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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第四章 増えた仲間と建て直す家
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女神ベステルからのお礼



「うん、美味い! これが異世界の酒と寿司!」


 ダンジョン農法神の言葉に横になっていたクロは起き上がると、畳に座り寿司を食べながら酒を飲む神たちの満足そうな顔が目に入る。話も弾んでいるのか大きな声を上げながら騒ぐ神たちを見ていると工房での飲み会やオーガの村での飲み会を思い出し、神だろうが人だろうがオーガだろうが同じように騒ぎ飲み食べるのだと実感するクロ。


「なるほど、ダンジョンの再生能力で土が肥沃なのも植物を育てるのに好都合なのか~」


「はい、ダンジョン神ともそこは協議しまして、紫水晶がダンジョンの魔力を阻害するのではなくダンジョン神が設置したダンジョンコアの外郭が紫水晶に酷似している性質もっており干渉できないのだと知りました。ダンジョンコアはダンジョンを管理するもので、ダンジョンによってはダンジョンコアの性質も違うらしく紫水晶に干渉できるものも設置されているそうです。王国にあるダンジョン以外では紫水晶を使ったとしてもダンジョン農法は無理とお言葉を賜りました」


「それはオーガの村近くにあるダンジョンでは無理という事かな?」


「はい……ですが、干渉されない物質もあるという事です。私の口から言えるのはここまでかと……」


「そうだよね~君の上司が秘密にしろという事だからね~それにしても中トロは美味しいね! あむあむ」


「はい、赤身よりもまったりとしていて、大トロよりさっぱりしていて、ちょうどよい脂の乗りです」


「私はイカが美味しかったです! 甘くて白くて不思議な味です!」


「イカとはクラーケンの眷属で船をも沈めるという……」


「そのイカと同じじゃないけど見た目は似ているわね。もしかしてクラーケンも美味しいのかしら?」


 イカの話になり叡智の神ウィキールが眼鏡をクイと持ち上げ口を開く。


「クラーケンは毒もなく獰猛な性格で船を沈めますが、元々は小さなイカの魔物が進化したものです。恐らくですが進化した元の魔物もアオリーンと呼ばれるイカで、元は潜伏と偽装のスキルを持ち隠れて獲物を捕らえる種だったはず。エビーンやマダラガニなどを襲って食べる事からその味は美味しいと推測できますが、進化すると突然変異のように体内を作り替えるものも多いですからね。同じように巨大なイカの代名詞であるダイオウイカ、ああ、これは異世界の話ですがダイオウイカはアンモニア臭が酷く食べる事はお勧めできないな」


 蘊蓄を垂れ流すウィールの言葉を真剣に聞いていたクロは自身でも寿司を食べよと思い魔力創造すると、頭上から聞こえる地獄からの叫び声にも似た音に気が付き視線を向ける。


「あっ、どうも」


「ううう、私が悪いのは認めますから、そろそろ下ろして下さい……お、お腹空いたよ~」


 半泣きの金髪ドリルを揺らしている女神フランベルジュの姿に苦笑いを浮かべる。


「神に空腹などありません~」


「自身から生み出される魔力と民から送られる神力で満たされるからな。空腹というよりは欲求だな。皆で寿司を食べているというシチュエーションが空腹だと勘違いするのだろう」


 叡智の神らしく空腹を分析するウィキールの言葉にがっくりと肩を落とす女神フランベルジュ。


「今思ったけど、今度からはこんなに多くの神たちに奉納することになるのか?」


 クロの漏らした言葉に悪い笑みを浮かべる女神ベステル。


「ふふふ、安心なさい! こんな事もあろうかと料理の神と農業の神にダンジョン神の腹心を連れてきているのよ! 農業の神に米やら野菜やらを生産させ、ダンジョン農法でも色々と作らせるわ! それを調理するのが料理の神! ふふふ、私に抜かりはないわね!」


「おおお、それなら調味料とかも大丈夫ですよね!」


「そこは奉納よ! 醤油と味噌に酢とみりんをよろしくね! 砂糖と塩と酒は……酒もか!」


 明るくお願いしてくる女神ベステルに呆れた顔をするクロ。発酵の神とかいないのかと思い寿司を食べて騒ぐ神たちに視線を走らせるが、どの神が何を司っているかなど見てわかるわけもなく渋々頷く。


「これからも定期的に女神シールドを使いなさいよ! あれでしか通信手段がないからね! ああ、通信手段をご褒美として渡すのはありかしら……」


「異世界でスマートフォンとか渡されても充電とかに困りますけど……」


「いんや、そうじゃなくて双子石を使った通信方法とか、魔力波導感知方とか、いっそ使徒にしていつでも神託とか?」


「いつでも神託って、絶対に嫌だな……」


「うん、私もそれを使ったら毎日お供えお願いしちゃうわね……」


 腕組みをする女神ベステルに、それだけは阻止したいと思うクロは別の提案を口にする。


「祭壇にはこっちからお供えできるし、そっちから何かメモを送るのは難しいのですか?」


「うん? おお、それで解決だ! 大量にお願いするときはマジックポーションも付けてあげるわ! 何ならエリクサーやソーマを送ってもいいわよ!」


「ソーマだって!? それなら僕からもお願いするし、少しだけ分けて貰えると嬉しいかな~ねぇねぇ、ク~ロ~いいだろ~」


 エルフェリーンが立ち上がりクロの背中に抱き着きお願いしてくる姿に、ああやってお願いすればクロがいう事を聞いてくれるのかと学んだアリル王女。いつもはそれは違うと察して耳打ちをするお付きのメイドも今は寿司に夢中であり、職務中という事もあり日本酒には手を出していないが、一口だけならと囁く悪魔がアップを始めている。


「師匠が言うなら……ですが、俺からもお願いしていいですか?」


 背中で喜ぶエルフェリーンをくっつけたままクロは女神ベステルへ真剣な瞳を向ける。


「ええ、何でも言いなさい! 叶えるかどうかは別だけど」


「アイテムボックスのスキルに腐敗防止とか付けられませんか? この前、作った味噌汁が腐敗してて……アイテムボックスに入れた他の物にもカビの胞子とか毒素が飛んでそうで……ああ、それと入れてあるものが常にわかるリスト表とかがあると便利です! お願いします」


 頭を下げるクロとそのままゴロンと転がり落ちるエルフェリーン。女神ベステルは腕組みをしたまま数度頷くと口を開く。


「よし! 特別だからね! クロのアイテムボックスのスキルに時間停止を付けるわ。それとアイテムボックスを発動している時にシールドを出せばそこに入っている物を映し出すようにする在庫確認のスキルもあげるわね。このスキルは天界の素材を管理する天使が持つレアスキルだからね。ありがたく思いなさいよ!」


 腕組みをしていた手を払うとクロは魔力反応の光に覆われ、それが収まるとクロはアイテムボックスを使い左手でシールドを発動させるとタブレットのような画面に入れてある物の文字が浮かび上がる。指でタッチするとスクロールもでき、このスキルの発案者である天使に心の中で感謝するクロ。


「へぇ~これは便利だね~僕も欲しいな!」


「うわっ、他にも腐っているものが……ありがとうございます。このスキルは本当に役に立ちそうです」


 素直にお礼を口にするクロに満足げな表情を浮かべる女神ベステル。


「まだ、こんなにも食べてない食材や料理があったとは……」


「どれどれ、ほうほう、この角煮が食べたいわ!」


 女神ベステルがリストを見るクロの横に並び視線を這わせ、その後ろから視線を向けるウィキールやフウリンにカイーズ。上からはフランベルジュが覗いており、お菓子の項目に入ると目を輝かせる女神たち。


「チョコが食べたいですぅ~」


「私はこのチップスが気になるぞ」


「鮭皮!? 鮭皮が食べたいです!」


 その様子に聖女はワサビのダメージから回復しつつ視線を向け、気さくなやり取りに思う所があったらしく、


「ま、また女神さまから賜って……やはりクロ様は……」


 クロという存在を過大評価し直すのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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