1.ヨル
長らく読み専でしたが、自分の好きなものを詰め込んで書き始めました。
最初は公開ボタンを押すのがちょい怖かったですが、、ちょこちょこ書いてアップしていきたいと思います!……ので温かい目で見守って頂ければと。
宜しくお願いしますm(__)m
夜都がMMORPGを始めるきっかけは、ちょっと何かを造り出してみたいな、くらいの軽い気持ちで見つけた単純な生産ゲームだったと思う。
お世話をして、トライ&エラーで上手くなっていく過程が好きだし、仮説を立てて実験する科学も好きだったし、、ネットで適当にフリーのゲームを探して、それが不特定多数がいるオンラインゲームの世界になって、、そしてダイブ型のVRMMORPGの存在を知ってからは、毎夜ログインして仮想空間で過ごすようになった。
現在社会人4年目、仕事と両立しつつほぼ毎晩、、生産職として、素材の調合、所謂『錬金術』で遊んでいる。
…………………………
ザッシュ、ザッシュ、ザッシュ、、
「ふ~っ」
腰をトントンと叩き空を見上げる。ドサッと耕した土の上に昔ながらの鍬を置く。
「俺、仕事から帰って畑を耕してるなら農業を選ぶべきだったかな…」
夜都の仕事は経理と税務。大学で、職業に直結する、難易度の高めな、理数系、特に数字の分析でとれる資格、と考えて在学中にCPAを取得し、監査法人を経て事業会社の財務経理部で働いている。経理や税務もトライ&エラー、改善したり新しい手法を見つけて遣り甲斐があるのだが、、いかんせん味気ない!殺伐としたオフィス街と自宅の往復で、机上ではない「生産」で息抜きしたいのだが…。
(でも、現実世界、この摩訶不思議な生産からの~調合はできないし、農業はもっと大変なんだろうし、生活できるかわからないし)
一休みしようと、畑の端に設置した木製のベンチに座って自家製のレモネードもどきのポーションを飲みはじめたとき、母屋のほうからガランゴロンと鈍い鐘を鳴らす音が聞こえてきた。
「おーい!夜都ー!家にいるかー?」
「おーっ。裏の畑だー」
大声ではないのに聞き取りやすい、よく通る低くていい声。この声の持ち主は、夜都がこの仮想空間に来る理由の一つだ。彼とはこの世界で出逢った。名前は朝野。同じ生産職ではなく、竜騎士という戦闘職だが意気投合してよくつるんで遊んでいる。
このゲーム、『Dragonight Online 22』というタイトルで、昔からあったRPGのシリーズものの22作目で、onlineになったのが10作目から、VRになったのがこの22作目で、夜都が産まれる前から続いている大作だ。
タイトルからわかるとおり、ドラゴンが物語のキーとなる世界…恐らくだが創造主がドラゴンだったと考えてられており、竜騎士は他の職業よりなる条件が厳しく、その分能力も高く花形の職業だ。
竜騎士はまだ未知の特殊能力がかなりあると言われている。また、このゲームでは、何か新しい能力を獲得できたとしても、それがどんな能力かがはっきりわからない。つまり、能力の解説がゲーム内で出てこないのだ。もちろんゲームの運営会社からも情報を公開しておらず、まさしくトライ&エラーで検証する必要がある。
既出の能力はネット社会で情報収集すればよいが、、似たような名前で違う能力が多く存在し、能力のレベルアップや進化もあり、また取得条件が確定していないものが多く、やり込み度が高い仕様がロングヒットとなる理由の一つと言える。
朝野は、竜騎士の多くが特殊能力開発と身につけた力で冒険に向かう中で、頻繁に生産職の夜都の家にきて農作業の力仕事を替わってくれたり、調合を手伝ってくれる有りがたい友人だ。
夜都は御礼に調合した製品を渡しているが…正直充分に返しきれている気がしない。だから、朝野が声をかけてくるクエストの誘いは基本的に乗るようにしているが。
(ネットの世界って難しいな。相手のプライベートにどこまで踏み込んで聞いちゃっていいのかわかんないし、顔も年齢も本当の事が確認できない)