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ダチの朝倉【35】


 今日が日曜日のせいもあってか、公園にはけっこう人がいた。

 家族連れやカップル、犬の散歩等。

 広場を抜けて、公園の池のわき道をぐるりと歩き、そして──

 

 朝倉が真顔で俺に言う。


「ちょうどいいところに椅子があった。あそこに座ろう。女子トイレ前に椅子があるって最高じゃないか」


 どこの変態だ。


 そんないつもの冗談を軽く流しながら、俺はトイレ前を通り過ぎ


「なぜ座らないんだ? あの場所が空くことなんて滅多にないというのに。せっかくオレの勧める絶景ポイント百選の何が気に入らないというんだ?」


 俺、そろそろお前の将来の為にもマジで通報しようと思う。


 すると急に朝倉が俺の首に腕を回し、締め上げるようにして引き寄せてくる。


「ガチで聞くが、お前今好きな奴いるか? もちろんアイドル抜きでだ」


 何を急にそんなこと。


「いるのか? いないのか?」


 ……いない。


「よし、じゃぁオレが速攻でお前に彼女を作ってやる。今からこの公園にいるフリーでかわいい女どもを片っ端からナンパしてくぞ」


 勝手にやってろ。


「ダチのオレから見てもお前の顔はそう悪くない。オレの元カノも言ってたが、お前はEXのボーカルのTAKUYAに似ていてカッコイイんだそうだ。それを聞いたあの夏、オレは無性に腹たってプールサイドにいたお前を背後から全力で蹴落としてプールの底に沈めてやったが忘れてくれ」


 お前やっぱあれ、わざとやったんだな。


「この話をキッカケにオレと美香は別れてしまったが、あれから一年。その間に梨花や真菜や彩音や京子や美紀とも付き合えたし、今は亜矢とチョーラブってるからもういいんだ。あの時のことは水に流してやる」


 俺の水は一生流れない。


「詫びにお前に彼女を作ってやるって言ってんだ」


 いらねぇよ。そこまでして無理に彼女作りたくないし。


「まぁそういうなって。公園の次はレベル上げて渋井駅周辺だ。その後は女どもと楽しく飯食って帰る。それでいいだろ?」


 いいわけねぇだろ。


 ──そんな時だった。

 朝倉が前方で何かを見つける。


「うげッ! マジ最悪。あそこにいるの亜矢のダチじゃん。場所変えようぜ」


 もういいよ、ここで。なんか俺、疲れてきたし。


 すると急に朝倉が態度を変えて心配してくる。


「だ、大丈夫か? 眠くなったとかそんなんか? マジ病院すぐそこだし今から行くか?」


 は? なんで?


「いや、ほらお前あれだろ。退院したばっかでなんか急に体に負担が来たとかで大変じゃん」


 ……。


「とりあえずお前そこのベンチに座ってろ。オレ、飲み物買ってきてやるから」


 ……。


 朝倉は俺をその場に残し、焦るようにして自販機を探しにどこかへ行ってしまった。


 とりあえず。

 俺は身近にあった無人のベンチに腰掛けた。

 ゆるりと背もたれに寄りかかり、空を見上げる。

 

 気のせい、だよな?


 疲れたと何気に吐いただけなのに、急に見せた朝倉のすごく心配してきた顔。

 いつもと少し様子が違う気がした。


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