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誕生日パーティー

 そして、俺の誕生日パーティーは始まった。

 だが、これは本来の目的でのパーティーではない。

 俺の派閥についている貴族たちが、本当に才能があるかどうかを見に来る、いわば品定め会だ。


 そのために、貴族たちの交流がしやすい立食パーティーだ。


 まあ、レべチだ。地球に居た頃では考えもしなかったほどに豪華な飾りつけと、その大きな部屋の中央にある大きな配膳机。その上に乗るのは、豪勢な食事だ。


 そして、どれを食べようか迷っていると、公爵家の当主がやってきた。


「誕生日おめでとうございます。スナップドラゴン王子」


「ありがとうございます。モスカス公爵」


 そう。これは、品定めなのだ。だから、こうやって顔を見て笑みを零し、名前をすぐ出さなければいけない。そして、食欲に勝つのだ。

 これは、僕の身分を守るための行動なのだから。

 そもそも、貴族の後ろ盾というのは、全ての王子が持っているわけではない。

 貴族たちは、才能があると思った者達を保護しているに過ぎない。

 ただその対象が、才能が特に目立ちやすい王子に集中しているだけということに過ぎないのだ。

 現に、今王子の中で最も権力があるが、才が無いと言われている第一王子だって貴族たちの後ろ盾を持っていない。それが何よりの証拠だ。まあ、兄ちゃんは父親、つまり国王の後ろ盾を持ってるから、他の貴族たちが手を出しずらいってのもあるんだろうけどね。


「今日は、少し良いプレゼントを持ってきました!」


 だとしたら、俺はとんでもないものを貰えるのだろう。

 貴族のいうちょっと良いは、平民が一生働いても得られない程の大金で買う物の事を指すのだ。


 そして、この時に本当ですか、などといってはいけない。少しでも、その家からの株を上げるために、誤解の生まれる言葉を言わないのだ。


「良いのですか⁉ありがとうございます!」


「これを開けてみてください!」


 そう、ニヤニヤしながら少し大きい包装された箱を魔法収納道具(アイテムボックス)から取り出す。

 

「わあ!!なんでしょうか?楽しみです!」


 サプライズのプレゼントがうれしいというのをアピールする。

 もちろん、本当にうれしいのだが、俺の場合は自分の内に留めてしまうのだ。


 そして、包装用紙を破らないように、丁寧に取ると、その中から高そうな箱が見えてくる。恐らく、これだけでも相当な金がかかっているのだろう。

 そして、その箱を開けると、


「ほん⁉いいんですか⁉しかも、魔法書!!」


 その、嘘偽りない俺の驚き様に、モスカス公爵は満面の笑みを浮かべる。


「そんなに喜んでいただけて嬉しいですよ!」


「いえいえ、こんなに高価で入手しずらい本を頂けるだなんて思いもしませんでした!!」


 印刷技術が確立していない、この世界で本と言うのは高値になりがちだ。しかも、魔法の事が詳しく載っているとなると、普通の本よりも格段に高くなり、世に出回る量も少なくなる。そう、それこそ王家もそれを手に入れられない事があるほど。

 その理由の一つが、魔法書に載っている呪文を一言でもまちがえてしまうと、魔法が発動しなくなってしまうからだ。そのため、魔法書は貴重なのだ。


「ははは!!そういっていただけるとやはり頑張った甲斐がありますな!!私の娘にこれをやっても、まったく興味を示さないものでしてね。なに、そのおさがりですので、遠慮せずに受け取ってください」


 こうは言っているものの、恐らく本当に無遠慮に行ったら品定めの評価で、1を付けられてしまうだろう。


「いえいえ。それでもこんなに素晴らしい魔法書をここで見ることが出来て、幸いですよ!では、少し話をしませんか?」


「良いのですか?」


「ええ。こんなに素晴らしいものを頂いてそれで終わりでは、私の理念に反しますからね」


「その年で、そんなに芯がしっかりしていらっしゃるとは…………。流石、現国王の息子ってところですな!」


 そういうモスカス公爵は、国王より年上だ。

 なので、国王がどのようにして国王になったかしっているらしい。

 まあ、波乱万丈あったっぽいが。


 そして、その話を、めちゃくちゃ美味い料理を食べながら、ラジオ感覚で聞いていた。

 なんか、話を聞くだけだと、物語を聞いてる感があってよいのだ。


 そして、その話が終わると、軽く礼をして別れる。

 その後は特になにもなく、全員からのプレゼントを貰い、そのまま終わった。

 まあ、今は戦争中なので、そもそも誕生日パーティーをする事自体が最近決まって、その短期間で集めたプレゼントはモスカス公爵からのプレゼントと比べると見劣りする。

 でも。結構高い杖や魔法陣を書くための道具など、有益な物が多かったが。

 そして、勿論他の貴族たちと話していた今の父上、つまり国王が締めの言葉を読み上げ、お開きとなった。

 しかし、ここで帰ってはいけないというのが暗黙の了解なのだ。というか、貴族どもの、見栄の張り合いが終わるまで帰るなオーラが漂うのだ。

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