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コード・ネームJ【56】


 どのくらいの時間が過ぎたのだろう。

 外の様子が何一つわからない。

 今が昼なのか。それとも夜なのか。

 俺は牢の隅に腰を下ろすと、壁に背を預け、膝を寄せて座り込んだ。


 こっちの世界に来て、もう四日も経つんだよな。

 現実世界で俺は今も寝ているんだっけ。

 父さんも母さんもきっとすごく心配しているはず。

 このまま目覚めないと思われて葬式とかされてたりしたら嫌だな。

 もしそうなったら俺はどうなるんだろう。

 一生この世界で過ごすことになるんだろうか。


 誰もいない地下はとても静かだった。

 遠くどこかで滴り落ちる水の音。

 間隔を置いて同じ音が聞こえてくる。

 ゆっくりと。

 時を刻むかのように。


 おっちゃん、聞こえているなら何か言ってくれ。


 頭の中で呼びかけるも、返事は戻らなかった。


 馬鹿みたいだ、俺。こうなることはわかっていたはずなのに、なんでまたこの世界に来たんだろう。

 来たって俺に出来ることなんて何一つないじゃないか。

 挙句の果てには誤解で牢に入れられて拷問受けて死ぬだと?

 それならまだ嫌々ながらも勉強していた方がマシだった。


 抱えた膝に俺は顔を埋める。


 帰りたい。今すぐあっちの世界に帰りたい。

 そもそもクトゥルクって一体なんなんだ?

 本当に狙われるだけの価値がある力なのか?

 そもそもなぜ使ったらいけないんだ?

 黒騎士に居場所が知られるから?

 この世界の秩序が壊れるから?

 黒騎士に居場所を知られたからなんだっていうんだ。そもそもセガールにはもう見つかっているんだぞ。どこで見つかっても一緒だろ。それに世界の秩序がどうこう言われたが、そんな魔法一つで簡単に変わってしまうほどの世界なのか?

 どうせここで殺されるんだ。何もせずに終わるくらいならクトゥルクの力を使ってみよう。

 

 俺は指先で床に魔法陣を描いてみた。

 最初にこの世界に来た時におっちゃんに教えてもらった、あの魔法陣を。


 完成させて、その真上に指先をトンと置く。

 すると地面が光り、そこから小さな翼を背中につけた愛くるしい白い子犬が産まれ出てきた。

 子犬は俺のそばに寄り添うように来て、その隣にちょこんと座る。

 ぱたぱたと動く小さな翼。しばらくして疲れたのか、やがて背中に折りたたまれる。

 代わりに尻尾をふりふりと振って。


 俺はチラッとだけ子犬に目をやった。

 子犬も尻尾を振りながらチラリとだけ俺を見てくる。


 …………。


 俺はまたチラッとだけ子犬に目をやった

 子犬がまたチラリとだけ俺を見てくる。


 もしかしてこれ、俺が命令するのを待ってたりするのか?

 いや、まさかな。

 試しに一つ頼んでみる。入り口の鉄の檻を指差して、


 お前の力でアレを消すことってできるのか?


 子犬が俺を見て小首を傾げてきた。

 俺は笑う。


 だよな。いくらクトゥルクの魔法で召喚されたからって、何でも期待するのは間違……。


 ふいに子犬が腰を上げ、俺のそばを離れていく。

 真っ直ぐに鉄の檻へ向かって、そしてその前でちょこんと座る。

 すると一瞬にして、入り口をふさいでいた檻は消えて無くなった。


 俺は唖然と目を瞬かせる。

 ま、マジか?


 子犬が俺を誘うようにして部屋の外へと出て行く。

 俺は重い腰を上げてその場から立ち上がった。

 部屋から恐る恐る踏み出して、通路へと出る。


 そんな時だった。


「そない便利な能力持ってんやったら最初から助けに来るまでもなかったっつーことやな」


 掛けられた声に俺は慌ててその方へと目を向けた。

 いつからそこに居たのだろう。

 灰色の髪に狼耳と尻尾の生えた二十代ほどの軍服の男がそこに立っていた。


 男は俺に手を差し出してきて言う。


「こっちのコード・ネームを先に言うとこか? Jや。頭ン中の声主からお前を助けろと頼まれてな。同じ異世界人同士、ここでは仲良くしよや」



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