42.マイホーム
仕事を終わらせた大和は、久しぶりに昼飯を作ってくれた。一つポーションが完成したことだし、いつも作ってる夜都へお返しとのことだ。
「上手~い、なんで俺と同じようなチャーハンがこんなに上手いんだ。これも魔法みたいなスキルだよな」
「しかし、なんで日比谷だけ魔法が使えるんだろうね」
「2つとも俺しか使えない能力、最初にゲームで、後から現実に使えるようになったんだけどさ。やっぱり朝野が何かしたとしか……座標の能力は明らかにあいつ絡みなんだよな」
「ああ、初めて発現したときに一緒にいたんだよね」
「そう、天空の草原にいたとき、朝野は、俺なら座標が動いても使えるような、すごいゲートが作れるとかなんとか……あっ!」
そこまで言って夜都は思い出した。天空に設置したままのゲートに座標の登録をしてきたことを。そして新しい能力を獲得していたことも。
「何かやらかしたって顔だね」
「ごめん、色々忘れてた。……いや、まあ、あの時バタバタしてたし、お前のチュートリアルがまた衝撃的で」
しどろもどろになって言い訳しながらも夜都は洗いざらい白状した。なんだか母親に絞られているような気分になった。
「―――そんな能力が開花してたとは。派生した能力だっけ?それ、その後試した?今ここでやってみてもらっていい?」
「いや」と答え、夜都は大和の前で試してみることになった。座卓の上に置いてあった自分の携帯に手を翳す。
『全球測位登録』
手から薄く光が出て、夜都の携帯に吸い込まれていく。
「うっわー、俺、まじで魔法使いみたいだ」
「これで登録が出来た、と。じゃあ窓のほうを向いてて」
大和は携帯を取りあげ、リビングを出て携帯を隠しにいく。その後夜都がどこにあるのか探してみる、という方法で検証するのだ。結果、簡単に探し出せることができるのがわかった。
「これ、探すときってどんな風に表示される?」
「頭の中にぼんやり場所のイメージが出てくるんだよ、立体の地図みたいな?その中に探し物の位置が強調されている、というか……上手く表現できないけど」
「登録済みの場所が複数ある場合は?」
次々に出てくる質問に、夜都は思い出しながら答えていく。
「たぶん……捜そうとするときは、すでに“何を“捜すかを決めていて、それを考えながら唱えるからそれしか場所が出てこない……んじゃないかと思うよ。天空の草原のほうも探してみる?」
「それは……ここではやめて置こう。ログインしたときに現実世界にある携帯を探してみようか。どうなるか……すごいことがわかるかもしれない」
その他、登録件数の上限も聞かれたが、それは夜都にも今のところわからなかった。このゲームの能力は解説がなく、いつも手探りで調べていく形が基本で、しかも熟練度がいつのまにか上がって、いつのまにかできることが増えているという不親切設計だ。ただ、ステータスが見えない状態であれこれ試すのは危険ということで、夕方にまたログインしてからの検証となった。
………………………
その日の夕方、軽く食事をしてから二人はログインした。空腹を強く感じるとやはりログアウト勧告のアラームが鳴ってしまうから念のためだ。
「土曜のこの時間だと、あんまりログインしている人いないかも」
「何時頃が多い?」と、大和が馬車の手綱を操りながら聞いてくる。
「待ち合わせしてなければ夜9時くらいかな。みんな寝る前にログインするっぽい。……あっ!」
前方150メートル付近でいくつかカラフルなゼリー状の物体が道を防いでいる。
「会敵、前方150、スライム3、水色・赤・無色」
そういいながら、夜都が弓矢で易々と三匹とも貫く。威力はないが、スライムの核を正確に狙い打ちして倒したようだ。
「……150メートル先の透明な物体が見えてるの?」
「見えるっていうか感じる?あ、でも見えてもいるのか……?」
よくわかってない夜都にそれ以上の追求はやめておいた。大和は、先日の展望台の一件で、夜都が涙ぐんでいたのが気になっていたのだ。
そうこうしているうちに、東の町アルマに到着した。ここは農業が盛んで道幅が広く大型の馬車も行き来しており、二人は馬車に乗ったまま夜都のホームへ向かった。
「へえ~、始まりの町とは違うな。木組みの家が多い」
「俺はこっちの雰囲気のほうが好きかな。長閑でさ」
「ホームにはこないだ帰ってきたんだっけ」
「そう、ヤマのクエストが終わったあとにね。廃村で採取した薬草を植えにきたんだ」
ホームに着くと、馬車を家の脇の駐車スペースに停めた。農家らしい広い敷地で家屋も庭も広々としている。
「さて、ヤマはその辺のウッドデッキで適当に寛いでて。俺は、裏の畑を―――」
恐らくまた雑草で溢れかえっているであろう畑に向かった夜都は、そこで思いがけない光景を目にした。




