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33.戦闘職

ドスッ ドスッ ドスッ………


重低音の足音が辺りに鳴り響く。町の外はモンスターが出没するため、巨躯の馬っぽい生き物が馬車を牽引する。馬車は折り畳み式の幌がついた、オープンカーみたいな二人掛け×二列の造りになっている。御者は、遠距離の攻撃手段を持たないレイナがやり、その隣に大和が座った。

因みに、大和が攻撃魔法、夜都が(威力のない)弓矢、レタスが(威力のある)ハンマー投げである。



「へえ。レイナは『鍛治師(武器)』なんだね」


「うん!でも今新しく『中級鍛治師(武器)』が出て来て、どうしようか迷っててさ~」


レイナは、肩まで伸びた、ゆるくカールした水色の髪を風に靡かせて手綱を操っている。スレンダーな体型に、革衣を合わせ、ウエストポーチみたいなバッグを2つ腰に巻き、小振りの剣を1本帯剣している姿は様になっていた。



「どうして?」


「私、武器専門というより、あまり戦えない生産職の攻撃力をサポートできる道具を造りたいんだよねぇ」


「レイナちゃんは、私達に武器を造ってくれてるのよ。使いやすくて助かってるのだけどこの子それじゃ満足できないんだって」



後ろからレタスが声を掛けてきた。話し方は女性らしさがあるが野太い声だ。大和はなぜかそのギャップに驚いていないが、格好も金属製の鎧姿の戦士然とした筋肉隆々の『医薬師』である。


「道具ってことは魔道具か?」


「そう、ヨルたん!魔道具を造れるのは、私が知る限りマリリンみたいな『小型魔道具製作師』だけなんだよねー。道具もいいけど、もう少し武器に特化した、こう、魔道武器みたいなのがよくて」


「火を吹く魔剣とか他のRPGによく出てくるよな」


「そうそう、それ!」



四人が話しながら進んでいると、街道前方に牙の鋭い茶色の野犬みたいなのが現れた。牛のような大きいサイズだ。


「会敵、マッドドッグ!前方50m、1匹!」


水弾(spülen)


すぐに大和が呪文を唱え、指先から弾丸のようなものが目にも留まらぬ速さで飛び出す。それは正確にマッドドッグの頭部を捉え、血を噴き出して倒れた。


「わ~かっこいー!惚れそう!」


「瞬殺、鮮やかよね~。旅が楽だわ♪」


「いや、レイナが察知してくれて助かったよ。一人だとまだ危ないね」


「ヤマ、まだ初心者なんだから気配察知までできたらこっちの立つ瀬ないよ」


大和は謙遜するが、道中のモンスターはほとんど大和が倒していき、1時間ほどで目的の廃村近くまで到着した。



…………………………




「それで、ここから街道から右に入っていくみたいだね」


大和は、受付(ナディア)から受け取った地図を見ながら村の位置を確認する。


ちょっと見せて、とレタスが地図を覗き込む。こういう時、地図に強い人達が積極的に動いて行き先を確認し始める。自然に、夜都とレイナが少し離れて二人の指示を待っていた。


「いやあ、楽チンだね、ヨルたん!」


「レイナさ、何で俺だけ"たん"付けなんだよ?」


「え~っ、語呂?なんとなく?特別だよ~、エヘヘ」


「リア友のヤマの前ではちょっと……せめて"ちゃん"がいい……」


夜都と大和は馬車の中で、お互いが現実でも友達であることを二人に話した。どうせゲームを始めたばかりの大和との接し方を見れば自然とわかってしまうだろう、と考えてのことだ。ただ、積極的には回りに吹聴しないようお願いした。


「男の友情っていいよね!雑な口調なのに仲良さそうなとこ」


「そういうもん?まあ、気を遣わずポンポン話せるから、彼女といる時より楽かもな。たまにちょっと張り合っちゃうけど。男のプライド?矜持?みたいなやつ」


「ふああ~、いいねえ。ライバルとして切磋琢磨し合える友情ってことね!って、ヤマってスペック高くない?張り合えてるの?」


「レイナ!失礼な!」


「アハハハハハッ!」


「そこの二人!」


方針が決まったようで、大和が二人に話しかけてきた。


「これから街道を外れて道に垂直に進んでいく。まだ馬車が通れそうだから連れていって、森林に入るところで馬車を置いていく」


「ヤマちゃんがログアウトするまでは馬車を消すことができないからね。貸出時の契約で、パーティー以外は使用不可の設定にしてあるし、召還獣のディープホースはヤマちゃんに一旦還してもらうわ」


「一応、馬車は藪か何かで、街道からなるべく見えないようにする。ただ、万が一誰かに持っていかれても保険が効く。レイナ、もう少し御者をお願いしていい?」


「はあい!ヤマ、またレイナを守ってね♪」


大和の攻撃力が初心者とは思えない程高く、レイナに頼られているのを見て、生産職を選んだ夜都は、その事を少し後悔した……。



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