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16.庭園

振られるのを待ってるヤツっていますよね。自分的にかっこつけてて苦手なタイプです。

あ、こういう話って、恋愛タグ要りますか?!

向かった街の駅前で昼御飯を食べた夜都は、買い物に行く途中にある庭園を通っていくことにした。ここは歴史ある風光明媚な回遊式庭園で、それ程入館料が高くないため大体いつも混んでいる。

しかし今日は曇っていて肌寒い気候のせいか歩いている人も疎らだ。季節的なイベントもやっていないようで、夜都にとっては散歩するのにちょうどよく、腹ごなしに少し歩き回ることにした。

ふと、見慣れた後ろ姿が視界に入った。昨日会ったばかりの大和だ。よく見るとデート中のようで女性と向かい会って話をしている。彼らの周りはよく剪定された木々に囲まれて少し目立ちにくい場所だ。



(あいつ、彼女いたんじゃないか。昨日聞かれたときに言えばよかったのに何で黙ってたんだよ!)



とっさに向こうから見えない木の陰にそっと隠れた。大和に内緒にされていたから声を掛けにくかったのだ。何となく素直に喜べなかった。



(なるほど、これが"仲のいい友達だけに彼女が出来て寂しい"って気持ちか。でも、ずっと彼女がいなかった大和がやっと付き合ったんだ、祝福してあげないと)



だが、今日は声を掛けずに帰ろう、と夜都はそっとその場を離れようとした。だが、彼らの会話の声をうっかり拾ってしまった。



「私、これ以上はお付き合いできません。もう先の見えない状況には耐えられないんです」


「……そっか、そうだよね。俺が本当に悪かった。今まで俺の都合に合わせてもらってて待たせてばかりだったよね」


「うん…きっと大和くんはこれ以上踏み込んできてくれないんだろうな、って感じてた。私は好きだったけど…大和くんはそうじゃないよね」


「そんなことないよ。でもお互い信頼関係が作れなかったのならもうきっと無理だよね。付き合ってくれてありがとう。これからは会ったときは友達として接してくれたら嬉しいな」


「……。うん……今までありがとう、さようなら。ここでお別れしよう」


「うん、さようなら。元気でね」


(なんかさっぱりしてるな。あいつ、こういうの慣れてる?あ、やばい、こっち来る!)



相手の子が小走りで夜都のほうに近づいてくる。慌てて、顔を会わせないように下を向いてすれ違う。

しかし夜都がそーっと顔をあげてみると、自分を見ていた大和と目があってしまった。



「ご、ごめん。ほんとたまたま偶然で。見かけて立ち去ろうとしたんだけど、ちょっと聞こえちゃって…」


「情けないとこ見られたな。振られちゃったよ」



夜都は、振られたのにいつもと変わりない雰囲気の大和にちょっと戸惑う。



「……いいの、あの子?遠目だったけど清楚で落ち着いた感じで勿体なかったんじゃ?大和が別れたくないって強く言えばまだ大丈夫そうに見えたけど」


「いや、何となく今日会ったら別れそうな予感があったんだよ。なんか…もう駄目かなって雰囲気に何度かなってて。知り合いに紹介してもらったから、自分から振るのはちょっと…、と思ってたところでさ。まあよかったんだよこれで」


「大和って、ほんっとドライだよな~、昔から。俺だったら、駄目だと思ったらお互い時間を無駄にさせちゃ悪いからちゃんとそう言うけど」


「あー、日比谷は自分が感じたことを正直に口にするタイプだよね」


「悪かったな、単純なやつで」


「でもなんで一人でこんなところ歩いてるの?どこ行くとこ? この後予定がなくなっちゃったから遊んでよ」


大和の申し出に、あ~っそうなるよね、と内心思ったが、これからすることに付き合わせていいか決めかねた。


「うーん、どうしよっかな。大和なら大丈夫かな……」


「なになに、何を企んでるんだよ。」


「う~~~ん………でもなあ。お前くらいしかいないもんな。一人で……じゃなくてもいいのか、これ」


「なんだよ、俺なら全然構わないよ、巻き込んじゃってよ。で、一体なにをしようとしてるんだ?!白状しろー!!」


(だ、だめだ……ごまかそうにももう無理だ。大和は白状するまでしつこく聞いてくる。流石エリート銀行員……)


「―――うう……笑うなよ?実はさ……」


お互いを知り尽くしていることが仇になったか、結局夜都は全て白状させられたのだった。

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