Bランク冒険者の誇り
昨日、母上の部屋の隠し通路から脱出してきて、すぐに冒険者ギルドに来ていた。
王都の栄えている側のギルドのマスターとの予定を合わせるためだ。
「夜分遅くに失礼する」
俺がそういうと、受付に居た見知らぬ男性は、
「何の用だ?」
「ギルマスに用がある。」
「それは、俺に言えることか?」
「うーむ、」
そう聞かれると少し悩むな。恐らく、この男性は人を見た目で判断しないタイプの奴だな。
そして、ギルマスに用があるっていったら、極秘任務とか、そういう系のことも多々あるだろう。
だから、この人はそれを想定しているのだろうから、言ってしまうか。
「ああ。大丈夫だ。今日は、授賞式の予定合わせに来た」
「なるほど。了解。言ってくる」
そういうと、その受付員はすぐにどこかへ行ってしまう。恐らくギルマスを呼びに行ったのだろうから、待つ。
「こっちにこい」
そう、手招きをされながら呼ばれる。ギルマスの部屋に呼ばれるのか?なんて思いつつ、付いていくと、そこはギルドマスターの部屋とは思えない程、みすぼらしい、必要最低限のものしか置かれていない部屋だった。
「こんばんは。お弟子さん」
「はい、こんばんは」
「ええと、授賞式の予定が決まったのですか?」
「はい。出来るだけ早く授賞式を執り行ってほしいですね」
「そうですか!!でしたら、明日の8時~8時10分でよろしいでしょうか?」
「ああ、ありがとう」
俺は、すんなりと予定が決まってしまったことに驚きつつも、その案を受け入れる。
てか、今日、俺どこで寝泊まりするんだろう?
「すいません、このへんに安い宿って」
「もしかして今日の宿泊先は決まってないんですか?」
「はい…………」
なんかまずかったか?という俺の不安とは裏腹に、
「でしたら是非ギルド管理の宿へお泊りになられてください!宿泊代はこちらが出しますので、ご安心してください!」
「え?なんで急にそんな提案したんですか?」
「それは、勿論うちのギルドと、貴方様の仲が良い、というアピールのためですよ!」
えーと、なんか、俺が有名人みたいな扱いになっているのだが。
「もしや、お知りでないのですか?」
「なにを?」
「今、あなたが炎の上級魔法でアンデットを全て討伐した事を知った冒険者たちの間では、爆炎の不死鳥と呼ばれているのですよ!!貴方の年齢で異名が着くのは、恐らくギルド創設から初めてなのではないでしょうか?まあ、そうでないにしても、素晴らしい事なんですよ!!貴方が軽々と成し遂げたことは!!」
「な、なるほど」
なんか急に熱くなるギルマスに若干引きつつも、利用できる物は利用しようの精神でその誘いに乗ることにした。
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「爆炎の不死鳥、アテナ・ヘルメスは、今日を以て、Bランク冒険者の名を語ることを許す」
その言葉が聞こえると、周りからの歓声が飛んで来る。
Bランク冒険者なんか、1年ぶりだとか、最年少なんじゃないか、とか。そんなんだ。ただ、その尊敬の眼の中に嫉妬が含まれている事を、俺は知っている。
だけど、やっぱりみんなから褒め称えられるのは気分が良いなあ!!
「ありがとうございます」
「では、この腕輪を受け取りなさい」
「これは?」
俺に差し出されたのは、銀かなにかで出来た、腕輪だった。ただし、何故かその腕輪には謎の装飾がされてあった。そして、微かな魔力も感じる。
これは、魔道具なのだろうか?
「それは、お前の立場の証明書のようなものだ。お前は、舐められるだろうからなあ。主に、年齢で」
「あはは…………、確かに、そうかもしれませんね。ありがとうございます」
「いや、これは全員に渡してるから、そんなに気にしなくても良いぞ?」
なんだ、そうなのか。俺専用かと思った。
「いえ、それでも、ありがとうございます」
「ああ。胸を張って生きて行けよ」
「ありがとうございます!」
なんか、始めてあったはずの、ギルマスに変な親近感がわいていた。いったい、何故だろうか………。