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アフタヌーン ティー  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
28/30

28. ★ 総力戦! 赤鉄連合を倒せ! (令和十年八月二十七日・日曜)

 ――――。


「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。とあああああーっ!」


 優璃は全身に力を込めて、屋台の瓦礫を吹っ飛ばして起き上がった。その視線の先では、月花と小笹が必死に二人がかりで蛇腹に立ち向かっているが、全く歯が立たない様子。


「だ、だめだ・・・・・・。あの男を倒す手立てが、どう考えても、思いつかないよ・・・・・・」


 優璃は、ぎりっと歯ぎしりをした。


「でも、だからといって、あんな暴力に負けるわけにいかない! ・・・・・・私は、小笹先生に教わったこの空手で、暴力から守らなきゃダメなんだから!」


 身体の埃を払い、優璃は一気に蛇腹に向かってダッシュ。


「・・・・・・ちゃん! ・・・・・・りちゃんーっ! ゆりちゃぁーんっ!」

「・・・・・・っと! ほ、穂花っ?」


 途中、優璃は急ブレーキを掛けるようにして足を止めた。そこには、まるで行商人のように人三人を抱えてよたよたと歩く、穂花がいたのだ。


「どっ、どうしたのよ! ・・・・・・って、穂花! まさか箏音たちをっ?」

「いひひっ! そーなの! こざさせんせーとつきかちゃんが戦ってる間に、わたし、こっそりとことねちゃんたちをね、あのステージから・・・・・・」

「助け出してくれたんだ! やったじゃん! すごいよ、穂花!」

「へへー。わ、わたしだって、これくらいのことはできるもんねー」


 優璃は、にこっと笑った。穂花は照れ隠すように、髪を手で梳かしながら口笛を吹いている。


「穂花! 箏音たちのこと、ここでお願いしても大丈夫? 私は、蛇腹権座衛門をまた倒しに向かわなきゃ!」

「わ、わかった! ねぇ・・・・・・ことねちゃん! ねぇ、ことねちゃんてば! わかるーっ?」

「わ・・・・・・わかるよ、ホノカ・・・・・・でしょ? ・・・・・・ば、婆ちゃんと、草さん・・・・・・は?」


 穂花は箏音をゆっくり座らせると、ヨネと草治郎を芝生の上に寝かせ、その頬を軽く叩いた。数秒後、二人は気を取り戻し「ここは・・・・・・」と呟く。

 ポケットからティッシュを取り出し、穂花は水道でそれを濡らして持ってきた。ヨネと草治郎の腫れた顔を、その濡れティッシュでケアしている。


「婆ちゃん。・・・・・・草さん。・・・・・・あ、あたしたち・・・・・・赤鉄連合に、お店を・・・・・・」


 箏音は囁くような声で、ヨネと草治郎に話しかけた。


「そ、そうだべ! い、いてて・・・・・・。あいつら、いきなり店に来て・・・・・・いてて!」

「お、おっかなかったわぁ! ・・・・・・ら、乱暴するわ暴れるわ壊すわで・・・・・・」

「い、いててて・・・・・・。勝手に店の床さ引っぺがして、それから記憶が、なんだか無ぇべ・・・・・・」

「婆ちゃんも草さんも、あたしと一緒で赤鉄連合のやつらに、連れ去られたんだよ・・・・・・」


 芝生の上の体育座りをした箏音は、穂花とともにヨネと草治郎のケアをしながら、話している。


「よかった! 箏音の傷も二人の傷も、見た目ほど深そうじゃなくて。ただ、やはりダメージ受けてるだろうし危険だから、穂花と一緒にここにいて?」

「ユ、ユリは! ユリはどうするつもりなの!」

「私は、箏音たちにこんなことをした、赤鉄連合を倒すよ! あの蛇腹権座衛門を、やっつけてやるんだ!」

「む、無理だよユリ! あの男は、恐ろしいよ! あたし、お店にあいつらが来た時、婆ちゃんや草さんに乱暴したから、勇気を振り絞って立ち向かったの! でも・・・・・・あたしの半端な合気道なんか、まるであの男に通じなくて・・・・・・。それで・・・・・・」


 膝をぎゅうっと抱えて声を震わせる箏音を、優璃はそっと抱きしめて「大丈夫!」と励ました。


「私は、絶対負けない! 箏音のお店も私たちの居場所も、絶対守るから! 見てて!」

「ユ、ユリぃ・・・・・・」

「ゆ、優璃さん? む、無茶はいかんよぉ! あんな恐ろしい連中相手に・・・・・・」

「そ、そうだべ!」


 優璃はヨネや草治郎に、にこっと笑顔を見せた。


「・・・・・・大丈夫です! いってきます!」


 力強くそう言って、優璃は髪をぎゅっと結い直し、両頬を掌でばしっと叩いて自分に気合いを注入した。


「ゆ、ゆりちゃん! わたし・・・・・・」

「大丈夫だよ穂花! ここで、箏音たちをお願いね!」


 そう言って、優璃はまた蛇腹に向かって全力で駆けていった。



 * * * * *



「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・。つ、強いなぁッ・・・・・・。タ、タフすぎだね」

「と、とても、倒せる気がしません麦倉殿!」


 小笹と月花は、何度も蛇腹へ様々な技を叩き込んだが、すべて撥ね返されて為す術が無くなっていた。蛇腹は「お終いですかな?」と、変わらず笑っている。

 そこへ、復活した優璃が駆け込み、再び参戦。


「と、常盤さんっ!」

「常盤氏! 大丈夫だったのかい!」

「うん! 小笹先生も月花も、ありがとうございます! ・・・・・・ここからはまた、私がこの男を何としてでも倒してみせます!」 


 蛇腹をじっと睨む優璃の丸く黒い瞳は、鷹のようにきゅうっと小さくなり、そこからは凄まじい闘気が放たれている。まるで焔が揺らめくかのように、優璃の周りで闘気がゆらりと揺れる。


「と、常盤氏! しかしこれまで・・・・・・」


 月花が優璃へ手を伸ばして言葉をかけ終わる前に、小笹がその手をぐっと引いた。


「む、麦倉殿!」

「(大木さん。常盤さんは、今、静かに呼吸を整えて力を溜めてる! ・・・・・・本気を超えた本気で、この男を倒す気だよッ! 心配ではあるけど・・・・・・一旦、離れよう!)」


 小声で月花にそう囁いた小笹は、蛇腹と優璃が睨み合う場から離れ、その様子を見守っている。

 篝火が噴き上げる火の粉は、ばちりばちりと音を立て、夏の夕闇に舞い消える。

 風に靡く柳の葉は、しゃららしゃらしゃら音を立て、柳公園に調べを響かせる。


「ひゅっほっほほほほ! また、ボク様にやられたいようですなぁ、常盤優璃! さしずめ、第二ラウンドといったところかな? この勝負に判定などというモノはありませぬぞぉ?」

「誰が判定なんかで決めさせるもんか。競技試合じゃあるまいし。・・・・・・あんたは、この私が全力で打ち倒してやる! 覚悟しなよね、この、ろくでなし!」

「ひゅほほほふ! このボ・・・・・・」


 優璃は、蛇腹が話し終えないうちに、堅く握った拳で真っ正面からその顔面を殴り飛ばした。


「今のは、箏音たちの痛みだよ! ・・・・・・次のこれは・・・・・・私の怒りだぁーっ!」


 鼻面を叩かれ、後ろへ一歩よろけた蛇腹に、優璃は追い打ちをかけるようにして上段突きの四連打を同じ箇所に叩き込んでゆく。


「とああああああぁぃ!」

「・・・・・・んぐむ! ・・・・・・さすがのボク様も、鼻ばかり狙われては・・・・・・痛いですぞぉッ!」


 蛇腹は、鬼の形相となって優璃の四発目を掌で弾き飛ばした。


「なるほどね。・・・・・・どんなにプヨプヨで打撃が効かなかろうと、鼻は脂肪も乗らないし、鍛えられないものね!」

「ふんむ! ・・・・・・ひゅほほふ! ふざけおって! このボク様の空手で、貴様なんぞあの世へ送ってやるぞよ常盤優璃!」


 蛇腹は両拳を身体の前へ置き、額やこめかみに血管を浮き上がらせながら、どっしりと構えた。


「やってみなよ、できるもんなら! あんたのは空手じゃないよ。紛い物の暴力にすぎない! あんたの技なんかが、沖縄から受け継がれた『(てぃー)』のものなわけ、ないんだからね!」

「ひゅほほ! なにが、ティー、ですか。空手だろうがティーだろうが、人殺しの技に違いはないのです。ボク様はアウトローに生きる者として、正統に人殺しの技として使っているのですぞ。だいたい、人殺しの技に、道徳心だの人間性だのを見出せなどという方が、ナンセンスですな!」

「言いたいことは、それだけ?」

「なぁんですと?」


 優璃は口を真一文字に閉じ、鼻血をたらりと流す蛇腹の目へ、突き刺すような眼力を浴びせる。


「ひゅほっほほほ! いい! いいですなぁ、その気迫に殺気! ・・・・・・常盤優璃。一つだけ問いましょう。・・・・・・赤鉄連合の幹部となって世界を飛び回り、その技と殺気を裏社会で役立ててみる気は、ありませんか?」

「何バカなこと言ってんの? 私がそんな話、首を縦に振ると思う? 愚問だよ」

「でしょうなぁ・・・・・・。ふぅむ、勿体ない。それだけの力があれば、暴力が全ての世界では簡単にのし上がって、金にも一生困ることなく悠々自適に暮らせるものを」

「うるさいってば。・・・・・・私はそんな世界に興味ない。普通に、午前中は部活やって、午後はゆっくりと紅茶を飲んで、楽しく笑って明るく話せて・・・・・・そういう暮らしで十分よ!」

「ひゅほほふ。ゆっくりと、紅茶を、ですか。・・・・・・良いですなぁ、そういう暮らし。しかし常盤優璃、もう紅茶を飲むのは無理ですよ。このボク様が、今ここで、息の根を止めますからなぁッ!」


 蛇腹は強烈な突きとともに、革手袋の金属棒を振り回してきた。優璃は突きを避け、回転して打ち付けてくる金属棒を蹴りで弾き返した。

 短くも太い足で、蛇腹は優璃の胴体めがけて蹴りを放つ。優璃はそれを後ろに飛び退きながら威力を殺し、カウンターで回し蹴りを放つ。蛇腹はその蹴りを片手でブロックし、受けた手でそのまま優璃の側頭部へ金属棒を振るう。

 風を切って飛んでくる金属棒を、優璃は掬い受けるようにしてキャッチ。ガラ空きになった蛇腹の真正面から、上段の前蹴りを鼻先へ叩き入れた。


「ぐむううぅ! ・・・・・・ぜぇぜぇぜぇ・・・・・・。く、くそぉ。鼻をやられたせいで、呼吸が!」

「間違っても沖縄空手だなんて口にしないで欲しいよ! この、ろくでなしぃーっ!」


 優璃は、ぶるぶると揺れる蛇腹の五段腹へ足を掛け、そこから上に跳んでまた鼻先へ強烈な跳び足刀蹴りをお見舞いした。完全にその蹴りで蛇腹の鼻は潰され、まるでトマトソースをかけた饅頭のように、蛇腹の顔は真っ赤に染まった。


「・・・・・・ぜぇ! ぜぇ! ぜぇ! ごふーっ! ごふふーっ・・・・・・。ぐ、ぐるじい・・・・・・」

「久々の運動だって言ってたよね? 鍛え方が足りないんじゃない? 太りすぎだね。動きと反比例して、その体重であんたの身体は悲鳴を上げているんだね。・・・・・・もう、観念しなよ!」


 呼吸がだんだんと荒くなる蛇腹は、「ばかな」と言って、地面に片膝をついた。

するとそこへ、無数のヘリウム風船が飛んできて、蛇腹の周囲にふわふわと漂い始めた。その風船によって、蛇腹は視野を狭められている。


「ゆりちゃぁん! 今だよ! 今のうちに、やっつけて!」

「ユリーっ! ヘリウム風船はもう、それだけなの! 目眩ましは一回だけしか・・・・・・」


 なんと、穂花と箏音が屋台のヘリウム風船を次々と放ち、うちわで煽いで蛇腹を攪乱するようにそこへ流していたのだ。


「ひゅほぉう! ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・・・・。おのれぇ、小癪なことをぉ!」


 蛇腹は銅の鎖を手に取り、目を血走らせてそれを穂花たちの方へ投げようと、腕を振りかぶる。


「「 させるかーッ! / そうはいくかぁ! 」」


 腕が上がった瞬間、小笹と月花が駆け抜けて蛇腹の横から体当たり。それでバランスを崩した蛇腹はゴム鞠のように腹を弾ませ、ぶよんと転がった。小笹と月花はまたその場から慌てて離れる。


「ぐむううぅ! ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ! こ、こんなことが! 赤鉄連合が、こんな女子供のようなやつらに、不覚を取るわけがないのだ! こ、これではまるで、デスアダーの轍を・・・・・・」


 ぶよんぶよんと首の肉を揺らしながら、蛇腹は優璃を睨んでいる。


「何の話か知らないけどさ・・・・・・自分たちの悪事を、反省しろーっ!」


 優璃は叫びながら、蛇腹の顔を蹴り抜いた。

 蛇腹は「ぐおわ」とガマガエルのような声を出し、蹴られた勢いで赤飛沫を撒きながらそのまま木製フェンスまでどかりと退いた。ヘリウム風船は、その渦巻いた気流で次々と、蛇腹の周りへ吸い寄せられるように集まってゆく。


「ひゅふうぅ・・・・・・ひゅふうぅ! ぜぇ、ぜぇ・・・・・・。ぐぬ! 邪魔な風船ですな! ええい! 邪魔だというのだ!」


 集まってくる無数の風船を、蛇腹は何個か手刀で切り裂いて割った。まだ、残った風船は集まってくる。穂花と箏音は遠くから、蛇腹の方へ向けてうちわで煽いでいる。


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇえーっ・・・・・・。じゃ、邪魔ですぞぉッ!」


 蛇腹は自分の顔や身体の周囲に集まったヘリウム風船を、高速の突きで全てたたき割った。


「ぜぇ、ぜぇ! ボク様は、負けはせんぞ! すううぅぅぅおおおおおっ・・・・・・」


 ぶよりと腹を震わせて立ち上がった蛇腹は、空手の呼吸法を使って大きく息を吸い込んだ。優璃は「何度やってももう同じだよ!」と、襟足の髪を逆立て、その場で蛇腹を睨みつけている。小笹と月花は「タフな男だ」と呟き、その様子を優璃の後ろから見つめている。


「すううぉおぉ・・・・・・っ・・・・・・。が・・・・・・ぐがが・・・・・・っ! ナ、ナンダコレハ? コ・・・・・・」


 その時、蛇腹に異変が起きた。両拳を握って呼吸法を披露していた蛇腹だったが、急に、まるでプールで溺れたかのように苦しみ、裏返ったような甲高い声となり、白目を剥いてばたりと気絶。

 優璃はその倒れた蛇腹を上から睨み下ろしている。


「・・・・・・と、常盤氏! 何がどうなっている!」

「常盤さん! この男は、いったいどうして・・・・・・?」


 月花と小笹は、何が起こったのかわからないといった感じで、優璃の元へ。


「・・・・・・。・・・・・・ふぅん、なぁるほど。・・・・・・月花。小笹先生。やっぱり、悪いことをすればそれは自分に跳ね返ってくる、ってことですかね?」


 蛇腹の周囲に散らばる何かをじっと見つめている優璃。月花は「どういうことだ?」と問う。


「蛇腹権座衛門が倒れたのは、ヘリウムだよ。その風船に入ってたガス」

「え?」

「大量の風船を一気に割って、こいつの周りにはヘリウムガスが充満してたんだと思う。それを一気に吸い込んだから、酸欠で呼吸困難を起こしたんだろうね。・・・・・・身体が悲鳴を上げていたにもかかわらず、自分は負けるはずないなんて驕りが、まぁ、こういう結果になったんだろうね」

「そっ、それだけの理由? あんなにうちらの打撃を受けても平然としていた男が、そ、そんなことで意識を失って倒れるとは!」


 月花は、何だかやるせない表情をして、優璃と一緒に蛇腹を見下ろしている。


「と、とにかくッ! これでこの暴力団の頭も倒れたことだし、あとは警察の仕事だよッ」

「・・・・・・そうですね、小笹先生。それはそうなんですけど・・・・・・」


 優璃は真顔で「私の気が済まない」と呟いて、右の拳を強く固く握った。


「と、常盤さんッ?」

「・・・・・・こぉんのやろぉッ!」


 かっと目を見開き、優璃はその拳で、倒れた蛇腹の頭をがごんと重い音をさせて殴り抜いた。

 蛇腹は意識を失ったまま、ぷくりと頭にモモのようなタンコブを膨らませた。


「・・・・・・と、常盤さん。・・・・・・そっかッ。とにかく無性に腹が立って仕方ない、のか・・・・・・」


 小笹は苦笑い。月花は「では、うちは真剣で」と言い、団の横に落ちていた仕込み杖の刃を拾ってきたが、「さすがに殺人になってしまう!」と、優璃と小笹に全力で止められた。



 * * * * *



「ゆりちゃぁーん! うえええぇん! やぁーっと、終わったんだねーっ! 帰りたぁーい!」

「ちょ、ちょっとぉ、穂花! やめてよぉ! 服が! ねぇってば!」


 穂花は顔を涙でべろべろにしながら、優璃に飛びついた。


「ユリ、ありがとう! これで、もう、赤鉄連合も・・・・・・絡んでこないかな」

「・・・・・・大丈夫だと思う! ・・・・・・それにしても、何だかとんでもない一日だったね」

「そうねー。・・・・・・二度と、こんな思いはしたくないなー・・・・・・。痛いし恐いし、もう嫌よー」


 箏音は夕闇に浮かぶ月を見上げて、ヨネと草治郎を両腕で抱えながら、苦笑い。


「しっかし、赤鉄連合もとんでもねぇ連中だけど、今日は、もおっととんでもねぇもんを見たべやぁ! はっはは!」


 草治郎は、優璃の顔を見て、豪快に笑っている。


「え? ・・・・・・なに?」

「優璃さんのことですよぉ。驚いたわぁ。そんな可愛い感じなのに、赤鉄連合よりも強いなんて、いやぁーすごいのねぇー」

「え? わ、私。い、いやいやいや・・・・・・。私はただー・・・・・・。なんか、感情的になって戦っちゃったからなー・・・・・・」

「いいじゃないの、常盤さん。みんな、あなたの手で守られたんだよッ。気にしない気にしない」

「で、でも、小笹先生・・・・・・。守るためには戦いましたけど、私、あれでよかったのか・・・・・・」

「謙遜するな常盤氏。赤鉄連合を潰せたことで、また、店も平和に戻るんだ。きっと。常盤氏があの店に縁があったからこそ、こういう結果になったんだ。そういうことだと思うよ?」

「そう・・・・・・なのかな? わ、私はね、とにかく、またあの美味しい紅茶が飲みたい一心でー」


 みんなから誉められ慕われ感謝され、優璃はとにかく照れていた。

 その後、草治郎とヨネが呼んだ警察がやっと到着。パトカーが八台、現場に駆けつけた。

 柳公園内に転がった三百人以上の暴力団員はもとより、若頭の団や元締の蛇腹権座衛門もそのまま逮捕となったが、優璃からその場で経緯と状況を聞いた警察官や刑事たちは、どう見てもただの女子大生である優璃を見て、「この子が、赤鉄連合を?」と同時に思った。

 警察官たちは顔を見合わせ、全員、石のようにかちんとその場で固まってしまった。


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