とある王国の王子の話
スナップドラゴン視点
僕は、ユアソクニア王国の第6王子、ハピングバー・スナップドラゴンだ。
今日は、魔法の特訓をしている。
僕には魔法の才能があるらしく、その才能を開花させるための特訓なのだか。
まあ、特訓と言っても、実際に魔法を放つのではなく、魔力を完全に制御するため、体の中で魔力を循環させるだけだ。
だが、意外とこれが難しい。特訓を始めたときなんて、魔力の動きを捉えられなくて、循環どころの話ではなかった。
だが、先生の教え方が良いのか、最近は自分の体の一部かのように魔力が動かせるようになってきた。
そして、そのせいか、丁度昨日、魔力掌握スキルを手に入れた。どうやら、このスキルは魔力操作系の最上位スキルなのだとか。
そして、そのことを先生に伝えると、今日の朝、母上に「魔力掌握スキルのことは誰にも言っちゃいけませんよ!」と言われ、鑑定妨害のスキルが籠められた腕輪を貰った。この世界では、このように道具にスキルを籠めた道具を、神級防具と呼ばれる。それだけ、数が少なく、それを作れる人材も少ないからだ。
「じゃあ、今日から、ついに魔法の授業に入ろうかな?」
「いいんですか⁉」
「まあ、ね。魔力操作の点では、追いつかれちゃったから、もう教えることがなくなっちゃってね」
そう言うが、この先生、実は化け物なのだ。例えば、危険度Aオーバーの魔龍という魔物は、魔力技効果半減のスキルを保有するせいで魔導士、魔術師の天敵とも呼ばれるのだ。
しかし、普通はB級の冒険者さん達のパーティが4つくらい組んで討伐するはずなのに、先生の一撃でその魔龍は完全に絶命したらしい。しかも、普通に倒すよりも状態が良く、それからは魔龍殺しの魔術師という、この世界においては矛盾にもあたる二つ名がつけられ、A級の冒険者として名を馳せたそうだ。
まあ、全部母上から聞いた話なのだけれども。でも、先生の強さがおかしいのは僕が一番知っている。
例えば、授業中に魔物の魔力の流れを見せるために瞬間移動魔法を使用したり、その魔物を火の初級魔法で倒しちゃたたり、僕からは考えつかないような強さなのだ。
「いえいえ、同じスキルを保有していても、その熟練度は違いますよ!」
その通りなのだ。スキルとは、その知識を持つ証拠で、その知識をどういう風に使うのかは、また別の問題で、それをスキルレベルと言う。ちなみに、僕の魔力掌握のレベルは、もちろん1だ。
「ははっ、確かにそうだね。じゃあ、君の魔力がどんな属性に適応があるかを見てみるね」
先生はそう言い、呪文を軽く唱える。しかし、何も起こらない。
「あれ、おかしいな…………。今唱えた魔術は、他人の適正属性が分かるっていう魔術なんだけど…………」
そういった瞬間に、僕の頭には少しの恐怖があった。
適応属性なしなのでは、という。