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旅の条件

「先生、俺、旅してみたいです」


 俺、ずっと前から考えてたんだ。旅してみたいなって。

 だって、異世界の醍醐味って、旅とかだろ?大体。


「そうか…………。でもなぁ…………、君のお母様が許さないだろうし、君は王子なのだから、利用価値も高く、誘拐をしようと企む輩もいるかもしれないぞ?」


「で、でも!!旅してみたいんです!!」


 もし、王族に生まれていなかったら、俺は自由に旅出来ていたのに!!


「でもなあ…………。うーむ…………」


 あ、これはもう一押しで行ける奴だ!!


「俺の実力がどこまで通じるのか、試してみたいんです!!」


「そうか、そうか。確かに、私もお前くらいの年の頃はそんな事思ってたかもしれないな!じゃあ、今日中に君の母上に相談してみるよ!!じゃあ、今日はもう解散でいいかな?」


「はい!!ありがとうございます!!」


 ちょれー。だけど今回はそのちょろさに助けられたぜ。

 なんとしても異世界で旅したいからな。



~~~~~



「あ、そうだ。スナップドラゴン、後で、部屋に行くからね。別に、何もしなくてもいいから、私が行くという事だけ覚えておいて頂戴」


 夕食を食べ終わった後に、そういわれる。

 多分、冒険者として旅をしたい、という事についてだろう。

 この前、冒険者登録をして、偽名でギルドカードを作った時だって、渋ってたのにこんなの認められるはずないだろうな。

 でも、もしかしたら、何かの間違えでワンチャン行けるかもしれない。それに賭けるしかない、か。


「分かりました。お待ちしております」



 そういい、食堂を後にするのだった。



~~~~~




「入るわよ?」


 ようやくその声が聞こえたので、返事をしてドアを開く。


「ようこそ」


 そして、母上を部屋に入れる。


「やっぱり、貴方だけには貧乏性がうつったかしら?」


 俺の部屋を見渡した母上が言う。母上からすると殺風景らしいが、俺から言わせてみれば超贅沢な部屋にしか見えないんだけどな。まあ、前世ではキッチンと部屋が合体してるみたいなボロ屋だったから、それに比べれば、とんでもなく豪華なのである。

 まあ、一般人と小国とはいえ、王族の生活を比べちゃいけないんだろうけど。


「いえいえ、僕にはとても贅沢すぎる部屋ですよ」

「あら、そう?」

「ええ。とても」


 そして、そのまま互いに何も話さずに過ぎていく時間の中で、ついに母上が口を開く。


「冒険者として旅をするっていう話なんだけど、条件があるの」


 お?真っ向から否定しないってことは、今の母上は機嫌がいいな?


「なんですか?」

「それは、この前作る事を許可したギルドカードのランクを、Cにすること」

「母上、それは…………!!」

「ええ。難しいっていう事は百も承知。だけど、そのくらい強くなければ、許せない。」


 確かに、Cランクともなれば、立派な中堅冒険者だ。ここから先のランクからは、死亡率がぐっと下がる…………、らしい。

 だけど、いや。だから、Cランクっていうのは意外と強いのだ。

 それこそ、Cランクの人を誘拐しようとしたり、暗殺しようとしたりするとギルドが直接重い罰を与えるのだ。

 そして、冒険者ギルドにおけるCランクの人数は1万人前後。

 冒険者ギルドに登録されている人数が100万人を余裕で越している事を考えると、その凄さが分かるだろう。


「Bランクからは格が違うんでしょ?だから、Cランクになれたら、旅するのを許してあげるわ」

「でも、それはすごく難しくて、」

「でも!そのくらい強くなくては、この国の未来を命の危険に晒せないの」

「それは…………」

「分かって頂戴。もし、従わないのなら、それでもいいわ。ただ、帰って来た時に貴方はいなかったことになる。それは、私も嫌だ。だから、従ってちょうだい。いいわね?」

「は、い」


 確かに、自分の子供が自分の手が届かないところで死ぬかもしれない、のか。

 それを考えると、母上の言ってることも分からなくはない。

 先生がいくら強くても、心配な物は心配なのだ。

 そして、Cランクになるためには、大体10年は要すると言われている。

 G、F、E、D、と続いてのC。ランクを一つ上げるのでさえ、依頼を完璧に10個こなさなければならないのだ。それも、自分のランクから±1までのランク指定の依頼だけ。いや、受ける分には下限は無いのだが、それはランクアップへの評価には入らない。

 だから、ランクを上げれば上げるほど、ランクが上がりずらくなる、らしい。

 逆に、自分の実力に見合っているランクまでは、簡単に到達できるという超頭良いシステムなのだ。

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