第3話 記憶の覚醒
「ウゥ、ココは……」
俺はうっすらと目を開けながら辺りを見渡す。
辺りはとても暗く、体がとても痛いが周りをよく見えるために立ち上がる。
うーん、どうやらココは古びたキャンプらしいな。
俺はジャック・オー・ランタンの自爆をマジックウォールで防いだが、爆風に吹き飛ばされて谷から落っこちてしまった。
だけど運よく川があったから、一命は取り留めた感じだろう。
そう思っていると、静かそうな雰囲気に低い音が響く。
「……腹減ったな」
俺は自身のお腹に手を当てながら、食料を求めて探索する。
おっと、その前に……。
『力の根源よ。今一度、辺りを明るくする光を生みだせ! ライトアップ!』
詠唱し終えると一つの光球が生み出され、辺りを明るくして俺の周りに浮かぶ。
暗いまま進めば魔獣や下位の欲人に襲撃される可能性があるからな。
明かりを確保して食料を求めて探索を開始する。
明かりを得たから周りの景色が見えるようになったが、気になる物が三つほどあった。
一つ目はこの世界・ベギーアデとは違う雰囲気を持つ道具、二つ目は紙に書かれた謎の武器の設計図、三つめは黒い紐に繋がれた巨大な水晶が鎮座していた。
俺は一通り探索し終え、さっき倒れた所に戻って収穫を確認する。
手に入れたのは古めの干し肉十袋、未知の鉱石十個、水晶十個ぐらいだ。
水の方は倒れた所の近くに川が流れていたから、そこから汲んで飲む事にする。
干し肉が腐って無いか臭いを嗅ぐが、あまり変な匂いはしていないし、見た感じ腐ってはいなさそうだが……。
良くても数ヶ月、悪くても数十年前の物だったら最悪だ。
しかし「今すぐ食べたい!」と食欲が訴えており、俺は干し肉を強く握って叫ぶ。
「男は度胸ォォォォォォ!」
俺はそう叫ぶと同時に干し肉を力強くかじる。
とても硬いが食べれないほどではなく、濃い味が口内に広がっていく。
うん、変な味もしないし臭みも無くておいしいな。
なんて思いながら干し肉を食べていると、しわがれた声が背後に聞こえる。
「おや、目を覚ましたのか?」
「……ブフゥ!」
俺は声を掛けられて振り向くが、声を掛けた人物を見てつい吹き出してしまう。
俺の後ろにいたのは白くて裾がくたびれたローブを着た年老いた男がいた。
だが顔や腕の一部が焼き爛れており、右手は悪魔のように鋭くなっており、腰から下は透明であった。
俺の後ろから出てきた幽霊に声を失っていると、幽霊の男が話し出す。
「驚いてしまって申し訳ない。私の名前はウェルギリウス、今では歪な幽霊だが、生前は学者の一端の者だ」
「ウェルギリウス、学者……?」
俺は幽霊の男もといウェルギリウスの言葉を聞いて首を傾げる。
ウェルギリウスに学者、なぜか分からないが懐かしく感じてしまうような……?
そう思っていると、いきなり頭が痛くなる。
「グァァァァァァァ!? あ、頭が……千切れる様に痛い!」
「思い出せ、貴様が何者か、そしてそのスキルの神髄を!」
俺は痛みに苦しむ中、ウェルギリウスが何かを思い出すように叫ぶ。
それと同時に俺が転生する前の記憶が蘇る。
***
俺の名前は佐々木勇樹。
修学旅行先のホテルに向かうバスに乗っているが、絶賛暇を持て余している。
「あー、暇だなぁ。早く着かないか?」
俺はそう呟きながら外の景色を見る。
他の皆は修学旅行先の観光地については話をしているし、どこから見て行こうか相談し合っている。
俺が所属する班は学校一のモテ男・赤城光太郎を主軸に、剣道部主将の三鶴祥子と柔道部のエース荒木瑠香、俺の四人だ。
班のリーダである光太郎は、この二人以外にも他のクラスや他校の女子と付き合っている噂があるほどだ。
俺は事前に別行動するって伝えてあるし、三人はその事に了承してある。
マァ、俺の事をド級のボッチって馬鹿にされたが気にしていない、気にする方が若干面倒くさいからな。
そう思っていると、俺の隣に座る金髪碧眼の美青年・草薙千斗は俺に質問してくる。
「おい、勇樹。あそこにはドラゴンがいるのだろう?」
「いねぇよ、仮にいたらどうするんだ?」
「フッ、そんなの簡単だ。俺の正宗で切り捨てるのみ」
「キャストや飾り物を切り捨てるな。あとお前、刀を持っているなら銃刀法違反だからな?」
俺は千斗のバカっぷりに呆れながらツッコむ。
コイツは重度のバカで中二病を患っており、担任は俺にコイツの手綱を掴むことを頼んでいる。
ハァ、コイツとかかわるのは嫌だけど、なぜかコイツといると楽しんでいるからなぁ。
そう思っていると前から変な音がして、俺は少し頭を上げてみる。
バスの前はフェラーリらしき車が煽り運転していた。
オイオイ、いい年して煽り運転してんのかよ。
初めて煽り運転している所を見て呆れていると、いきなり横から重力を感じ出す。
「え?」
俺はいきなりの事に訳が分からずにいると、次に襲ってくるのは背中から強い衝撃だ。
「ガァ……!?」
俺は強烈な痛みに耐え切れずに叫ぶ。
しかしまだ終わっておらず、バスが横に開店している事で、全身に強烈な衝撃と痛みに襲い掛かる。
「グッ、アッ、ガッ!」
俺は全身から襲い掛かる痛みに苦しみ、千斗はこの状況に驚きながら叫ぶ。
「何だ、コレは! ドラゴンの襲撃か!?」
千斗のボケに俺は心の中で「チッゲーよ!」と叫びたいが、全身から来る痛みにうめく事しか出来ない。
そして、バスはそのまま地面に激突した。
それと同時に運転席の方から爆発し、後ろにいた俺はほかの生徒と共に外に出される。
俺は爆風に吹き飛ばされ、勢い良く地面に激突してうめく。
「グェェェ!?」
俺は地面の衝撃と痛みで呻き、その時に頭から血が出る。
俺は少しずつ後ろを見るが、そこはもう大惨事と言っていいほどの悲劇であった。
バスは燃え、そこから人の叫び声が薄暗い森に響き、他の皆も生気が全くなかった。
俺は近くに倒れている千斗を呼び掛ける。
「千斗……こんなところで倒れるなんて……ドラゴンを倒すなんて、難しいぞ……?」
俺は息を荒々しくしながら呼び掛ける。
だが、千斗は体中から出血し、首の所が青紫色になって。
クソ、どうしてこんな事になったんだよ……!
そう思っていると、まぶたが鉛のように重くなるのを感じる。
多分、もう駄目……だろう……な。
そう思いながら、ゆっくりとまぶたを閉じる。
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