第17話 ギルドへ帰還
俺は倒れたストリゲスを見てつぶやく。
「何とか倒せたなぁ……」
俺はそう言いながら腰を下ろす。
ストリゲスは中級クラスの欲人で、上級クラスの六人パーティーじゃなきゃまともに戦える事は出来ない。
今回はテトラークエピガウルスとは違った強さだったが、本当に何とか倒せたな。
俺はそう思いながら安心していると、ヒョードルを筆頭に他の受験生たちが俺達に近づきながら叫ぶ。
「おーい、無事かー!」
「無事なら返事してくれー!」
俺はそれを聞いて顔を青ざめる。
しまった! 今の姿は魔導戦術武装鎧や魔法接続薙刀を装備している上に、幻惑之仮面を外しているから本来の姿になっている。
今の姿を他の連中が見ればグレアスが生きていることに驚き、俺の生存を知ったプラド達が俺やアイギスを始末しようとしてくるだろう。
俺は即座に魔導戦術武装鎧を解除し、幻惑之仮面を装備する。
それと同時に俺の姿はグレアとして変わり、それと同時にユウキは俺を見つけて声をかける。
「アッ、あっちにいたぞ! それにストリゲスが討伐されているぞ!」
ユウキの言葉にほかの冒険者たちは俺達に向かっていくが、ストリゲスの死体を見たヒョードルは目を見開いてつぶやく。
「中級クラスのストリゲスを二人で倒すなんて……」
その呟きを魔力で強化した聴力で聞いて思う。
マァ、中級クラスのストリゲスを二人で倒したらそう反応するか。
そう思っているとユウキが俺に声をかけてくる。
「大丈夫か? 中級クラスのストリゲスの死体があったから、もしかして二人で討伐したのか?」
「あぁ、そうだけど少し苦戦したぞ」
俺はユウキの言葉に頭を搔きながら言う。
それを聞いたほかの志望者はストリゲスの死体を見ながら叫ぶ。
「マジかよ、ストリゲスって確か中級クラスだったよな?」
「あぁ、それでも二人で討伐するなんて中々すごいぞ」
ストリゲス死体を見た志望者はそう言いながらざわめく。
一応、俺の創作者を使って開発した武器で倒したんだが、アイギスの戦闘者がなければ勝つことは難しかったな。
そうしてそう思っていると、ヒョードルが辺りを見渡しながら詠唱する。
『力の根源よ。今一度、土の兵士を生み出せ! ソイルポーン!』
詠唱し終えると地面から土で出来た兵士が十体ほど出てきて、俺達を守るように囲いだして槍を構える。
別のストリゲスが現れた場合でも、志望者を守りながら立ち去ることが出来そうだな。
そう思っていると四肢や胴体に鎧を装備した救急隊がやって来て詠唱する。
『力の根源よ。今一度、癒しを与えて傷をふさげ! ヒーリング!』
詠唱し終えると手のひらから淡い緑の光が放たれ、傷口や疲労を癒していく。
おぉ、体が治癒されてさっきの疲労感が軽減されて、体が軽くなってくる。
アイギスは機械人だからあまりヒーリングの効果を受けておらず、分からずに首を傾げる。
志望者全員にヒーリングし終えると、ヒョードルは土の兵士に向けて命令する。
「よし、中級クラスの欲人がいたら即座に志望者を守り、指定の場所に向かっていこう」
ヒョードルはそう言いながら、転移された場所に向かっていく。
それからストリゲスみたいな中級クラスの欲人が現れることがなく、転移した場所から冒険者ギルドに戻った。
その後はヨルカさんから冒険者の証であるドッグタグを受け取る。
ドッグタグには『最下級Ⅰ GLARE』と書かれており、空いたところには遭難した時に備えて居場所を知らせる魔法道具・通信石をつけられた。
もちろんドックタグについている通信石はギルドの緊急要請や、仲間たちの連絡を取れることは可能だ。
使い方は魔力を流し込めれば名前通り通信することが出来る。
ジャック・オー・ランタンの自爆に巻き込まれたときは、うっかりドックタグを落としたから爆発で壊れてしまったんだろう。
前に持ったドックタグを壊したことにもったいなさに感じている。
通信石は魔石に魔術通信と呼ばれる魔法を刻み、砕けない様に精密な削りでドッグタグに収めた。
今度はちゃん落とさないようにしないとな……。
ジャック・オー・ランタンの自爆の時に、落としたことを思い出しながら考えている。
するとアイギスは首を傾げながら質問する。
「どうしたのですか? 渡された物に感慨深く思っているのですか?」
「あぁ、大丈夫だ。ちょっと無くさない様にしないなと思っただけだ」
俺はアイギスの質問に頭を掻きながら答える。
無くしたら緊急時に救助を連絡することは出来なくなるからな。
実際崖に落下して助けを呼ぶことを忘れたからな。
そう思いながらドッグタグをまじまじと見ていると、黒いマントを羽織った魔術師らしき男が呼びかける。
「おい、そこの仮面をつけた男、ギルドマスター直々に話したいことがあるそうだ」
「エッ、俺?」
俺は黒いマントを羽織った魔術師が呼びかけたことに首を傾げる。
ギルドマスター直々って、いったいどんな話なんだ?
そう思っているとアイギスが首を傾げながら言う。
「あの、ギルドマスターって誰なのですか?」
「あぁ、冒険者ギルドのマスターは噂では最近なったばかりの青年で、素顔を隠しているんだよ」
俺は冒険者ギルドのマスターの特徴を思い出しながら言う。
レギオン小国のギルドマスターは他国のギルドマスターを統べており、レギオン小国が冒険者ギルドの始まりじゃないかって言われているほどだ。
レギオン小国のギルドマスターについて色々と気になる事はあるが、今はギルドマスター直々の話について聞かないとな。
そう思いながら黒いマントを羽織った魔術師にいう。
「分かった、話があるなら行こう」
俺はそう答えて黒いマントを羽織った魔術師と共に向かっていく。
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