第19話 転生のトリガーと勇者会議
そう思っていると、脳裏に一つの疑問が浮かび上がる。
あれ? 俺はバスの落下による事故死で、フレイは生徒を守るために身を庇って刺されて失血死した。
一見すれば関係ないと思うが、この二つはどっちも事故で起きたことだし、もしかして転生にも何かしらのトリガーがあるのか?
そう思いながらフレイに質問すると、フレイはあごに手を当てて言う。
「なるほど、確かに転生にも何かしらの条件があるかもしれないし、全員が偶然事故死したなんておかしいね」
フレイはそう言いながら考える。
確かに全員が偶然事故死したなんて、そんなにできているのは色々とおかしいからな。
そう思っているとフレイが質問してくる。
「今度はこっちから質問するけど、君の持つスキルはどういう力を持っているんだい? 魔法を武器に接続させたり、自身の身体能力を倍にしたりするなんて聞いたことがないよ」
「あぁ、俺の創作者か……」
俺はフレイの質問にスキルの名前をつぶやく。
あれって名前からだと物を作るだけだと思うが、素材を使って新しい物を作成するからな。
知らないというのなら当然だろう。
そう思っているとフレイは頭を掻きながら言う。
「しかし君はグレアじゃなくてグレアス・カルマだろ? 試験が始まる一週間前に死亡通知が来たけど、偽名を使ってまで冒険者になるなんて、何か目的があるのかい?」
「あぁ、実はな……」
俺はフレイの言葉に驚きつつも、苦々しくしながら目的を話す。
まさか俺が転生者を見抜いた上に偽名を使っていたと察したなんて……。
俺はフレイの勘の良さに心底恐ろしく感じつつ、偽名を使った理由を全て話す。
事情を全て話すとフレイは呆れながら言う。
「事情はすべて聞かせてもらったが……まさかアストラ王国の勇者様がそんなことをしたなんて驚きだよ」
フレイはそう言いながら、プラドの行った行動に呆れていた。
マァ、勇者としてそれはどうかと思うしな。
そう思っているとフレイは窓の外を見ながら言う。
「マァ、君がグレアス・カルマだっていうのは勇者になるまで隠蔽するから、そろそろ話はこれくらいにしよう。それに外は夕暮れになっているしね」
フレイの言葉に窓を見れば確かに外は夕暮れだった。
確かにそろそろ話はこれくらいにした方がいいな。
俺はそう思いながら応接間から去って、アイギスが待っている宿屋に向かおうと冒険者ギルドから出る。
すると冒険者ギルドのドア近くにアイギスが体育座りで待っていた。
俺はアイギスが冒険者ギルドのドア近くに、体育座りでいる事にこんがらがってしまうが、頬を掻きながら聞く。
「えっと、もしかして話が終えるまで待っていたのか?」
「ハイ、何があってもすぐに行けるように座って待っていました」
俺の質問にアイギスは体育座りをしながら答える。
う~ん、心配してくれるのは嬉しい。
だからって冒険者ギルドのドア近くに体育座りで待つのは予想外だぞ。
俺はそう思いながら、アイギスに軽く注意する。
「なぁ、俺の身を案じてくれる事は嬉しいけど、ドアの近くに体育座りでいると怪しまれるから、あまり変なことはしない様にしてほしい」
「そうなんですね、分かりました」
俺の注意にアイギスは素直にうなずいて答える。
失礼かもしれないが、これは常識を教えないとこんがらがってしまいそうだ。
だけど明日からは知名度を上げるから頑張っていくぞ!
俺はそう思いながら明日に備えていく。
***
アストラ王国の会議室には大理石の円卓を囲う様に座る者がいた。
腰に片手剣ミソロジーバスターを装備したプラド、純白のローブを頭から羽織って精霊樹の杖を握る少女、黒いコートを羽織って上に二丁拳銃を携わる強面な男、背中に大太刀を背負ったこぢんまりとした狸の獣人、革ジャンを羽織って腰に魔導書が携えた青年がいた。
その後ろには仲間が護衛として立っていた。
狸の獣人は円卓に座る勇者たちを見据えながら言う。
「それでは勇者会議を始める。最初に各国の様子を順次に述べよ」
「だったら俺から言わせてもらうぜ」
狸の獣人……ヤギュウの言葉に強面の男……バルジャンは円卓の席から立ち上がって言う。
「うちの帝国が解析した武器・遺産兵器を使った戦闘実験で欲人に通用することが分かった。だが八割で破損して使い物になっちまった」
「そうか、遺産兵器が欲人に通用したのは分かったが、課題はまだありそうじゃな」
「ハイ、そうですね」
バルジャンの報告にヤギュウは苦々しくなり、精霊樹の杖を持つ少女……ユリは同意するように頷く。
遺跡兵器は古代遺跡に発見される武器で、威力はとても強いが代わりに耐久性は数回使ったら崩壊する。
それをヘルブロス帝国では対欲人兵器に転換しようと、日夜研究が行われていた。
バルジャンの報告を終え、ユリが立ち上がって言う。
「次に私は欲人の被害地の修復状態を――」
ユリはそう言いながら被害地の修復状態について報告する。
そうして勇者達は起きたことを全て報告する。
すると今まで黙っていたプラドは頭を掻きながら言う。
「ったく、話が長すぎるんだよ。わかりやすく言えば各国色々なことが起きていますって、言えばいいだけじゃねぇか」
「貴方、すみませんが勇者を何だと思っていますか?」
プラドの言葉に魔導書を携えた青年……コサインはプラドの態度に眉を寄せながら質問する。
プラドはその質問に面倒に思いながら答える。
「アッ、そんなの人生勝ち組に決まってんだろ? お前頭がいいのにそんな事も分かんねぇのか? 頭の中身お花畑かよ」
プラドはコサインの質問に嘲笑いながら答え、イーラ・アンヴィ・アヴァリーシアもコサインを見ながら嘲笑する。
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