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17.魔法使い(仮)

庭園のベンチで話し込んでいて身体がすっかり冷えてしまった夜都たちは、一緒に目的の店に向かっていた。



「へ~、ゲームかあ。日比谷が本物の魔法使いになった、と」


「いや、もう止めてね。自分でも中二病患っているとしか思えなくて…居た堪れない。―――大和だから話したんだぞ!」


「ははっ。いやまあ~、何ていうかリアリスト?信心深くないし超常現象も鼻で笑うようなとこあるじゃない?その日比谷が言うならさあ、検証に付き合わせてもらうよ」


「……何もないと思うけど笑わないでね……。」


「俺が思うにさ、VRでの体験が脳の活性化に作用して、身体能力や演算能力が上がったんじゃないかな。悪い影響だとは思わないけどね」


(一人でうだうだしてたより、こうやって笑い飛ばしてもらったほうが全然いい。まじ恥ずかしかったけど話してよかった―――)



二人が向かった先は、キッチンストアが何件も入っている大型ショッピングモール。先日、植物を買いにきたところだ。まずは、キッチンツールから見ていく。



「大和、お前って料理してる?」


「割りと作るほうじゃない?自分で作って食べたほうが体調いいし。俺は忙しくても料理するな。ストレス解消にもなるし」


「それ絶対、料理上手いやつ。じゃあアドバイスよろしくな!」



夜都は相談しながら細々と選んでいった。一番高い買い物は大きめな両手鍋で、所謂錬金釜にするつもりだ。鍋は家にもあったが、検証用とわけたほうがいいという話になったのだ。

続いてスーパーで食材を買う。大和のアドバイスで、ややお高めな有機野菜を中心に選んでいった。夜都は、手に取った野菜で何かしら匂いに違和感を感じるものがないか確認していったが、人の目が気になったせいか集中できずそれ程見つけることができなかった。取り敢えず、予定していたニンニク、それに、無臭のはずのアスパラ、元々匂いがあるが気になったニラと梅の実を選んだ。

ついでに、と大和は夕ごはんの材料もカゴに入れていく。手料理を振る舞ってくれるようだ。


(大和の未来の彼女さん、暫くこいつを貸してくれ。今の俺には料理上手で気が合う友人が必要なんだ)


夜都は上の方を向いて心の中でそう思った。


………………………


その後、二人はまっすぐ夜都の家に帰り、座卓の側に座って一息ついた。

大和は、座卓の上に置いてあった検証の紙を手に取りじーっと眺め始めた。



(うっわ……居た堪れない……。)


「日比谷、これさ、」


「う、うん、何?」


「ほら、ここのとこ、現状の2.のとこの名称が――…」



大和に手書きを直されていく。早速真剣に取り組んでくれる様子をみて、夜都も恥ずかしさを無視して話し合っていった。


「あと、それぞれの能力の発現なんだけど、大体でいいから時期がわからないかな?ゲームとこっちでのと両方ね」


「発現の時期……、なるほどね。なぜこの能力だけに限定されてるのか、切欠がわかればってことか」


「そうそう。紙、二枚目を作って書いていこうか」



さくさく進む確認作業。持つべきものは頼りになる友達、と夜都は言われるがままに進めていった。

さすが大和、頼りになる、と口にも出して伝えてみれば、当事者が直視できない問題は他人に任せたほうが案外上手くいくんだよ、と控えめに返された。

一通り状況を確認した後、いよいよ調合作業に入る。そういえば、と、ベランダに出しておいた花を大和に見せる。一応水替えはしていたからまだそれほど萎れていなかった。



「うっわ、きっつー」


「え?全然いい匂いだけど。日比谷にはこれが臭いの?」


「臭いっていうか、鼻を刺激する匂い?いい匂いとはとても言えないよ」


「日比谷さ、それだと日常生活に支障がでるかもよ。その能力のオンオフってできないの?検証項目にあった能力のコントロールだよ」


「あ、能力のコントロール……呪文を決めてなかったわ」


「自分で決めるんだよね。うっかり口に出さないよう普段使わない単語か、長めの言葉にしたらどう?」


「そうだな。……もしこれでコントロールできたりしたら、現実に能力が使えることの裏付けの一つになるかな」


「確定ではないけどね。五感は自己暗示の影響も受けることがあるから」



二人はネットを使って嗅覚に関する英単語を調べ始めた。

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