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4.始まりの町グラドス

(アス)の向かった先は、所謂『始まりの町』グラドス。

町といっても都市サイズの大きさである。都市部、農村部、商業部、工業部、一通りの機能が備わり、町の中心に高く聳え立つ教会がある。この教会がスタート地点で、リスポーン地点だ。ふと、夜都は気になった。そういえば町長の家がどこかにあるはずだが知られていない。この町の規模だと館か城になると思うのだが。



朝野(アサ)~、未開の採取エリアって何処にあるんだ?」



目的地はてっきりスタート地点から離れたところにあるのかと思いきや、なぜ此処に??不思議に思い声を掛けると、



「ふふふ」



振り向いて朝野はニヤニヤし、


「しっかりつかまれっ!!」


「はっ、んふがっ、ぐあああ~っ!ぎゃああっ!!」


「アハハハハハハ!」



急に上を向いて垂直方向に上昇し始め、心の準備をする間もなく垂直に圧がかかり叫んでしまった。



「おーまーえーっ!!わざと行き先言わずにいたな!…って、捻りを入れるなーっ。ぎゃあああっ!!」


「アーハハハハハハ!サイコー!!ダイセイコー!!」


上昇速度はやや落としつつ、ゆっくり捻りながらのびのびと飛んでいる(アス)―――群青色の竜……深い海の中のような青い鱗が太陽の光を浴びてキラキラして綺麗だが、夜都は恐怖が勝って叫び声しか出ない。

それとは対照的に、大笑いする朝野。してやったりと夜都のリアクションに楽しみながらアクロバット飛行を満喫している。


ふと目を開けると、晴れ渡る空、ちょうど真上の方向にぽつんと雲の塊が見える。


ヒュン、とその雲の真横を下から通りすぎると、(アス)はゆっくり旋回しながら方向転換し、雲の方におりていく。


「ふぁっ!何あれ?!半球の大陸?え、まさかここに?!」


そこには、雲の上には、キレイな緑の草原と木々で埋め尽くされた大陸があった。そして、その草原の上を何頭かの竜が踊るように飛びまわっている。


(何これ、竜の楽園?こんなのところに俺来ちゃってよかったの?)


アスがゆっくり降りていくと、周りの竜が集まってきて、まるで挨拶するように、ギャ、ギャ、と声を掛け合い始めた。竜は、皆カラフルで色んな色をしている。夜都は、アスと、アレクの乗っているオレンジ色の竜しか見たことがなかったので驚いた。


(これって竜にも色んな属性があるってことか?これ、10種類はいるよな。本当設定細かい世界だ……)


そのまま草原の開けたところに着陸し、二人とも地上に降りたつと、アスは朝野と何かやり取りした後また上空へ飛びたった。

たくさんの情報を処理出来ず、ぼーっと突っ立ってる夜都の背中に、朝野はバンッと叩いてくる。



「ふぁっ!お、お前な~」


「今日は面白いリアクションがいっぱい見れたわ。驚いただろ」


「一体何なのこれ。始まりの町(グラドス)の真上にこんなのあるって誰も想像つかなかっただろ。ここ、ゲート置いて登録すれば、俺いつでもこれちゃうんじゃないのか?教えてもらってよかったのか?」



ゲートはセーフティエリアであれば好きなところに設置できるアイテムで、地点を登録すればいつでもゲート同士を行き来することができる。ただし、そのアイテムは非常に高額で希少なもので、一度設置したら動かせず、撤去は設置者のみ可能となっている。町には必ず一ヶ所は設置してあって、町中に限りプレーヤーは勝手に設置することを禁じられている。



「ここはセーフティエリアだから設置自体はできるんだけど……この大陸、常に少しずつ動いているんだよね」


「へ?それ何か問題ある?」



夜都は、まだまだ自分が知らない決まり事があるのかと、内心がっかりする。もう一年近くやってるのにな…。



「あんまり例がないかもしれないけど、ゲートって『登録』と『ゲートの座標』の情報、両方が必要でさ。行きたいゲートがあるはずの座標になかったりすると移動できないんだよ」


「???」


「つまり、今、ここに設置したとすると、この座標つまり、この空間にゲートが置かれてないといけない。常に町の上空を少しずつ移動しているから、まったく同じ場所に戻ってくるのはいつになるかわからないし、そのタイミングでゲートを使うのはほぼ無理な話だな」



「えー……、そっか…。つまりここってゲート使用不可の設定にしてあるんだな」


「もしかしたら、高機能のゲートっていうものがそのうち出てくるかもしれないけど。ヨルが作れたりして?」


「う~ん……まったく作れる気がしない。作れるときって、こう、何かが降りてくるんだよな。閃きっていうのか、設計図みたいなのが。まあ、いつか作りたいものって頭の片隅にでも置いとくよ」



夜都は、"座標"と"ゲート"という言葉を思い浮かべながら、何となくやや上空を見上げた。すると、目の端に、ブワッとぼやけた細かい何かが見えてきた。


(え、何?目が眩んだ?)


「お~い!アサーッ!」


「おお、アレク。やっぱり来てたんだな」


振り向くと、草原の奥、木々間から体格のいい白銀の鎧を着た男がこちらに向かって走ってきた。

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