15.検証
ルビの綴りが間違っていたら教えてください(´Д`;)
朝野と会った日の翌日も休日で、現実世界に戻ってきた夜都は早速検証を始めた。
簡単なところから、ということでスタミナポーションを作ってみることにした。材料はおそらくだが、こちらで言うローズマリーとニンニクだ。あと蒸留するのだが……、
「こないだのさんまの香草焼きでかなり効果が出てた気がするけど……、さんまの成分は必要?取り敢えずいいか。―――あと、ニンニクだけど……」
この間は瓶詰めのニンニクのすりおろしを使ったが、成分表記をみると添加物やオイルも入っているようだ。夜都は、昼飯ついでにスーパーへ買い物に出かけようかと予定を立て始めた。
「それと蒸留器……にんにくはすり鉢でいいかな。これって調合系の能力でなんとかならないのか」
(そうだ、あの二つ以外の能力の検証だって必要だったな。ゲームだと材料は特殊能力による不思議加工で作ってるんだよなあ……あっ!)
夜都は自室にも関わらずキョロキョロし、一呼吸してから例のフレーズを唱えた。
「ステータスオープン!」
部屋に誰もいないが恥ずかしい、と少し顔を赤くしながら、例の電光掲示板が表れるのを待った。だが何も起きなかった。
(どういうことだ……えーと、あとは……)
夜都は、ローズマリーの葉を少しとって皿の上に置き、その上に手を翳した。ゲームの中でやってるのと同じように、汚れを落とすことをイメージしながら、『浄化』と唱える。
ゲーム内の呪文は、自分で起こす現象を上手く想像できるよう好きに決めることができる。そのため中には無詠唱のプレーヤーもいるが、夜都はなるべく恥ずかしくない、かつ唱えやすいものとして、英単語に統一している。
「あれ、何も起きない。『浄化』『浄化』じゃあ、『蒸留』これも駄目?『粉砕』ええーっ……」
散々な結果に、恥ずかしさも相まってベッドにパタンと倒れ込んだ。
(だ…だめだ……何も起きない。なぜだ…なぜなんだ………)
夜都はベッドの上で枕を抱いてゴロゴロ転がる。考えているうちに違和感を感じた。ガバッと起き上がり、先日作った箇条書きのまとめを手に取った。
(―――ああ、やっぱりおかしい。いや、俺はこの時すでにわかっていたんだ。 なぜなら、現状と検証の項目では、例の二つの特殊能力のことしか言及していない。)
つまり、無意識にそれ以外の能力の検証の必要性を感じていなかったのだ。
「まじかよ~…自分が信じられなくなってきた」
(思い返してみれば、ご飯を作るときに調合でやってる現象が起きてもおかしくなかった。一般能力系なんてもっと現象が起きやすかったんじゃないか…?何せ、呪文が英単語一つなんだから)
結果的に、なぜか例の二つの能力以外使えないことがはっきりしただけだったが、調合するために手作業する必要がでで出てきた。
男の料理、くらいの大雑把なものしかわからない夜都は、ネットで手作業の場合に必要な道具を調べ始めた。専用の道具もあるが、検証するだけならなんとか代用する方法が知りたかった。
(だいたい調理器具で大丈夫そうだな……調理用ガーゼ?蒸し器と水切り用ね……やっぱり専門店に行ってみるか)
どっと気疲れしたし空腹も感じたので、電車に乗って大型店のある街に出掛けることにした。