57.建国記念日
「よう、大和」
「日比谷、また明日までよろしくね」
今日は土曜日、大和は予定通り昼前に夜都の家にやってきた。これから昼飯をとってすぐにログイン、待ち合わせ時間まであと1時間半くらいだ。
「そうだ大和、食べながらでいいからちょっと聞いてくれ。昨日、始まりの町の生産者ギルドの受付で聞いた話なんだけど――」
昨晩、最後はほぼ寝落ちのようにログアウトした夜都は、それでも覚えている範囲で受付との会話を伝えた。
「う~ん、ごめん、俺もわからない。“聖地“って言葉を使ったんだよね?」
「そう、確か…グラドスが建国の際に重要だったから聖地として崇められていた、そんな場所で働けることを誇らしく思う、と言っていた」
「あの町、そんな話は聞いたことがないけど以前は聖地だったのか。いや、今も…?今日のイベントで散策して痕跡がないか探してみようか」
「ああ、レタス達にも話してみよう」
二人はそれぞれ別の場所にログインして入り、待ち合わせ場所に向かった。どちらもグラドスの中心地ある生産者ギルドへ向かうため、一番賑わっているエリアを歩いていく。
夜都が生産者ギルドに入ると中はそれほど混雑しておらず、難なく仲間達と合流できた。
「あ!ヨル!」
「ヨルくん久しぶり!」
「よう、このメンバーが揃うの久しぶりだな」
次々に声が掛かる。どうやらヨルが一番最後だったようだ。今日はいつものメンバーが勢ぞろいした。レタス、レイナ、アカやん、メグみん、マリリン、マッド、テッド、ユイ、そしてヨルとヤマで10人だ。
「ヨルく~ん、ゲートでき上がった?手持ちがないから欲しくて」
「あ、メグみん、昨日一つ作ったんだけど機能チェックしてなくて…替わりに俺の手持ちをやるよ」
「ありがと♪ま、ヨルくんは失敗しないでしょ」
寝ぼけながら作っていたことは恥ずかしくて話せないし、さすがにそちらを渡すわけにはいかず、夜都は自分の最後の手持ちをメグみんに渡した。
「メグみんはヤマとは初対面だよな?」
「そそ、さっき話したよ。頭良くて頼りになりそう!早速今日のイベント話し合ってたんだよ」
「ヤマ、何か追加情報あったのか?」
「まあ、大体事前情報どおりのことが起きてるようだね。隣の商業ギルドとの間を奥に入っていった道と、冒険者ギルドの脇の道沿いが一番出店が賑わっているみたいだよ。例の新エリア、南方の町産のものがその辺りで売られているらしい」
「へえ。イベント用の限定アイテム、みたいな感じかな」
「あと、ここが“聖地“だって話、ユイがいい情報を持ってて――」と大和は言いながらちらっと夕依のほうを見た。
「そ、そうなの!ヨル、ひ、久しぶり!元気だった?あの、凍結の状態異常回復薬すごく助かったよ!」
フレンドメールではやり取りしていたが、夜都も夕依と会うのは久しぶりで一気に心拍数が上がるのを感じた。
「役に立ててよかった!ロットナンバーの最初のほう、ちゃんと効果あった?あれさ――」
二人がイベントとは関係ない事を延々と話し始めてしまい、レタスがすかさず間に入っていった。
「ほらほら、今日のイベントのこと進めないと。時間は限られているでしょ。ユイちゃん、さっきの話をしてちょうだい」
「あ……ごめんなさいっ。えと、ちょっと聞いた話なんだけど――」
夕依の話によると、この町の教会が今日は普段公開されていない場所まで見学ができるとのこと。ただ、司教にある“キーワード“を言わないとその場所に案内してもらえないらしい。そして、ここの教会は、この町を作る時に一番始めに手掛けられた建物だそうだ。
「そうか、聖地に一番最初の建造物、何かありそうだな」
「気になるよねぇ、みんなも行ってみたいでしょ?」
レタスからざっと全員の意見を聞き、一度その教会イベントに入るとタイムリミットまで出てこれない可能性があるため、少しだけ珍しい出店を見てから行ってみよう、ということに決まった。
話が決まり、30分後に教会前で再度待ち合わせとなり一旦解散となった。念のためパーティの最大人数5人ずつ二組で臨時パーティを組んでおく。こうすると急なイベント突入時にパーティ内で連携が取りやすい。
みんなバラバラと生産者ギルドを後にする。夜都は、大和と夕依と三人で冒険者ギルド脇の道に行ってみることにした。
夜都と夕依は二人並んで歩き、大和がその後ろをついていいく。
「…復帰後はほとんど北の山越えクエストに行ってるの?」
「うん。…せっかく時間が出来たからゲームを楽しもうと思って。でもヨルと遊べないのは残念。なんで北のクエストには参加しないの?」
「ああ、今、ヤマが持ってきてくれたクエストが期限付きだったからそっちからやってたよ。それに北は薬草生えてないだろうし」
「あ…!そ、そっか。薬草……。となると次は南の町?」
「え?なんで南?」
なんとなく噛み合わない会話をしていて夜都は落ち着かなかった。以前はもっと自然に話せたよな、と不思議に思った。そんな二人の会話を大和は何かを考え込む顔をして静かに聞いていた。




