第4話 創作者の神髄
俺は死ぬ前の記憶を思い出し、息を荒々しくなる。
背中には冷や汗が流れ、心臓はエンジンのようにとても早く感じる。
これって……。
俺が結論付ける前に、ウェルギリウスが説明する。
「お前が感じた記憶は前世の記憶であり、女神によって転生させられたのだ」
「て、転生! 嘘だろ?」
俺はウェルギリウスの言葉に思わず疑ってしまうが、冷静に考えれば確かにその通りだ。
俺は傷だらけで死んだのに今では五体満足だ。
それに前の姿は黒髪ショートの青年から、白銀ショートの童顔低身長になっていた。
これじゃあ、ほぼ白銀ショートのショタじゃねぇか!
もし女神がいるのなら、どうしてショタにしたのか根掘り葉掘りしないといけないな……!
そう思っていると、ウェルギリウスが咳払いする。
「コホン、そろそろ話を戻していいか?」
「あぁ、良いぞ」
ウェルギリウスの言葉に俺は承諾する。
いくら嘆いても仕方ないからな。
そう思いながらウェルギリウスの説明を聞く。
ウェルギリウスの分かりやすく言う。
まず、この世界はベギーアデと呼ばれており、魔獣やこの世界の魔物・欲人がおり、何度も戦ってきた因縁があった。
ちなみに、今いるダンジョンは古墳墓地エンシェントと呼ばれ、古代の兵器が大量にいるから、あまり近づく者はいないとされている。
ウェルギリウスが生きていたころは、あと少しで欲人が殲滅するぐらいの数で、いつも通りに欲人の研究をしていた。
その時に欲人が異常に増える現象・魔力暴走が起こり、前線に立って戦っていた。
だが、一人の槍使いによって殺害され、俺がココに落ちるまでずっと彷徨い続けたらしい。
俺はその事に驚きながら言う。
「なぁ、あんたが生きていたのは数百年前だろ? 良くそこまで耐え切れたな」
「確かに、本来は死んでから一年で消滅する。だが、消滅しかけた時に原初の一人に出会ったのだ」
「原初!?」
俺はウェルギリウスの言葉を聞いて驚く。
うろ覚えだが、原初は神の遺体から生み出された使徒であり、欲人が生まれる原因として拙の一つになっている。
驚いている間に、ウェルギリウスは懐かしそうに言う。
「穢れ無き純白のローブを羽織った男が言った。『数百年後、前世の記憶を失いかけている青年がココに来たら、勇者にせよ』とな」
「勇者にせよって……」
俺はそれを聞いて気が遠くなる。
勇者になるなんて……俺には無理な話だぞ?
この世界の勇者は一つの国で一人だけしかなれない。
国としてはアストラ王国、ヘブンスレイ聖王国、ヘルブロス帝国、アマクサ、オベリオン連邦の五つで、どれも勇者はすでにいる。
もはや無理ゲーに等しい状況に、ウェルギリウスが答える。
「それについては問題ない。貴様を裏切ったプラドと言う男は勇者の資格がない」
「そうなのか?」
俺は勇者の資格とやら聞いて首を傾げる。
アイツ、性格は少しアレだけど、スキル〈剣聖〉は古代のスキル・神剣流を扱えるから勇者としての強さはあるぞ?
しかしウェルギリウスによると、あれは一回放つたびにステータスが減っていくらしく、その上何かやらかす恐れがあると言う。
けどな、アイツの〈剣聖〉と俺の〈創作者〉と比べたら天と地の差くらいだぞ?
そう思っていると、ウェルギリウスは否定する。
「スキルは性能で強さを決めるものではない。どう使って行くのかがカギだ」
俺はウェルギリウスの言葉を聞いてスキルを確認する。
創作者……自身が想像する者を作り出せるスキル。物体作成・物質解析・性能強化・精密動作・物体修理
覇王の剣にいたころは仲間の武器や防具を修理し、魔法の効果を増幅させる杖を開発するなど、かなり重宝していたからな。
懐かしく感じていると、ひらめき出す。
そうか、そんな使い方をすれば、勇者になれるかもしれない!
俺が創作者を強く活かせる方法を思いつくと、ウェルギリウスは微笑みながら言う。
「そうか、スキルの活用法を見出してきたか……」
ウェルギリウスはそう言うと、一つのカードを手渡す。
カードの柄は裏の方がトランプのような模様で、表は魔法陣と学者が書かれていた。
俺は車輪が書かれたカードを受け取り、ウェルギリウスはこのカードについて説明する。
「このカードは私のスキル〈詠唱者〉と〈助言者〉を込められたものだ。もしこれを渡せば、私は消滅するだろう」
「消滅!?」
俺はウェルギリウスの言葉を聞いて驚く。
消滅って……そんなの怖くないのか? 消滅するってことは死ぬってことだぞ!
驚いていると、ウェルギリウスは遠く見つめながら言う。
「私はもうすでに死んでいる、だがお前は未来がある」
「未来……?」
ウェルギリウスの言葉に首を傾げるが、当の本人は強いまなざしで言う。
「そうだ。お前が世界を救うと言う未来だ」
俺はウェルギリウスの言葉を聞いて、カードを持って言う。
「分かった。俺は必ず勇者になって、世界を救ってみせる!」
俺の宣言にウェルギリウスはほほ笑みながら言う。
「そうか……あとは頼んだぞ、グレアス・カルマ」
ウェルギリウスはそう言うと消滅し、カードは俺の体内に吸収される。
あぁ、その願いは受け取るぞ、ウェルギリウス……。
俺はさっき存在していた恩人の冥福を祈っていると、脳内に機械音らしき声に話しかけらる。
【貴方が私の主でしょうか?】
俺は謎の声の質問に答える。
そうだけど、お前は何者なんだ?
すると謎の声は自己紹介を始める。
【私は助言者、貴方をサポートする者です。主よ、この後一体どうするつもりでしょうか?】
謎の声もとい助言者は今後の行動について聞く。
この後一体どうするのか、そんなの簡単だろ?
俺は一呼吸挟んで叫ぶ。
「仲間を集めて、現代技術と魔術を掛け合わせた兵器を生み出す!」
俺の叫びに助言者は質問する。
【方針としては理解しましたが、現代技術と魔術を掛け合わせても大丈夫でしょうか?】
俺はそれを聞いて鼻で笑う。
そんなの大丈夫かじゃない、やってやるんだよ!
俺の心の叫びに助言者は承認する。
【分かりました。さっそく素材集めに向かう】
「オウ!」
俺は相棒の言葉に答えつつ、エンシェントにある素材を集めつくそうと向かう。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!




