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お前の席は空けておく【38】


 日も暮れかけた夕刻だった。

 朝倉と別れた俺は一人で家に帰り着き、家の中に入ろうと玄関のドアノブに触れた時。


 セガールは再び俺の隣に現れた。


「その様子だと、奴をまだ完全に信用しているわけじゃなさそうだな」


 語りかけてくる声が妙に自然で、流れるようにして俺の耳に入ってくる。


 俺は無言でセガールへと振り向いた。

 セガールが軽く笑みを漏らす。


「そうでなければ俺が二度もこうしてお前と接触できるのは可笑しな話だ」


 俺は無視してドアノブを回し、ドアを開けた。

 セガールが言葉を続けてくる。


「お前はクトゥルクの使い方を知らないからあの世界に興味がない。そうだろう?」


 思わず、俺は動きを止めてしまった。


「行きたい時はいつでも心の中で俺を呼べ。奴ではなく俺を呼ぶんだ。俺がクトゥルクの正しい使い方を教えてやる。力こそが絶対権力。黒騎士としてのお前の席は空けておく。世界を制する力を知れば、おのずとお前の心にも野心が芽生えてくるだろう」


 悪いが俺、そういうのに興味ないから。


「そう思うのはお前がまだクトゥルクの本当の力を知らないからだ。無理に抑え込んで使っていれば誰だって面白くない。あれは無理に抑え込んで使う力ではないからな。お前もクトゥルクの力を知ればその偽善的な考えを捨てたくなるだろう」


 馬鹿らしい。付き合ってられるか。


「そうか。なら仕方ない。こっちもいつまでも天使様気分でいるわけにはいかないんでね。使う気がなければ使いたくなるようお前に仕掛けるしかない」


 俺が振り向いた時には、すでにセガールの姿はなかった。




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