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44.Dragonと飛行

結局、“わからないことがわかって“気が済んだ二人は、大和を置いてけぼりにしていたことを謝り、別の話を始めた。



「へえ、飛行機を造るのか」


「そう、電気自動車ならぬ電気飛行機、いや魔道飛行機か?回路はオレが造って本体を§めぐみん§(メグみん)に造ってもらおうかとな、あ、ヤマちゃんは知らん子ね、見た目がガテン系ギャルな『大道具製作師』や。大道具言うても道具だと言い張れば飛行機もいけるらしい」



大和はチラッと夜都を見た。レタスを超える生産職仲間はいないような口振りだったが、この“アカやん“、更に“ガテン系ギャル“というパワーワードまで出てきた。


「それで、オレとメグみん、南の港町ポルタに拠点を移そう思てな」


「なるほどな、元々海の上を飛びたかったんだよな。ここで造ったら持っていけないからか」


「この世界に飛行できる乗り物はどこにもない?気球や飛行船も?」


「「ないね」」



大和の疑問に二人の答えが被った。大和には不思議だった、これだけ魔法という万能な動力源があるのになぜ空を飛ぼうとしないのか……。恐らく風魔法でも火魔法でも、ある程度熟練度を上げればなんらかの方法で飛行することは可能になるのではないか、と。

また、生産職であれば、現代の知識さえあればアカやんのような発想も生まれる。

職業で言えば、竜騎士がいればなんでもできてしまうはずだが彼らはそれをやらない。天空の草原に連れていった夜都にでさえ。プレーヤーの間で彼らは端から攻略のあてにしてはいけないような共通認識がある。夜都だけが例外的に接点があるのだ。

それから―――夜都の情報を基にした大和の推測だが、この22作目は恐らく魔法の属性があと4つある。その4つの中に飛行が可能になるものが含まれているかもしれない。なお、訓練で教えてもらった8属性までが既出のもの。これで全部で12つだ。これは“12頭のDragon“の数と一致している。

“12頭のDragon“とは、このゲームのシリーズ1作目で最初に聞かされる“この世界の起源の逸話“に拠るもので、創造主が“12頭のDragon“を従えてこの世を統治し始めた、という内容だ。1作目だったからか、タイトルに出てくる“Dragon“を物語のストーリーの主軸に取り込んで最後まで作り上げられている。2作目以降は、大ヒットしたRPGの名前を冠してはいるものの、基本操作と設定以外それぞれ独自のストーリー展開と結末で、“Dragon“の位置付けも敵であったり味方であったりとバラバラだ。

そして“Dragon“がそれぞれ異なる属性・色で12頭もいるという設定は、大和が調べた限り1作目しか出てこない。これは、ダイブ型VRという新システムに変更したことで、一度世界設定もシリーズの初心に帰るということなのか。

夜都は偶然10頭以上の色の異なる“Dragon“を見かけてしまった。ならば属性も同じように―――――


飛行と魔法の属性から“Dragon“にまで考えを巡らして黙り込んでしまった大和に、アカやんは首を傾げた。



「なあヨル、ヤマちゃん動かなくなったで」


「ああ、そのままにしといてやって。考え込んでるときは邪魔しない。さあて、俺は畑に行って植えた薬草が根付いたか見にいくわ。アカやんも怖がらずにギミック、いやロボットを点検してけよな、引っ越すんだし」


「はいはい」とアカやんの返事で、大和を残し二人で畑に向かった。



……………………………



畑に戻り、夜都は早速植えたばかりの薬草の株を確認し始めた。根付くかどうかは半々だが、人形のお陰か、今回は全て大丈夫だった。



「これはお礼を言わないとだな」


夜都は、アカやんに捕まって動けない人形の元に行き、感謝の気持ちを伝えた。


「水撒き人形(ロボット)、いや、名前付けるか……みず…ミリィ、植え替えした貴重な薬草がちゃんと根付いたよ。発育もいいし、いつも俺の畑をみてくれてありがとう」


夜都の言葉に、ミリィの動きがピタッと止まったかと思いきや、カタカタと震えだし案山子のように固定していた台から外れ、その場から飛び立った。よくみると背中に蝶々のような形の小さな羽があり妖精のようだ。30センチくらいの(アンティーク)(ドール)に凄く似合っている。


「おおーっ!なんだ、マリリンはもともと妖精をモデルに造っていたのか」


「いや、羽はなかったはず……単なる人形から進化したとしか思えん。持ち主のお前の声に呼応してたようやった」



完全に移動の自由を得たミリィは畑の中を飛び回る。それに反応するかのように、ふわふわした綿毛の動きがやや活発になる。



「あのふわふわは、ミリィの眷属?みたいなものかもな」


「何がどうなっとるんや……まあ、ファンタジーの世界なら考えてもしゃあないか」


「そうそう」と、後ろから大和が声をかけてきた。思考の底から戻ってきたようだ。


「ファンタジーだから、不思議な現象がよく起こるし、可能なはずでも制約がある。海を渡れないのにはなんらかの理由があるのかもしれないね」


「ヤマちゃん、それは、飛行機を造っても駄目かもしれんてことか?」


()()()()なのかも。他のエリアの攻略も進んでないみたいだし。事情が変わればバタバタと動けそうだけど」



大和の言葉を聞いて、夜都は、なるほどなと思った。竜騎士という職業があるのに彼らはこのエリア外の話をしないのだ。


(俺が朝野になぜエリア外に行かないのかと聞いたとき、“まだ行けない“と答えていたっけ。俺はそれを、何かRPG的なクリア条件が必要なのか、と思った。けど……行けないのは俺たちプレーヤーで、それは彼らも同じなのか……?)

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