魔力
目を開けると、そこは薄暗く、唯一の家具であるはずの机は、紙で埋もれてしまっている。
その部屋を見まわしていると、おじさんと目が合う。
「あ、起きましたか?いつまでたっても出てこないので、何かあったのではと、監視システムの映像を見たら、倒れていたのでマナポーションを飲ませて眠らせておきました」
うわ、この人有能すぎだろ。気が利くな~~。
「ああ、助かるよ、ありがとう…………っつー!!」
その瞬間、頭部に頭痛が走る。まるで、剣先で突かれたような、今まで感じた事のない痛みだ。いや、この体の記憶の中にはあるのだが、実際に感じてみると、耐え難い。
現代日本だと、痛みを感じる場面が少ないからな。
「おっと、あまり喋ると、魔力の回復が遅くなります。安静にしていてください」
「ありがとう………」
すると、訓練場の管理者さんは、俺がいつまでここに居ていいのか、という不安を抱いていることに気づいたのか、説明してくれる。
「安心してください、ここは、訓練場の利用状況や予約の紙が纏めてある部屋です。まあ、私の部屋と言っても過言ではないので、ごゆるりとお過ごしください。あ、砂嵐ですがね、訓練場では自分の攻撃の後始末は自分でしなければならないという規則があるのですが、今回は私がやっておきました。次回からはお気を付けください」
優しい!!もし俺があんたなら後始末なんかしないのに!!
「あり、がとう」
また、頭痛がするが、なんとかこらえて起き上がる。
「もう行きますか?」
「ああ。ありがとうね」
「いえいえ。では、お気をつけて」
その言葉と共に、俺は自室へと戻っていくのであった。
「あ、そうだ!!これ、落ちてましたので保護しておきました。中身は見ていないので、ご安心ください」
「お、忘れてた。ありがとう!」
そして、馬鹿みたいにデカい声を急に出したせいで、頭が痛い。これからはあまり多きい声は出さないようにしようかな?
渡されたその本を受け取ると、俺は自室へと向かうのであった。
~~~~~
「なるほど、これ、上級魔法だったのか…………」
俺は、ミッション達成の声を聴いたため、もしかして、と思って確認したが、やはり上級魔法であるらしい。
その解説を読んでいると、上級魔法というのは、混合魔法とも呼ばれる魔法で、2つの種類の魔法を組み合わせた魔法で、その2つの魔法の内、どちらの方が主体となっているかによって上級魔法の属性は決まるらしい。
そして、俺がさっき咄嗟に使った神砂嵐は、風魔法との合わせ技であるらしい。だけど、神砂嵐が使えるからと言って、別に風魔法も出来るとは限らない。土魔法が主体となっているから、風魔法は初級程度でも技を行使できるからだ。
やはり、魔法とは奥が深い。
そして、このような組み合わせは無数とまではいかないにしろ、人の生涯をかけても習得しきれない程には多いらしい。
「よし、そろそろ夕飯の時間か!」
時計の長針が12に近づいていて、短針が5の終わりだったから、そう思ったのだ。
この世界の時計は、元の世界の時計と変わらない。
だから、読むのが容易なのだ。じゃあ、夕飯を食べに行くか。
~~~~~
3時間後
「ふう、いい湯だった」
やっぱり、小国とはいっても、王様の子供なのだ。風呂くらいは毎日入れるらしい。
あ、そうだ。俺が今日、上級魔法を使って魔力切れになったことはバレなかった。
まあ、そのせいもあってか、魔術を舐めていたのか、俺は
「よし、部屋でも出来そうな風魔法も習得しちゃうか!」
そんな事を言って、部屋でも練習できそうな風魔法を練習しているのだが、これが難しい。なんとか、緻密な操作で少しの風だけ吹かせるのが難しいのだ。
やはり、魔法を使えるのと、魔法を制御できるのとでは、天と地の程の差があるな。




