出会い
時間ができたので久し振りに
今でも思い出す数年前のこと。僕がまだ高校生だった時のこと。多くを学び多くを得たあの時のこと。でも最後の一歩を踏め出せず本当に欲しかったものを逃したあの時のこと。
これは今でも後悔している僕の高校時代の話だ。
高校の入学式。僕、隅田康二は
隣の席の子に一目惚れをした。シミひとつなく圧倒的なまでに美しい白い肌、童顔だがしっかりと鼻筋が通って可愛いと美人が共存している人形とも思える様な、そんな顔。その横顔に僕は恋をした。
そんな僕の思いは関係なしに入学式は進んで行く。校長先生の話。担任の先生の発表。先輩からの言葉。普段の自分ならこれからの生活の希望を胸に聞いていたであろう大切な話も右から左へと通り過ぎて行った。
「新入生代表、白雪鈴音」
おそらく学年主任であろう先生が発したその言葉に返事をするように隣の席から「はい!」というまるで鈴の音を思わせるとても綺麗な声が新入生の期待と不安で満たされている体育館に響いた。
そうして彼女、白雪鈴音は先生や新入生、代表として選ばれた先輩方の視線を受けながらとても美しい佇まいで壇上へと登った。
日本には古来から名は体を表すということわざがある。これは、「人や物の名前は、その実体や性質をよく表している」という意味である。
僕はこのことわざを信じていなかった。なぜなら、これまでそのような人物や物に出会ってこなかったからだ。しかし彼女の雪を思わすような白い肌。鈴の音のごとき声を聞いた僕はその考えを改めた。それほどまでに白雪鈴音は名は体を表すを体現していた。彼女の所作に。彼女の出す声に。体育館にいた人たちの視線は釘付けにされていた。
程なくして入学式は終わりを告げた。入場した時とは逆で7組から体育館から退場していく。僕たちは1組の為最後まで体育館に残っていた。
ついに僕らが退場する時が来た。新入生の親や先生、先輩方の拍手の中、僕ら1組は教室に向けて歩いて行った。
教室についた僕たちは、それぞれの指定された席に座っていた。
僕の席はクラスのちょうど真ん中辺りだった。あまり人気のない場所(勝手にそう思っているだけ)ではあるが僕は歓喜に震えていた。
なぜなら僕の前の席に座っているのが彼女、白雪鈴音だったからだ。
完全に興奮していた僕は彼女に対して、
「新入生代表だった白雪鈴音さんだよね。僕は隅田康二。出席番号が前後同士。これからよろしくね。白雪さん」と気づけば声をかけていた。そんな急な言葉にも関わらず白雪さんは、
「はじめまして隅田くん。白雪鈴音です。知り合いもいないし、友達も出来るか不安だったから話しかけてくれてとても嬉しいよ!これからよろしくね!」
と、とても綺麗な笑顔を僕に向けてくれた。
ドキリ、と胸が高鳴る。どうやら僕はこの会って間もない彼女に心底惚れ込んでいるらしい。
どう返事をしようか。と僕が悩んでいると、
「全員座ったな。とりあえず軽く自己紹介から始めようと思う。まずは俺から自己紹介する。このクラスの担任になった田中潤だ。教科は国語を担当している。1年の間よろしく頼む。」という声が聞こえる。「そうだな。それじゃあ出席番号1番の相川から自己紹介をお願いしよう」と先生が言う。相川と呼ばれていた子は少し困りながらも自己紹介を始めた。
そこからは出席番号順での自己紹介が続き気づけば白雪さんの番になっていた。それに気づいた僕は彼女に「頑張ってね」どう声をかけた。そんな言葉に対し彼女は、「うん。頑張ってくる」と返してくれた。
そうしてクラスメイトの前に立った彼女は、自己紹介を始めた。
やはり美しい声だ。と彼女の自己紹介を聞いていた僕はそう思った。
そうして自己紹介何終わった彼女は自分の席へと戻って来ていた。次は僕の番だ。僕は席をたちクラスメイトの前へと向かう。その途中白雪さんが「隅田くんも頑張ってね」と声をかけてくれた。クラスメイトの前にたった僕は、
「はじめまして。隅田康二です。好きな事はスポーツで中でもサッカー好きです。小学生の頃から続けているので高校でもサッカー部に入るつもりです。これからよろしくお願いします。」という、ごく普通な自己紹介をした。クラスメイトの反応も良かったので失敗はしていなだろうと考えなから僕は席に戻った。
それからもしばらく自己紹介は続いた。
最後の人の自己紹介が終わると先生が、
「よし。自己紹介は終わったな。残りの時間は自由時間にする。一応最後にHRを行う。それまでは、席を立っていいからいろんな人と交流しとけ。」と言った。
さて、どうしようかと考えていると、前に座っている白雪さんが僕の方を向いて、
「隅田くんサッカー部に入る予定なんだ。実は私中学でサッカー部のマネージャーをしてたから高校でもやろうと思ってたんだ。隅田くんさえ良かったら今度の体験の時一緒に行かない?」
と聞いて来た。
「いいよ。なんならこっちからお願いしたいくらいだよ。」と僕は答えた。
「そう。なら良かった!」と安心したように答える。
「ってか、白雪さんてマネージャーやってたんだ。俺クラブチームでやってたから全部選手たちでやってたな。白雪さんみたいな綺麗な人がいるなら俺も部活でやればよかっかなー」なんて戯けたことを言ってみる。
白雪さんは「じゃあ、私隅田君専属のマネージャーに立候補してみようかな!」とこの流れに乗るようなことを言ってくるがどこか恥ずかしそうだった。
その後も僕と白雪さんはたわいもない会話で盛り上がっていた。30分ほど経った頃、
「そろそろ時間だから静かにしろー」という先生の声がクラスメイトたちの声に支配されている教室に響いた。
教室が静かになったことを確認すると先生は、
「よし、静かになったな。明日は8時45分からHRを始めるからそれまでには教室にいるように。何か質問のあるやついるか?いないな。よし、じゃあ今日はもう終わりだから号令を…そうか係は明日決めるからまだいないんだった。
さっき相川から自己紹介してもらったから2番の井上。号令を頼む。」
その後井上さんの号令が終わったのを合図に教室は再びクラスメイトたちの声で支配された。
さて、どうしようかと考えていると、「この後入学祝いで家族と出かけるから私帰るね」と白雪さんが声をかけて来た。
「うん。わかった。でもその前に部活とかの話をしたいから連絡先交換しない?」と僕は勇気を出して聞いてみた。すると白雪さんは、
「あ、そういえばまだ交換してなかったね。私からもお願いしたいな」と言ってくれた。
「よし。これで交換できたね!じゃあまた明日ね隅田君。」 「うん。また明日白雪さん」と言葉を交わした後白雪さんは教室から出て行った。




