異世界体験マジっすか?【2】
俺は両手や自分の体をじっくりと観察する。
すげーリアリティ。
妙に現実味があって、ここがゲームの世界と言われても信じられない。
試しに腕の肉を掴んでみる。
普通に痛いし。
いやマジで?
俺、マジで異世界に来たのか?
まるでハリウッド映画の中に入り込んだみたいで、すげーワクワクしてくる。
服装も靴も、ゲームに合ったファンタジックな感じになっている。
コスプレというのだろうか? こういうの。
俺は周囲を見回した。
街を歩く人も皆自分と同じ、ゲーム世界のような格好をしている。
よし。この格好に違和感はない。
俺は自分の格好に自信を持つと、試しに一歩二歩と足を前に進めた。
風景が本物みたいに流れていく。
角度を変えても風景の一部が消えたりしない。
壁に埋もれる不自然な人物もいない。
まるでというより、これはもう本物の異世界ってやつだ!
俺は興味本位に近くにあった壁に倒れ掛かると、そのまま壁に抱きついた。
コンクリの感触がすごく本物だ。
思わず頬ずりする。
周囲が白い目で俺を見ているが気にしない。
そのまま視線を飛ばして街のあちこちを観察する。
お! あそこにあるのはもしかして武器屋か?
その向かいは防具屋!
なんと! あの店では魔法の杖を売ってる!
ってことは、もしかしてこの世界で俺は魔法が使えるということなのか!
俺の胸は高鳴る。
夢なら覚めるな。
『お? どうやらこの世界が気に入ったようだな』
うわー。またあのおっちゃんの声が聞こえてきたー。
俺は別の意味で現実に引き戻される。
『聞こえないでどうする? ログアウトのやり方も知らねぇくせに』
……え? ろぐあうと?
『ログアウトはログアウトだろうが。ゲームの世界だっつったの聞いてなかったのか?』
聞いてたさ。
『じゃぁわかっているはずだよな? 時間になったら自分でログアウト。現実の時間とここで過ごす時間は同じだということだ』
ちょっと待て。現実の時間とここで過ごす時間が同じだと?
『そうだ。現実世界じゃお前は寝ている。寝ている時間がここで過ごせる時間だ』
……。
えっと。
俺は思い出す。
宿題はあとどのくらい残っていたんだっけ?
『十五分後に起きるんじゃなかったのか?』
よし。前倒して睡眠時間を先にとろう。午前五時に起きればなんとかなるだろう。
『単純な奴だな、お前。まぁ好きにしろ』
なぁ、おっちゃん。
『なんだ?』
一度ログアウトした後でも、またこうやってここに来ることはできるのか?
『そうだな。お前が睡眠休憩して暇だったらまた連れてきてやるよ』