11.社会人交流
決して、ひどい失恋した経験を暴露して、同意を求めているわけではありません……
こういうこともあるよね、という妄想です( ・`д・´)
「ヘイ、大和ちゃん!」
「ヘイ、パース!」
「ナイシュー! イェーイ!」
「日比谷~、パス、キレッキレじゃないか。ちゃんと利き脚に出してくれたよな」
「日比谷、お前フットサル久しぶりに来たのにすげぇな。どこかでやってたのか?」
社会人になってから集まるようになったフットサルのメンバー、確かに彼らと会うのは大和よりも久しぶりだったし、フットサル自体、全然やってなかったからコントロールが良すぎて自分でもびっくりした。
「いや~、ここんとこ運動してなくて息がすぐ上がるよ。きっと明日、筋肉痛になりそう」
夜都はそう謙遜して返したが、体調はすこぶるいい。自分でもよくわからず首をかしげる。
「日比谷はフットサル続けてたんだな。あ~、俺も一緒に遊びたかったな……」
しょぼんとしている大和に、みんなが慌てて声を掛ける。
「ヤマちゃん、時間ができたらいつでも声を掛けてよ。飲みでもいいし。なーっ、そうだよなー」
「そうそう、日比谷の都合が悪かったら、呼び出してくれよ」
次々と誘いの声が掛かる大和。昔から愛されキャラなんだよな~。頭よくてモデルみたいに綺麗な顔してるのに人当たりがよくてさ。
うんうん、と夜都はいつもの流れに納得していると、話題は思わぬ方向に進んだ。
「ヤマちゃんて、彼女作んないの?忙しくて無理とか?」
「でも都銀勤めってモテそうだよね」
「そういや、日比谷ってまだ彼女と続いてんの?なんだっけ、ミヤビちゃん?」
聞かれたくなかった話だったが仕方なく応える。
「別れたんだよ、何年か前に」
「え?!なんで。大学からの付き合いで長かったよね。結婚するかもって感じじゃなかった?なんで別れたの?」
「あー…、俺が転職したとたん別れたいって言われたんだよ。あいつは士業が良かったらしく。事業会社に転職したらあっさり振られた。俺は希望通りの仕事が出来るようになって全く後悔してないんだけど……」
うう……、このメンバー、なんとなくだけど意識高い系ばっかりなんだよな。サッカー好きの繋がりで同世代を紹介していって集まったから変なヤツがいなくていいんだけど。
夜都は、以前は大手の監査法人にいたが、辞めたことが切欠で付き合いにくくなるのが嫌で、大和が本格的に忙しくなってからフットサルの集まりに全く来ていなかった。
「ひでえ~」
「何それ、知ってたヤマちゃん?」
「俺も最近知ったんだよね。日比谷、言ってくれればよかったのに」
「えっ、大和知ってたの?!――あ、あいつも俺たちのサークルにちょっとだけ入ってたからか」
夜都は、大和が知っていたとは思わず驚いたが、よく考えれば共通の知り合いがそれなりにいたので納得する。
「ヤマちゃんも知ってる子か…、こういっちゃ何だけど性格悪そうな感じだよな」
「転職したから別れたいって…男をなんだと思ってるんだろ。財布か?そんなんじゃ、ちょっとでも生活が傾いたら家庭を支えるどころかすぐ離婚って言って浮気されそう」
「日比谷は別れて良かったんじゃないか?俺なんか、こないだやっと開業して収入激減してからのスタートなのに、俺の彼女、事業が波に乗るまで替わりに生活を支えるって――」
「「「それは惚気だろ!!!」」」
話が少しずつ逸れていき、夜都はホッと息を吐いた。
(何だ……みんないいヤツじゃないか。変に壁をつくったりして、俺って…。)
ワイワイ話しているみんなを見ていて、夜都は少し涙が出そうになった。彼女に振られたのは相当ショックだったのだ。自分の選択が間違いだ、まるで人生を脱落したみたいに感じてしまっていた。
やっぱりみんなともっと連絡とれば良かった、忙しかっただろうけど、大和にも悔しい気持ちを聞いてもらえばよかった、そう思いながら大和のほうを見ると、彼も自分を見ていたらしく目が合った。
「日比谷さ、本当の事言うと、俺、お前が結婚すると思ってて邪魔しちゃ悪いって距離とってたのもあったんだよ。言ってくれれば良かったのに。他の人から聞いてちょっとショックだった」
「――――言わなくてごめん!!もう、女は当分いらない!俺と遊んでよ!」
思わぬ告白に、夜都は半泣きになって大和にすがりついた。大和によしよしされていると、周りから試合再開の声が掛かった。
「よし!!日比谷は女への恨みをボールにぶつけろ!」
あはは、とみんなで笑いながらコートに集まる。
夜都は、みんなと打ち解けられてすっきりした気分で走っていったが、この後とんでもない現象を体験することになるとは思いもよらなかった―――――