スタンピード
「もっと、もっと。魔力を練り上げて。正確に、正確に。威力、効果範囲も考えて」
後ろからは、聞きなれた俺の先生の声が聞こえた。この世界に来てからは、一番お世話になった人だ。
まあ、俺の先生なのだから当然だけど。
そして、先生の教えを全て籠めた魔力を左手に集めた俺は、そのアンデットの大群の前に、一人で立つ。
後ろには、大量の冒険者達。俺の昇級試験を見に来たらしい。
まあ、そんなのはどうでも良い。
ただ、このアンデット共を燃やし尽くすのみだ。
「神なる炎よ、アンデットを燃やせ。神炎嵐」
その言葉と共に、俺の周りには見た目だけの炎が舞い上がる。
ただ、熱くは無くても、風は感じられる。
これから、緻密な制御を始める。
炎を、散らすイメージ。
そのイメージが完成すると、俺が纏っていた炎は、不死鳥のような形になる。
それは、俺なんかよりもよほど大きく、下手したら豪華客船よりも大きいかもしれない。
そして、今度はそれがアンデット達に飛んでいき、その上を超高温で飛んでいくというイメージをする。
そして、俺の意思の通り、アンデットの大群の上を自由に舞い踊っている。
今もなお、その制御を繰り返している。
その炎はアンデットの中の魔術が得意な個体に、何度も消されかけたが、まるで、不死鳥のごとく蘇る。何度も、小さくなったり大きくなったりを繰り返している。
だが、それも全て俺の制御の中にある。
そして、明らかに倒れていないアンデットが少なくなったので、最後の仕上げをする。
「さあ、不死鳥よ、その魔力を以て爆ぜよ」
その言葉に呼応したかのように、その炎の塊はアンデットの大群の中央に行き、内部に蓄えられたエネルギーを全て放出する。
これが、俺の魔法だ。これが、実践で特訓をした成果だ。
「先生、合格になりますかね?」
俺は、わざとっぽく、そう尋ねる。
「あ、ああ。多分、合格になるだろう。いや、語弊があったか。間違えなく合格だ」
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そして、後ろからとんでもなく大きな声援が聞こえる。
そりゃそうだろう。少しでもアンデットの数を削れれば合格の試験で全部倒してしまったんだからね。
興奮するのも仕方がない。じゃあ、ギルドに行くか。
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「まさか、こんなお若いのにスタンピードを一人で止めてしまうとは…………」
「まあ、私の弟子なのでな」
「お弟子さんでしたか!!そりゃあお強いわけだ。で、本題なのですが……」
「大丈夫なんですか?」
「まさか、不合格…………?」
ないとは思うが、反応が面白そうなので聞いてみる。
「いえいえ!!決してそんな事ありません!!」
「じゃあなんで誤魔化すのだ?」
「あ、それはですね。えー、お断りでもよろしいのですが、ギルドの方針として、スタンピードを収めるのに最も貢献した冒険者は、王都、まあここも王都なのですが、王都の中でも最も栄えている商業エリアの方の冒険者ギルドで受賞をされる、という様な流れになっておりまして…………」
「ふーん、そっか」
「え、それはどちらなのでしょうか…………?」
「ああ、勿論行くさ。だけど、あんまりすぐだと行けないよ?」
「来ていただけるのですか⁉それでしたらいつでも構いませんよ!」
「何故だ?」
「受賞を見るために来る一般人は少ないですし、冒険者はそんなのに興味がないので、ただただあそこのギルマスと顔合わせをして、ランクの査定をして貰う為に呼ばれるのですから、こちら側で予定をあわせます!」
「じゃあ、また明日来るから、準備しておいてね」
「わ、分かりました!!次からはご無礼がありませんよう心掛けておきます!!!」
その言葉は、きっと本当なのだろう。




