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油断できない小学生【30】


 病院の売店はあくまで売店であって本屋じゃない。

 しかも小さな売店だったらなおさらである。

 今週号の少年漫画雑誌はすでに売り切れた後だった。

 売店での雑誌の取り寄せは原則やっていないらしい。取り寄せても退院して買いに来ない人がいるからだとか。

 俺はため息を吐いた。

 仕方ない。読み損ねた今週号は朝倉にでも借りて読もう。

 諦めて、棚に残っていた女性雑誌と月刊少年漫画雑誌に目をやる。

 気だるく月刊少年漫画雑誌を手に取り、背表紙のページをめくる。

 この雑誌に載っている漫画って二つぐらいしか読みたいやつがないんだよな。まぁでも暇つぶしにはちょうどいいか。面白いやつが出ているかもしれねぇし。


 俺はその漫画雑誌とスポーツ飲料をレジに出した。

 小銭入れから金を取り出し、レジのおばちゃんに支払う。

 すると、


「あら。百円玉の中にゲームセンターのコインが混ざっているわよ」


 俺は思わず二度見した。


 な、なんだよこれ! どういうことだ!? なぜあっちの世界の銀貨がこんなところに!?


 俺は顔を真っ赤にして急いで銀貨を回収すると、慌てて小銭入れから百円を取り出してレジに置いた。

 間違えたことの恥ずかしさと焦りもあって、銀貨を小銭入れに仕舞う際に入れ損ない、床に落としてしまう。

 銀貨は転がり、廊下の向こうへと行ってしまった。


 音が聞こえてきたからか、おばちゃんが俺に尋ねてくる。

「あら、落としたの? 大丈夫?」


 平気です、ありがとう。

 俺は礼を告げて漫画雑誌と飲み物を手に取ると、転がった銀貨を追いかけた。



 銀貨の転がった先には一人の小学三年生くらいの男の子が立っていた。

 服装がパジャマではないことからして入院している感じではなさそうだ。とすると、親に連れてこられて見舞いで来たのだろう。

 そいつは足元に転がってきた銀貨を拾い上げると、それをじっと見つめていた。


 俺は駆け寄り、そいつに言った。

 悪いな、それ俺のなんだ。


 そいつは俺を見上げて、あどけない表情でニコリと笑う。


「これ、お兄ちゃんのコイン?」


 あぁ。そうなんだ。返してくれないか?


 俺が手を差し出すと、そいつは素直に銀貨を返してきた。


 サンキュー。


 俺が銀貨を握り締める直前で、そいつはいきなり手の中にコインを隠す。

 このガキ……!


 そいつの表情が急に企みある笑みへと変わった。


「へぇ、そうなんだ。あの世界の銀貨を持っているなんてすごく興味あるなぁ」


 俺に嫌な予感が走る。


「僕のコード・ネームは【9】。お兄ちゃんのコード・ネームを教えてよ」



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