あの綾原がこんなにかわいいはずがない【33】
綾原奈々。
成績は常に首席。生徒会長書記を任されている。
彼女の第一印象を告げるとすれば知的美人。しかしそれを台無しにするかのごとく無口で無愛想で友達付き合いが悪い。常に一人ぼっちで参考書や難しい本ばかりを黙々と読んでいる。同級生に話しかけられても不機嫌に答えるか無視した態度をとるかのどっちかだ。同級生からは不評でも教師からの評判は上々だ。真面目で学校の校則はきちんと守る、まさに鏡のような優等生タイプである。
あの綾原が、俺に?
「えぇ、そうよ。学校を休んでいた分の授業を全部ノートにまとめて書いてわざわざ持ってきてくれたのよ。しかもお見舞いに果物まで持ってきてくれて。あぁいう子がお嫁さんになってくれたらお母さんすごく嬉しいんだけどなぁ」
バーカ。俺と綾原はそんなんじゃねぇよ。ありえねぇっつーの。
「リンゴとぶどうがあるけど、どっち食べる?」
どっちでもいい。
「じゃぁリンゴにするわね。お母さんすごく食べたいから。向こうの食堂を借りてリンゴ剥いてくるから」
あーうん、わかった。
俺はベッドに移動すると、雑誌と飲み物を放り、ベッドに腰掛けた。
そして母さんから受け取った綾原のノートを何気にぱらぱらとめくっていく。
女の子の書く字はほんと小さくてかわいい。
すごく丁寧な字で色ペンマーカーもきれいに使われていて、わかりやすく解説もついているし、テストに出るところとかを重要ポイントとして抜き出してくれている。
なんかこう、女の子だなぁって感じで妙に気持ちがくすぐったい。
『これが恋というものなのか。なんかこう、こっちまで胸がドギメギしてくる』
うるせぇ。話しかけてくんな。
『さっきはごめんな。俺、お前に話しかけてもらえねぇとすげー寂しい』
どんだけ孤独なんだよ!
『孤独じゃない。孤高の一匹狼を貫いているだけだ』
自分に言い聞かせているだけだろ、それ。
『そろそろ異世界に行ってみたくならないか?』
行かないっつってんだろ。しつこいな。
『仕方ない。こうなったら別の手を考えてくるしかないな』
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おい、おっちゃん! なんか頭ン中で変なのが流れてきたぞ!




