魔法適正
先生視点
「あれ、おかしいな…………。今唱えた魔術は、他人の適正属性が分かるっていう魔術なんだけど…………」
もしかして、この子、適正なしなの?
もしそうだとしたら、この子の今までの努力が水の泡だ。っていうか、一番最初に何故確認しなかったのだろうか。確かに、魔力の操作は上手になったが、それはあくまで魔力操作の才能で、魔法や魔術の才能もあるとは限らないのだ。もちろん、一緒に才能を持っている可能性の方が高いけどね。
色々考え、一つの結論にたどり着く。
「君、もしかして、完全に魔力を体の中に居れたりしてる?」
そんな完璧に魔力を操るなんて、私がついこの間出来るようになったことだ。
リッチだって、出来やしないだろう。
だから、その線は限りなく低いと思ったのだが。
「あ、ダメでした?」
そういい、その少年、いや。天才とでも言うべきか。天才は、有り余るほどの魔力を一気に出した。
その魔力は、鮮やかな赤色をしていた。赤は、確か炎と土だったか?
「っく!!」
まずい、こんな魔力をいきなり出されたら、当たり一面吹き飛ぶぞ!!
「防御結界!!!魔力遮断!!その魔力をしまえ!!」
その咄嗟の言葉と共に、周りに薄ピンク色の結界が張られる。
「は、はい」
そして、その少年はその魔力を一気にしまう。どうやら、この少年は私を凌駕するほどの魔力を持ち合わせているらしい。
その魔力をしまう途中、グラデーションの様に色が変わっていた。おかしい。そんなはずはない。
2つの魔法を使えるだけも十分な才能に、さらに様々な色だと?だけど、全属性に適応できるなら、金色になるはず。でも、そうならなかったのか…………。
なんか、神話時代の話で聞いたことがあるような…………。
「君は、才能がある」
なにがかは分からないが、とんでもなく強い。こいつは。
「へへ、ありがとうございます」
そのはにかむ姿からは想像もできないような、強力な才能。
そうだ、才能。思い出した。神だ。『すべての才能を持ち合わせた絶対神は、色が変わっていく魔力を持ち、すべての基礎魔法はもちろん、すべての混合魔法さえ軽々と操ってしまった』という文章が、あったはずだ。
もし、あの神話が本当なら、この少年は。才能がありすぎだ。なにか、弱点があるはずだ。
と、すぐにそういう考えに至る私は、本当に性格が悪い。それに対しこの少年は、私超える才能を持ち、私よりもよっぽど良い性格をしている。
はあ。まあ、教えたくないけど、これ以上実力の差を付けさせたくないけど、これも仕事なのだ。
そう考え、魔法の特訓を開始するのだった。