュニケーションとれねぇし。飲み会とかではなんか,喋れよって思うんだよなー。
ふうん,そうだなと有川は首肯して,とりあえず孤独な家に帰宅した。