表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

第007話 麗しき双子



突然割り込んできた第三者の声に、エミリアと青年は驚いて下を見る。

すると、そこには金髪が眩しい2人の少年がこちらを見上げていた。

よく見ると、2人の顔は瓜二つ。

身長から体型、ちょっとした仕草までそっくりだ。



「兄さん、そんなとこで何やってんのさ」

「馬鹿、ニア。見てわからないの?あれはどう見たって逢い引きじゃないか」

「そっか!じゃあ僕たちはお邪魔だね、ベル。さっさと退散しよう」

「ああ、そうしよう!」


「待て待て!ふざけた勘違いしてんなよそこのアホ双子」



あ、やっぱり双子なんだ。

にしても、よくここまでの美形を2つも生み出したものだ。

…神様の気まぐれだろうか?



「だって、あの女嫌いの兄さんが?」

「特に美人が嫌いなあの兄さんが?」

「「美人と抱き合ってるなんてさ〜♪」」

「だぁから勘違…」


「とりあえず。ここから降りませんか」



何か勝手に盛り上がり始めている三人にピシャリと言い放ち、エミリアは青年から体を離す。



「おまっ、落ちるぞ?」

「ええ、落ちるのですよ?そこの双子も危ないので少しどいていただけますか?」

「「イエッサー!」」



双子はエミリアに言われた通り、その場から少し離れエミリアの様子を見守る。

そして、胸に抱いていた白猫を遠慮なく放り投げ、自らも木から降りる準備を始めた。



「何するつもりだ…?」

「ですから下に降りるんですよ。あ、あなたは目を瞑っていた方がよろしいんじゃないかしら」

「は…?」



地面からエミリアたちのいる木の枝までの高さは、だいたい大人二人分くらい。

それ程高さはないにしても、落ち方を間違えれば大変なことになる。

しかし、1ミリの躊躇もなくエミリアは木の枝から飛び降りた。

その際、短くなったエミリアのスカートがふわりと広がる。



「「おお~、お嬢さん大胆~♪」」

「んなっ……!?」



それぞれから歓声やら喚声やらが聞こえてきたが、エミリアの知ったことじゃない。

エミリアは、タイミングを見計らってくるっと一回転すると、受身を取って着地する。

服は少し汚れてしまったが、エミリアはかすり傷1つなく地上に降り立った。



「お、おま…っ死ぬ気か!?」

「生きていますが?」

「そういう事を言ってるんじゃない!ひとつ間違っていれば死んでいたんだぞ?」



そんな事を真剣な顔で言いながら、青年も木から飛び降り、エミリアよりも華麗に地面に降り立つ。

エミリアのように受身を取るでもなく、片膝をつくのみで彼はあの高さを飛び降りてみせた。



「……あなたに言われたくないのですけれど」



ちょっと妬けた。





「「では改めまして、」」

「僕、ここの第4王子のベルって言います。よろしくー」

「右に同じく第5王子のニアです。あ、僕たち見ての通り双子なんだけど、見分け方はね…」

「「ずばり瞳の色!」」

「……緑の瞳がベル様、青の瞳がニア様ですね」

「「あったり~!すごいね、一発で覚えられるなんて」」

「まぁ、それくらいは・・・」

「「ちなみに、僕たちの年は15。どうぞよろしく~」」



なんというか、随分とフレンドリーな感じの双子王子だった。

人当たりのよさそうな柔和な顔立ちに、イタズラ好きのする目を持った何とも不思議な少年たち。



「「で、キミは?」」

「え?ああ…、三日前からこちらでお世話になっておりますエミ…じゃなかった、エリーと申します。年は…今年で16になります」

「「新しく後宮に入った娘!?」」

「いえ、侍女として参りました」

「なぁんだ。残念」

「お姫様なら僕たちのお嫁さんにしようと思ったのに」

「さすがにお二人の奥さんにはなれませんわ。私の身が持ちません」

「「え~」」



会話が一通り落ち着くと、人々の視線は自然と黒髪の青年へと向けられる。

青年はその視線に気がつくと、ぼそっと聞こえるか聞こえないかくらいの声で自己紹介をした。



「第2王子のクラウドだ。…19」



漆黒の髪に、スカイブルーの瞳を持つ長身の青年。

この青年もよく見ると、とても整った顔立ちをしている。

双子のような明るい感じではないが、近寄りがたい雰囲気を持ったクールな青年…といった印象だ。

それにしても、この国の王子は皆こんなに美形なのだろうか?

とりあえず3人の王子と出逢ったわけだが、皆整った容姿をしていた。

ということは、他の王子たちもやっぱりそうなんだろう。と、当然期待は高まる。

おっそろしい所ね、王宮って…。

エミリアは、心の中でそっと呟いた。



「……自己紹介はいいとして、この距離は一体…?」



エミリアと双子から2メートル程離れた所に、青年――クラウドは腰を下ろしていた。

とても近いとは言えない距離感に、エミリアは思わず尋ねる。



「兄さんは極度の女性嫌いでね。特に美人には警戒心がとっても強いんだ」



そう答えてくれたのは、第4王子のベル。

クラウドは例の白猫とたわむれているため、こちらの事は無視しているらしい。

あ。

そういえば、あの泥棒猫からまだネックレス返してもらってないわ…。



「でもさ、さっきまで抱き合ってたくせに今更こんな離れて座るなんて、兄さんも面白いことするよね」

「ねー。もう触っちゃってるんだし、そんな警戒することないじゃない」

「そーだよ兄さん。珍しく兄さんのほうからエリーに近寄ってたみたいだし」

「せっかくだから、ついでにエリーで脱女性嫌いしちゃったら?」


「断る」「お断りします」



クラウドとエミリアは、ほぼ同時にそう言った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ