第18話 直々の話
するとアイギスがヒヨコの刷り込みのように付いてきた。
もしかして俺が心配なのか?
その心意気と純粋に向かってくる姿はドキリと来るが、黒いマントを羽織った魔術師は面倒くさそうにしていた。
俺は少し頭を掻きながらアイギスに面と向かって言う。
「アイギス、俺を心配してついてくるのはうれしいが相手は少し嫌がっているから、宿に戻って待ってくれないか?」
「でも、私はあなたを守ることが役目です」
「うん、そうだけど相手を見ろよ。話が早くしてもらいたそうに苛立っているぞ?」
俺はアイギスの言葉に返して黒いマントを羽織った魔術師を指す。
相手はいつ話が終わるかと思いながら、苛立って待っていた。
その視線がザクザクと背中に刺さりまくり、正直メチャクチャ申し訳なさを感じてしまう。
背中に刺さりまくる視線に苦々しく感じていると、アイギスは少しシュンと落ち込んで言う。
「……はい、わかりました」
アイギスはそう言って宿に戻って歩く。
俺はとぼとぼと歩く姿を見て少し申し訳なさを感じてしまう。
ウゥ、ちょっと強く言いすぎたか? 話をし終えたら強く言ったことを謝るか……。
俺はそう思いながら黒いマントを羽織った魔術師についていく。
応接室まで歩き、黒いマントを羽織った魔術師は用事が終えたとばかりにこの場から立ち去る。
俺は応接室を見渡しながら近くのソファーに座り、机に置いてある紅茶を一口飲む。
一口飲むと芳醇な香りと柔らかい甘みに舌鼓を打つほどおいしい。
これは中々おいしいな、もしも根城を手に入れたらこの紅茶を買いだめしておこうか。
そう思いながら今飲んでいる紅茶を堪能していると、扉を開ける音が鳴ると耳が長い青年がやってきた。
姿は肌白い緑髪で鋭いブロンドの瞳が特徴だが、一番に目を引かせるのはピンと尖がった長い耳だ。
俺は特徴的な容姿にじっと見ていると、緑髪の青年は向かいのソファーに座って言う。
「少し話したいが熱くはないのかい?」
俺は緑髪の青年の言葉にどういうことか分からずに首を傾げる。
すると紅茶を少しこぼしてしまい、服にかかってしまった。
「しまっ……熱っ!?」
右鎖骨から来る熱さに思わず叫んでしまう。
暑さに眉を寄せながら紅茶がかかってしまったところを払う。
うっかりこぼしてから熱いが、相手の顔をジロジロと見た罰だろうか?
そう思いながら熱さを治めると、緑髪の青年は口元を抑えながら言う。
「フフ、君は少し面白いね」
「アハハ、少しすみません……」
俺は緑髪の青年の言葉に刺さりながら謝る。
さっきはちょっと失礼だからな。
恥ずかしく感じていると、緑髪の青年は自己紹介を始める。
「僕の名前はフレイ・アースガルズ、この冒険者ギルドのマスターで君のような転生者を管理する者だ」
「何!?」
俺は緑髪の青年……フレイの言葉を聞いて、瞬時に魔法接続剣を取り出してフレイに向ける。
フレイは魔法接続剣の刃を向けられているのに、一ミリも驚いておらずに紅茶を一口飲む。
しかしそれはどういうことだ?
なぜ俺が転生者だということを知っている事と転生者を管理する者なんて……。
もしかしてコイツの種族は妖精の中で長寿な一族・上位森妖精なのか?
そう思いながら魔法接続剣をフレイに向けていると、フレイは毅然とした態度で魔法接続剣を掴んで言う。
「そんなに警戒しないでほしい。僕は君と同じ転生者だからね」
「ハァ?」
俺はフレイの言葉に首を傾げてしまう。
コイツは転生者を管理する者だって言っていたが、自身が転生者だと言うなんて一体どういうことだ?
フレイの言葉にこんがらがっていると、フレイは少し笑って言う。
「アハハ、僕のいう言葉が分からずになっているけど、今回呼んできたのはそれを含めて話をしたいんだ。だから一旦これを収めてくれない?」
フレイはそう言いながら魔法接続剣を握る手をさらに強く力を込める。
すると魔法接続剣からミシミシ嫌な音が鳴り出し、刃にひび割れが出てきた。
コイツの見た目はやせ細っているように見えるが、とてつもない力を感じ出すぞ!
俺はそう思いながら魔法接続剣を収めて言う。
「これで収めたから教えてくれ。俺を転生者だと見抜いた事と、自分も転生者なのに管理しているって言うんだ?」
「いいよ、紅茶のおかわりは用意してあるから、緊張せずにしてね」
フレイは微笑みながら言い、俺の疑問を答えるように話し出す。
話を聞く限り、どうやらフレイの前世は高校の教師らしく、授業を行おうとしたら刃物を持った不審者が襲ってきたらしく。
近くにいた生徒を守るために身を挺して守ったが、刃物が心臓に直接刺されて失血死で死んでしまった。
そして目を覚ましたらこの世界に転生したらしい。
ちなみに転生した時に前世の記憶は持っているが、中にはショックを与えなければ思い出せない者もいるらしい。
例えるなら裏切られる前の俺だな。だってエンシェントに落下するまで現代日本の事を覚えてなかったからな。
話を戻して最初は転生したことに困惑したが、新たな人生を謳歌しようと世界を旅する。
しかし世界を旅する中で自分以外の転生者が暴れた事に絶望し、これ以上悲しませる人たちが出ない様にレギオン小国に冒険者ギルドを立ち上げた。
表向きはダンジョンに現れる魔獣や欲人の討伐だが、本当の目的は他国にいる転生者の調査と暴れさせない様に対話することだ。
もし対話でも暴れ続けるのなら、フレイのスキル『純粋者』で討伐するらしい。
確かにやせ細っているのに純粋な力を込められるのは、そのスキルの力かも知れないからな。
俺はそう思っていると助言者が教えだす。
(マスター、個体名:フレイの証言は本当らしく、過去に転生者が起きた戦争が事実を変えて残されていました)
俺は助言者の言葉を聞いて驚く。
何!? 多少本当だとしても、ココまで長く生きるなんて……。
さすが上位森妖精だな、予想していたよりも長寿なんだな。
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