70.ヴァルター一族
アカやん達の飛行機エピソードは44話です!
驚いて夜都と大和は目を合わせる。
「200年? 20年ではなく?」と 夜都が前のめりになって町長に迫る。
「? どこから20年が出てきたんだ? この町は私が生まれる前からあるぞ。我が一族が何代にも渡り町長を務めてきている」
「…はっ…失礼しました」
夜都は、訳がわからないまま辛うじて謝罪を口にする。それに対し、大和が質問をする。
「クラウス町長、つかぬことをお伺いしますが、代々この町の長を務めるお家柄とのこと、お住まいはこの町のどちらになるのでしょうか?」
「それは防犯上の理由から公にしていない」
「では、今回のような面会は毎回ギルドの一室を借りて行っている、と?」
「用件によっては違う場所であるときもあるが、我が屋敷ではないし、公的な場所を設けてもいないよ。なんだ、私に約束なしに会いにきたいのか?」
からかうように言われ、思わず、ウッと詰まるが堪えて返す。
「ええ、毎回ご足労頂くのも恐縮ですし、約束なしではなく、私達からご予定をお聞きした上でご報告に伺えればと」
「ふむ」
なぜか二人の会話にギルド長は全く入ってこない。彼はAIだから入れないのか。恐らく、話を振られるまでは動けないのだろう、と不自然な雰囲気をみて夜都は考えていた。
「――そうだな、このまま功績を上げていけば、屋敷に招待することも考えておいてやろう。ただ、屋敷があるエリアは一般人が足を踏み入れることができないから、事前にいくつか制限を掛けさせてもらうことになるだろう」
「わかりました。ご期待に添えられるよう精進いたします。何かよいクエストがあれば紹介していただけませんか?」
それを聞いて、町長はチラッとギルド長を目で指示した。
「はい。こちら で見繕ってみましょう。いいクエスト
があれば 君たち に連絡しよう」
ギルド長の言葉に町長は頷いた。その他は特に話し合うことはなく面会は終了した。
冒険者ギルドを出てからも二人はやや興奮が醒めなかった。ギルドから受け取った追加報酬の譲渡証明書を手に、ゲートで南の港町へ飛ぶ。
到着してからようやく先程の面会の話になる。
「驚いたな…」
「うん。ヨルの、あの、町長へ飛び掛からんばかりの様子が、アハハ」
「ちょっ…違うだろ。200年て何? こっちこそ、どこから200が出てきたんだって感じだよ」
「うん…何か不自然な事がいくつかあるね。でもはっきりわかったのは、あの町長、やっぱりこの町に住んでいない。立ち入り禁止エリアなんてこの町で聞いたことがない。後でナビゲーターにも聞いてみるけど。あと、」
「あと?」
「町長は、この町、いやこのゲームエリアの住人をAIとして認識し扱っている。これがどれだけ奇妙なことか」
「? だって彼はゲームマスターだろ?運営が雇った人」
「それなら200年、という情報を気にせず漏らせる? あれ、全く気にしてなかったよ」
「はっ…そうだな。え、じゃなに? 彼は何者?」
「本当に、“この町の町長“を代々受け継いでいる一族なんじゃないかな。ヨルが言ってたこのエリアの裏側にあるであろう町から来た住民でさ」
「それは…面白い話だな。このエリア外の人々は、全員か一部かわからないけど、ゲームの世界が同じ星の上に作られている、ってことを知ってるんだ」
「是非とも、町長の屋敷に行ってみたいよね」
二人は話しながら、ポルタの冒険ギルドに向かっていた。土地の受け取りをするためだ。この町のギルドは、外の町とはまた少し雰囲気が違う。内部は明るくて解放的で、ちょっと広めなオープンテラス付きのイタリアのバールに来たみたいだ。
カフェを楽しむ人達のテーブルを横切り、奥にあるギルドカウンターで大和が譲渡証明書を提示する。話はすんなり通り、所有者登録がなされる。
役所みたいな機能もあるんだな…と思いつつ、夜都は室内をグルッと見渡すと、知った顔が目に入ってきた。
「「あっ!!」」
同時に気がつき同時に声を上げた。そこには、後で連絡しようと思っていたアカやんとメグみんがいた。
「ちょっと~、こっち来たなら連絡してよ!」
「なんや、そっちも河岸を替えるんかい。」
「いや、クエスト報酬で土地をもらったから、別荘でも作ろうとしたとこ」
「あ、ヨル、この土地、保養所の建物も一部付随してたよ」
「な、何~? ここの土地は高いで。めっちゃ羨ましい。俺たちも住まわせろ!!」
「ええーっ!」
なんだかんだ押しきられて、アカやん達と一緒に現地を見に行くことになった。アカやん達は飛行機を作っているが、広い土地がなかなか見つからず、ホームを買わずお金を貯めているとのことだった。
「まったく、渡りに船やな」
「うんうん」
「お前達は全く~調子良すぎる!」
「ま、広いみたいだし、別に構わないんじゃない?」
実際、その場所はアカやん達にちょうど良さそうな広さ、そして立地だった。丘陵の上の方、町の端の端に位置するため、飛ぶ方向を考えれば民家の上を通らずに海辺へ出られるし、少し上の方は草原の平地が広がっていて、短距離の飛行訓練ができそうだ。
「眺めが最高だね」
「ああ」
町を見おろす位置にある保養施設をそのまま別荘として使い、その周辺に小さな畑を作る。余った場所をアカやんとメグみんに貸し出すことにした。
「対価は何か発明品でよろしくな!」
「オッケー、お互いwin‐winやな」
こうして、港町での四人の共同生活が始まった。
本年最後に物語を作るという新しいことにチャレンジし、目に止めて頂きありがとうございました。
大変励みになり、70話まで続けることができました。来年も御愛顧の程、宜しくお願いしますm(_ _)m




