俺だけができること【3】
街のどこかで助けを求める少女の声が聞こえてくる。
俺はすぐさま視線を巡らせた。
そして見つける。
ここから程よく離れた道の真ん中で十五、六歳ほどのかわいい少女が、いかにもガラの悪い三人の男たちに絡まれていた。
「やっと捕まえたぜ、嬢ちゃん」
「もうどこにも逃がさないぜ」
「いや! 離してください!」
細く白い華奢な腕を男に掴まれ、少女はすごく嫌がっていた。
なぜだろう。
俺はふと疑問を抱く。
街の誰一人として、その少女を気にかける者はいない。まるで「あぁまたか」と言わんばかりの目をして他人事のように通り過ぎていく。
『お前はどうする? 助けるか? それとも見過ごすか?』
俺が行ってどうなる?
『お前以外の誰かが助けるとでも?』
なんだよ、それ。誰も助けないのか?
『この街の事情を知らないのはお前だけだからな』
事情?
『あぁそうだ。説明するとだな、この街の地主はインドラ大公ってやつのもんなんだ。そいつの馬鹿息子がかなりの悪ガキで、この街のかわいい娘を見つけるとあぁやってチンピラ使って自分の家に連れて行くのさ』
誰も逆らわないのか?
『まぁな。昔は助ける人間がこの街にもいたんだが、その助けた奴をみんな大公が処刑しちまったからな』
なんでだよ。無実の人間を処刑するなんて頭イカレてるだろ。
『馬鹿息子の演技が上手かったんだ。助けた奴を全員犯罪者に仕立てあげちまったのさ。それ以来この街の人間はあーやって見て見ぬふりをするってわけだ』
じゃぁ俺が行かなかったら誰も行かないってことか。
『そういうことだ。まぁ助けるも助けないもお前の勝手だ。面倒事が嫌だったらそのまま黙って突っ立ってろ。まぁあと五分ってとこだな。関わらなければ幸せだってこともある。お前だってここで遊ぶ時間は決まってんだろうが』
俺は少女に目を移した。
力かなわぬその少女が男達に連れ去られていく。
たしかにこのまま黙っていれば終わる出来事かもしれない。
俺は周囲に目を向けた。
誰も助ける気配はない。
本当にあの少女を助けられるのは俺だけかもしれない。
俺はぐっと拳を握り締めていった。
『気にすることはない。お前はみんなと同じことをしているだけだ』
なぁ、おっちゃん。
『なんだ?』
ちなみに、俺が助けに行ったらどうなる?
俺のその言葉に、おっちゃんがフッと鼻で笑って答えた。
『きっとステキな何かが待っている』




