第8話 裏切られた気持ち
アイギスと出会って一日経ち、今はエンシェントの攻略をしている。
アイギスを作った人について聞いてみたが、当の本人はあまり覚えておらず、起こした人に忠誠を誓うようにされたらしい。
それとアイギスのスキルは〈戦闘者〉らしく、能力はいたってシンプルで、戦う事に特化している。
目の前に襲い掛かるアルバトロスウルフの攻撃を受けても、傷一つもついていない。
機械人による頑丈さだろうが、〈戦闘者〉の力で肉体を鉄のように固くする事が出来るからな。
そう思っているとアルバトロスウルフが俺に向かって襲い掛かる。
「ふせてください!」
アイギスはそう叫ぶと、鉄のハルバードでアルバトロスウルフを刺し貫く。
その時に刺し貫かれたところから大量の血が吹き出し、それをもろに受けてしまう。
「ウワップ!」
「大丈夫ですか? グレアス」
俺はもろに受けて驚いてしまうが、アイギスはハルバードで貫かれたアルバトロスウルフを振り落とし、俺の顔をじっと見ながら触れてくる。
これ、横から見たらあっち系のように見えるし、美少女に間近で来るのはかなりドキドキしてしまう。
俺はアイギスにじっと見られて少し顔を赤く染めてしまうが、慌ててアイギスを落ち着かせる。
「だ、大丈夫だから! アルバトロスウルフの血液は毒なんて無いから!」
「しかし、どうやって落とすのですか? 近くに水らしきものはありません……」
俺の説得にアイギスは辺りを見渡しながら言う。
確かに近くに水は無いし、かといってこのまま探索を続けるなんて不衛生だからな。
俺はそう思いながら詠唱する。
『力の根源よ。今一度、汚れを落とす水を生みだせ! クリーン・ウォーター』
詠唱し終えると手のひらから水の玉が生み出されると、一気に俺を包み込んで顔にかかった血液を洗い流す。
それを見たアイギスは感心しながら言う。
「凄いですね。これも魔法の力なんですね」
「まあな、魔法は魔力を使えば様々な事が出来るけど、限度はあるけどな」
俺はそう言いながら、魔法について説明する。
魔法は魔力と呼ばれる不可視物体の力で使用する事ができ、様々な事は出来る。
だが死者を蘇らせたり、無から有を生みだしたりするのは無理だ。
使える属性は火・水・風・地・光・闇・力・治癒の八つで、発動方法は詠唱・無詠唱・復唱の三つだ。
詠唱は時間が掛かるが威力が強化する事ができる。
逆に無詠唱だと即座に放つ事ができるが威力が低下する事になってしまう。
復唱だと複数の属性や超強力な魔法を使える代わりに、一言一句合わせて詠唱しなければいけない。
属性の方は火・水・風・地の順に弱く、光と闇は相克し、力と治癒は味方を癒したり、強化したりする事ができるのが特徴だ。
魔法について説明すると、アイギスは目を輝かせていう。
「凄いです。魔法の知識……貴方はとても博識です」
俺はアイギスの言葉に首を傾げる。
そうか? 魔法に関する知識は自信あるけど、実戦で使えなきゃ意味ないからなぁ。
火力が高い魔法を使うロリババア系魔法使いを思い浮かべていると、アイギスは少し首を傾げながら質問する。
「すみませんが、どうして一人でここに来たのでしょうか?」
「どうして、か……」
俺はそれを聞いて少し歯切りが悪くなる。
もちろん一人で来るほど馬鹿ではないし、頭がぶっ飛んではいない。
しかし、ココに来たのは仲間に裏切られ、ジャック・オー・ランタンの自爆で吹っ飛ばされ、偶然ココに流されて、お前に……アイギスに出会ったんだ。
俺は少し上を向いて答える。
「少し言いづらいんだが、実は元の仲間達に裏切られて、偶然ココに流れてきたんだよ……」
俺はそう言うと、アイギスは言葉を失って驚く。
そりゃそうだろ、いきなり裏切られたって言えば、誰だって驚いたりするからな。
俺はそう思いながらココに来るまで、事細かに説明した。
それを聞いたアイギスは俺の言葉を聞いてうつむき、申し訳なさそうに言う。
「申し訳ございません。まさかそんな事があった何て……」
「アハハ……」
俺はアイギスの言葉に苦笑いをしながら頭を掻く。
こんな話聞いてきたら、申し訳なさそうになるな。
俺はそう思いながら言う。
「でも、俺は恨んだりはしない。理由が何であろうとな」
俺の言葉にアイギスは首を傾げる。
普通なら復讐を考えるだろう。
だけど俺はギャフンと言わせたいだけで、命を償わせてもらおうとか全く考えていない。
そんな事すれば遺族が俺の事を恨むし、下手すれば殺し屋を雇ってくる恐れがある。
俺は平和主義だから、あまり無駄な争いは生みたくないし、ハッピーエンド信者だ。
何て思っていると、アイギスは俺を見ながら微笑んで言う。
「グレアス、貴方は優しいですね……」
「ふぇ!?」
俺はいきなり言われて驚く。
他の人達からはお人好しって言われたけど、まさか褒めてくれるなんて。
それにちょっとそんな表情で言われたら、かなりドキリと来るって言うか……。
そう思いながら顔を赤く染め、頭を掻きながら言う。
「そ、そうか? そろそろ進んだ方がいいんじゃないか?」
「ハイ、そうですね」
俺の言葉にアイギスは頷き、探索を再開する。
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