ちょっとだけ、気になる存在【40】
あれから。
おっちゃんが俺に話しかけてくることはなかった。
寝るときも普通に寝て、起きるときも普通だった。
いつものように顔洗って歯を磨いて、そんで飯食って制服に着替えて学校へ行く。
普通に登校して、教室に入って、ダチとしゃべって担任教師が来る。
いつも通りの日常。
何気ない俺の生活。
不満に感じたことなんて一度もない。
なかったはずなのに……。
朝のホームルームを始める教師の声を聞きながら、俺は窓辺に顔を向けて空を眺め、思わずため息を吐いた。
本当に無意識だった。
隣の席に座っていたダチの朝倉がひそひそと話しかけてくるまで。
「なんかお前の顔、毎日が退屈で仕方ないって顔してる」
え? そうか?
「朝倉、前を向け! そこ二人は私語をするな!」
「はーい、センセー。すんませんした」
すんませんした。
「ったく。そこ二人は次の席替えで離れろ」
「はぁ!? ちょっと話しただけじゃん、オレ等!」
「点呼を取る。朝倉」
「……はーい」
「浅井」
「はい」
「綾原……は、欠席だったな」
休み?
教室が騒がしくなる。
それもそのはず。綾原が今まで学校を休んだことなんて一度もなかったからだ。
教師が一喝する。
「コラお前ら静かにしろ! 点呼を続ける。飯野」
「はい」
「井川」
「チス」
「井上」
「はーい」
淡々と続く点呼を聞きながら、俺は綾原の席をじっと見つめていた。
そういえば俺、まだアイツに礼を言ってなかったんだっけ。
見舞い返しってのも変だが、今日の帰りに何か持って見舞いにいってみるか。




