52.日本支部
「来週のイベントの準備は問題なく終わっているかね」
「はい、代表。事前情報を告知しなかったため、問い合わせが殺到しておりますが、それ以外は特に問題も起きておりません。予定通り開催できます」
ここは、『Dragonight Online22』運営会社の日本支部内、とある会議室。元のゲームは海外で作成されていたがローカライズされた日本が先行してリリースされるという異例の販売方法をとっている。そしてこの第22作で遊ぶためには言語選択がないため日本語がわからないと非常に難しい。
大ヒット作品の変わった販売戦略に海外ファンからの日本以外でのリリースの強い要望を受けているが、利益追求しないのか未だに次のリリース国の予定が発表されていない。
そして日本支部はその役割を非常に制限され、そのお陰もあって職場はいつものんびりしている。
日本支部代表者は語学力を買われて雇われており、親会社と日本のシステム対応部門、営業、マーケティング等、各組織との連携を迅速かつ正確に行うことを一番に求められている。
「あ、代表、イベント情報が少しネットに流出しています。大まかな開催内容、えーと、建国記念で毎年開催ってとこですね、あとAI達が通常業務を行わない、街中に出店が立つ、あ!」
「なんだね、大声を出して」
「海を隔てた南方の町からの出店情報が出てますよ」
「君、親会社からの指示書を読んでなかったのか。そこまでは住人経由で出てくる情報だと」
「ついこないだ追加で届いたばかりじゃないですか……代表が翻訳してくれないと厳しいですよ……」
日本支部は主にネットでの情報を収集し分析していて、ゲームシステム内の監視・運営はHQが行っている。日本支部のスタッフからすれば、そこまで日本語に精通した人物がHQにいるなら、指示書も日本人でくれればいいのに……と思ってしまう。
「おそらく、ゲーム内で情報を聞き出せたプレーヤーがいたんじゃないかな。最初の指示書には書かれてなかったからな」
「な、なるほど!」
この代表が高く評価されているのは、語学力と組織運営だけではなく、HQの言外の意図も読み取る力が高いからではないか、と彼のスタッフは考えている―――
…………………………
「は……はーっ。大和、理解が追い付かないわ」
「まださ、ゲームなのかそうでないかの理解、というか認識が追い付いてないからだよね。あ、日比谷、SFとかどう?」
大和は大したことではないかのような軽さでDVDを選んでいる。
「ちょっとファンタジー系観て、実感がわくようにするとか。パニックもファンタジーかな?」
「う~ん、なんで俺、こんなにショック受けてんだろ。あ、ヒッチコックとか怖い系は嫌だ。ちょうど鳥に襲われたばかりだろ」
「「鳥!!」」と二人同時に声を上げた。
「アハハハ!じゃあ、俺が悪かったのか?すぐ討伐対象にしたからさ」
「いや、あの場合はそうなるでしょ」
「まあ、あの襲われ方だと倒しちゃうよな。それで今度は利用する方法を考える、と」
「そうだね、『鳥』を観ながら対策を考える?」
「逆に倒したくなるだろ!」
結局DVDは借りず、駅前をぶらぶらし、何となくペットショップで鳥を見てからスーパーに寄って帰っていった。
…………………………
夕飯は、鶏の水炊き、生姜に隠し味で砂糖を入れて弱くポーションを付与した。
「生姜と砂糖で、状態異常(混乱)回復ね」
「そうそう、混乱を静めるとなぜか頭がすっきりして考え事に良さそうだからさ。本当はあと一つ調合するんだけどわかんないんだ。ナイトではタクシムの黄色い花なんだけど」
「同じような植物とは限らないんだっけ。まあ、効きすぎるのも怖いからこれくらいでいいんじゃない?」
夕飯後、鳥の攻略の話をする。といっても次にログインできるのは翌日の朝だ。
取り敢えず、と夜都がいつものように紙とペンを出して書き出してみる。
「えーと、まず鳥の情報。名前は『ミスティオウル』、名前の通り白っぽい梟だったな」と夜都が言いながら梟の絵も描いていく。
「で、ネットでこのモンスターを調べてみたよ。『霧深い森に住んでいる。オウルと名前がついているが昼夜問わず活発に動き、草原を歩いている人を襲う。集団で行動することが多い。特殊能力は『霧に紛れて姿を隠す』と『啄む』 木の上のほうに巣を作り番で住む。巣には雛がいるか確認できていない』だって」
「モンスターだから生態が違う、のか?餌もネズミみたいな小動物ではないかも、と」
「そもそも、あの森で小動物を見かけてはいないよね……」
「巣にあるものが欲しいならやっぱりなにか替わりにあげるかするかしたほうがいいよなあ~、うーん」
結局、いい考えが浮かばずその日は入浴してすぐ就寝した。




