おっちゃんは、疲れた頃にやってくる【8】
職員室で体育教師の鬼瓦から長い長い説教を聞かされた後、俺とダチはようやく解放された。
その後。
俺は疲れた体を引き摺るようにしてやっとの思いで帰宅した。
出迎えた母さんが俺の顔色が悪いと心配してくる。
俺は「平気だ」と素っ気無く返事をして階段をのぼり、二階にある自室にこもった。
すぐに倒れ込むようにしてベッドに横になる。
もうダメだ。限界だ。眠い。
枕に顔を埋める。
そのまま俺はゆだねるように目を閉じた。
要するに完全に眠らなければいいわけだ。
『それはどうかな?』
やっぱり居たのか、おっちゃん。
『失礼な奴だな。俺はずっとお前の中に居たぞ。お前が一方的に遮断してきたんだろうが』
俺にそんな便利な機能があったなんて知らなかった。
『あれ? なんかお前、ものすごくテンション低くなってねぇか?』
誰のせいだと思っている、誰の。
『よし、じゃぁこのままゲームの世界に直行だ。さぁ眠れ。今度はお前の大好きな魔法の扱い方を教えてやるぞ』
あ、そうだ。なぁおっちゃん。
『なんだ?』
アイドル歌手の杉下ゆいなって知っているか?
『知らんな』
知らないはずないだろ。彼女の頭の中にもおっちゃんがいると言っている。
『あ、それヤバイなぁ』
……それ、どっちの意味でだ?
『その【ゆいな】って奴に話しかけているのは俺とは別人だ』
別人?
『そいつ、お前のことを捜してなかったか?』
いや、捜してないけど。なんで?
『なら良かった。お前さぁ、ちょっとこっちの世界に来て【杉下ゆいな】のアバターを捜すの手伝ってくれないかな?』
なんで?
『まぁいいから、お前はとりあえずこっちの世界に来るんだ。色々話したいこともある。それに──』
突然。
一階から鳴り響く電話の音に、俺はびくっとして飛び起きた。
なんだ。電話か。
俺は再びベッドにうつ伏せる。
……あれ?
おっちゃんの声が聞こえてこない。
おーい。
……。
しばらくして、一階から母さんが俺の名を呼んでくる。
どうやらダチが電話してきたようだ。
俺は仕方なくベッドを離れると、自室から出て面倒くさそうに一階へと下りた。




