第13話 試験の準備
その時に銀色に鈍く光る刃が、ナンパ男が持つ手斧を弾き飛ばす。
ナンパ男はともかく、俺はそれを見て驚く。
「な、何だ!?」
「ウォ!? マジかよ……」
俺はとても速い突きに驚き、刃が来た方に向く。
そこには白のシャツと藍色のズボンをはき、茶色のマントを羽織る青年がいた。
青年の姿は金髪のショート、目つきは碧眼のつり目、体格は中肉中背だ。
ナンパ男は青年を見て叫ぶ。
「いきなり何するんだ! あぶねえじゃねぇか!?」
ナンパ男の叫びに青年は鼻で笑いながら言う。
「フッ、そこにいる女性をしつこく口説こうとしたことに注意された上に、武器を使って襲い掛かるなんて、蛮族極まっているぜ」
「んだと、クソガキ!」
青年の言葉にナンパ男は怒りをあらわにして叫び、手斧を拾って襲い掛かる。
しかし青年は手に持っている唾が付いた片刃の武器・刀を構えてつぶやく。
「無音・空牙……!」
青年がつぶやくと同時に高速の鋭い突きを放ち、ナンパ男が持つ手斧を見事に破壊する。
ナンパ男は自分の得物が破壊されたことに声を失い、不利になって慌ててここから立ち去ろうとする。
俺は立ち去ろうとするナンパ男に向けて叫ぶ。
「おーい、ヨルカさんに謝れー!」
俺の叫び声にナンパ男は聞かず、そのまま走り去っていく。
ハァ、情けなくてありゃしないな……。
俺はナンパ男の情けない姿を見てあきれ果て、青年は刀を鞘に納めて言う。
「フッ、よもやよもやってやつだな」
「いや、世も末って奴じゃないか?」
俺は青年の言葉に思わず突っ込む。
なんというか、こいつのボケに突っ込むのに悪くないな……。
なんて思いながら青年に礼を言う。
「悪いな、あいつを倒してくれて」
「フッ、騎士道のために行ったからな」
「いや、刀使っているじゃん」
俺は彼の言葉に反射的に突っ込んでしまう。
本当にどこかで見たことあるやつだな……。
そう思いながら俺とアイギスは冒険者ギルドから立ち去り、薬屋にある程度マナポーションとヒーリングポーションを買い、武器屋にてアイギスの武器を新調するが……。
「オイオイ、お前さんの仲間が持っている武器……扱いがひどいっていうレベルじゃないぞ?」
「ハイ、すみません」
俺は武器屋の店主である石妖精のオヤジ・ダイさんから説教を受けていた。
俺は彼の説教に申し訳なさそうにしながら謝る。
実はアイギスの使用武器である鉄のハルバードが半壊しており、一言でいえば無残そのものだ。
確かにハルバードは斬る・叩く・突くの攻撃ができるけど、力を込め過ぎたからこうなってしまった。
だが創作者で作ってもあまり耐久値は高くないし、いっそプロに頼んだ方がいいんじゃないか? って思ってこの国で腕が良い鍛冶師のところに来たんだけど……。
「なんでハルバードの刃が変形しているうえに、棒がデコボコになってんだ!? どうやったらこんな風になるんだよ?」
「本当にすみません!」
……こんな風に叱れているんだよ。
マァ、鍛冶師にとっては武器がとても雑に扱っていることに、ガチギレするのは免れないだろう。
そう思いながら説教を受けていると、アイギスが首をかしげながら言う。
「あの、この武器は何でしょうか?」
俺とダイさんはアイギスが指さす方向に振り向く。
すると指先にあったのは錆びた上に、かなり大きめな刃を持つ武器が飾ってあった。
それを見たダイさんはアゴヒゲをさすりながら言う。
「あーそいつは売りもんじゃねぇんだよ。トレジャーハンターのころで手に入れたが、あまり武器として使いものじゃないんだよ……」
「へぇ……」
俺はダイさんの言葉につぶやきながら見る。
う~ん、確かに武器としてはあまり使えなさそうだな。
そう思っていると、助言者が伝えてくる。
(マスター、このバルディッシュはダンジョン内にある素材を使えば武器になります)
俺は助言者の言葉を聞いて頷く。
おぉ、確かにダンジョンの素材は普通の武器を合わせれば、特殊な能力が持つことがあるからいいな。
俺はそう思いながらダイさんに伝えておく。
するとそれを聞いたダイさんは飾ってあるバルディッシュを見て言う。
「ダンジョンにある素材を使って強化するか……確かにダンジョンの素材を使えば様々な能力を持つことができるな」
ダイさんはそう言うと、飾ってあるバルディッシュを取り出し、俺に向けて言う。
「お前さん、もしダンジョンの素材を持っているなら、相方に適している武器にしてやるぜ?」
俺はその言葉に今あるダンジョンの素材を差し出す。
するとダイさんはダンジョンの素材を見てつぶやく。
「おぉ……これなら最上の武器ができそうだな」
ダイさんはそう言うと、ダンジョンの素材を受け取って店の奥に入る。
そして数時間ぐらい経つと、ダイさんが強化したバルディッシュを持ちながら出てくる。
俺は彼が持っている強化したバルディッシュを指さしながら言う。
「あの、これが強化したバルディッシュですか?」
「あぁ、ここまでいい出来が作れたのは初めてだ」
俺の言葉にダイさんはそう言いながら、アイギスに向けて差し出す。
俺は強化したバルディッシュを創作者で解析する。
獣牙の大使戦斧……ダンジョンに生息する獣の骨や牙、鉱石を使ったバルディッシュ。魔力を流すことで二重の刃が展開され、大剣のように変形する。攻撃力A・耐久力-A・攻撃スピードB
俺は強化したバルディッシュ……もとい獣牙の大使戦斧の性能を見て心中でうなる。
おぉ、多少強化されるだろうと思っていたけど、まさかここまで性能が上がるなんてな……。
アイギスも新しいおもちゃを手に入れた子供のように目を輝かせていた。
俺とアイギスが性能の高さに目を輝かせていると、ダイさんは一枚の紙を俺に見せつけて言う。
「ほらよ、今回の製作費だ。しっかりと払ってもらおうか」
俺は一枚の紙を見て目を見開く。
えっと、銀貨がざっと1500枚!? 金貨に変えれば十五枚じゃねぇか!
けど、この値段は納得するほどの性能だし、今の所持金は金貨十七枚だからギリ払えるな。
俺はそう思いながら金貨十五枚払う。
受け取ったダイさんは満面の笑みで答える。
「ただいまもらいましたぜ! またのご利用してくれよ?」
「ハハ……新たな武器を手に入れようとする気にします」
俺は苦笑いをしながら言い、アイギスとともにこの店から出る。
そのあとは宿屋で一晩止まったが、空いているのが一部屋だけだったから、理性を必死にとどめたのは秘密だ。
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