え? 何? もしかして俺、現実世界に戻れない?【4】
俺は駆け出すと、男の手を掴んで少女を引き離した。
黙って少女を背に庇う。
男どもが俺にガンを飛ばしてくる。
「なんだ? てめぇ」
「俺たちがアナンド様の使いだってこと知っててやってんのか?」
「邪魔すれば処刑にすんぞ」
俺はハッキリ言ってやった。
「知っててやっているんだ」
男どもが指の関節を鳴らしながら迫ってくる。
「上等じゃねぇかコラ」
「どうやら痛い目みないと言葉が通じないらしいな」
「馬鹿か? お前馬鹿なのか? そうやってボコボコにされて逃げていった奴がどんだけいると思ってんだ? お前もその一人になりたいってか?」
俺は頭の中で一応おっちゃんに確認する。
『確認とは何の確認だ? 安全装備のことか?』
違う。それもあるけど。
なぁ、おっちゃん。俺って最強の魔法が使えたりするんだよな? そのやり方教えろ。
『最強魔法を教えろだ? 魔法の定義も知らずに初心者がやるなんざ自殺行為だぞ』
ちょっと待て。ステキな何かが待ってるって魔法が使えるってことじゃなかったのか?
『ステキな出会い、とか?』
ふざけろ、てめぇ! 魔法はもういい。伝説の魔剣かなんか出せ。
『まずは剣を装備してからだな』
どんな初期設定だよ! じゃぁなんだ? 今の俺のレベルは1か? レベル1から始めた村人Aか?
『まぁ、一応そういう設定にはしてある』
ざけんな、てめぇ! どんな親切設定だ! 親切すぎてアダで返ってきてんじゃねぇか!
『どんなゲームも最初はみんなそういう親切設定だろ?』
もういいよ! とにかくどーすんだよ、この状況! せめて今の俺にできることって何かないのか!?
『できることか。じゃぁ俺が今から指示してやっからその通りにやれ』
何をする気だ?
『お前の中に封印しておいた一部の能力を解放してやる。まぁこれをやることで変な事件に巻き込まれるかもしれないが、勘弁な』
いや、それマジ勘弁。
『じゃぁ今ここで奴らにボコられて地べたとキスするか? それとも能力を解放して変な事件に巻き込まれるか? どっちでもいい。お前の好きな方を決めろ』
……今気付いたが、おっちゃん。もしかして俺をハメたのか?
『今頃気付いたのか?』
なんかおかしいと思った。今すぐログアウトのやり方教えろ。
『へへーんだ。最初に聞いとくべきだったな。残念だがお前がこの能力を解放するまではログアウトを教える気はない。お前がこの街でボコられようが浮浪しようが何されようが、たとえ現実世界で朝を迎えようが絶対に教える気はないからな』
おっちゃん。いきなり精神年齢が下がったな。
『よく言われる』
言われるんかい。
『さぁどうする? とりあえず能力は解放しといたぞ』
俺の中に不思議な力がみなぎってくる。湧き上がるように強く、今にも体という殻をぶち抜いて暴れまわりそうなくらいに大きな力が。
──って、使わせる気満々じゃねぇか、おっちゃん。
『まぁな。使ってもらうと俺が助かる』
おっちゃん、何者だ?
『今はまだ秘密だ。だがそのうち分かってくるだろう』
そうか。わかったよ。使わないとログアウトさせないんだったら使ってやろうじゃねぇか。
何の事件に巻き込まれるか知らんけどな!
俺はおっちゃんに言われるがままに片足を使って地面にある図形を描いた。
そして唱える。
――数十秒後。
街中に三人の男どもの悲鳴が響き渡った。




