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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第四章 増えた仲間と建て直す家
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神たちと寿司



 肩に手を置いた女神ウィキールと女神フウリンから流れ出る魔力を受けると、ぞわぞわと髪が逆立ち全身の毛穴が開いたような感覚を受けるクロは魔力創造を使い特上寿司と日本酒をセットで創造してゆき、魔法陣から生れ落ちるそれを受け取った聖女とメイドが長蛇の列を作る神々に手渡してゆく。


「ほらそこ! 列を乱すな! ウィキールとフウリンは一定で魔力を注ぐ! 勢いあまってクロを爆発させるんじゃないわよ!」


「はっ!? 爆発って何だよ!!」


「そこは気を付けています~」


「ああ、常に二倍以上の魔力保有量を超えないように注意しているから安心しろ。最悪は復活させることもできるからな」


「最悪……はぁ……その言葉を信じますよ……」


 女神ベステルが列を整え魔力を注ぐ二柱に激を飛ばす姿を見ながらクロは、二柱を信じて魔力創造を使いながらも自分は寿司と日本酒を作る機械と自分に言い聞かせ作業を続ける。


「美味しいですね! 生のお魚ははじめて食べました!」


「これは寿司という料理だよ。クロの故郷の料理で神すらも欲しがる凄い料理なんだぜ~」


「はい! すごく美味しいです! こんなにも多くの神様に寿司を作るクロはすごいのですね!」


「ああ、自慢の弟子だぜ~食べ始めた神様たちを見てごらん。あんなにも嬉しそうな顔をして食べて飲んでいるだろ」


「はい、みなさま笑顔です」


「クロは神様すらも喜ばせるんだぜ~これは凄い事だけど、アリルも笑顔になってるぜ~」


 エルフェリーンの言葉を受け頬に手を当てるアリル王女はニコニコとした笑顔をしている自分に気が付き、手で寿司を食べていた事もあり酢飯も頬に三つばかりくっ付く。


「えへへ、私も笑顔です! クロはすごいです!」


「そうだぜ~みんなを笑顔にできるクロは凄いだろ~」


 二人で笑い合い特上寿司を食べていると、日本酒と特上寿司を手にした新人の神がエルフェリーンの前に座ると頭を下げる。


「エルフェリーン様、お久しぶりでございます。ケイル・レミ・ポキーラでございます。新しく神になりこのような形で再開するとは思ってもおらず」


 そういいながら丁寧に頭を下げるケイルは以前の骨ローブ姿ではなく、生前に最も魔力を保有した三十代中盤のイケメン俳優のような顔立ちに魔導士らしいローブを纏った姿である。

 それが胡坐をかいて頭を下げ目の前には寿司下駄に乗った特上寿司と日本酒の瓶が置かれる姿を見たクロは違和感を覚えつつも耳を傾ける。


「僕も再会できて嬉しいよ! ダンジョン農法は国に報告したよ。そしたら宰相くんが君の子孫にその事を伝えて、誰かしらがダンジョンで実験し運用するそうだよ。君の偉業は後世に残り人々を救う立派なものだね! 新しい神様になった事も凄いが、後世の人たちを救う技術を開発したことは本当に誇るべきことだね!」


「ありがとうございます。これもエルフェリーン様方が国に報告して下さったおかげです。私は神となりダンジョン農法の未来を見ながらこの星の運営に手を貸したいと思います」


「あわわ、神様がこんなに近くに」


「アリル王女ですな。私はまだ神としても未熟者、そう緊張なされなくとも……私としては伝説のエルフェリーン様の前に座っていることの方が恐れ多く……ですが、今宵はご一緒しても構いませんか?」


「もちろんだよ! 僕も君とは短い時間しか話せなかったからね~ネクロミノコンを使って話した時の記憶は今もあるのかい?」


「はい、あの時は驚きましたが……良い経験をさせて頂きました。魂という存在が確かにあるのだと実感させられました」


「神様、神様、神様は何の神様なのです?」


 目の前に座ったケイルにキラキラした瞳を向けるアリル王女に微笑みを向ける新人神。


「私はダンジョンの神様の補佐をしているよ。本日はこの場にいないが、ダンジョンを管理する神がいてね、その補佐をしているんだ。アリル王女のお父さんは国王さまだろ」


「はい!」


「私はその国王さまを補佐する宰相とでもいう所だよ。ダンジョン神が完璧に管理しているから出番は少ないが、こまごまとした所を補佐しているのが今の仕事だね。自分ではダンジョン農法神と名乗っているがね」


「ダンジョンの神は人型ではないからこういう場には姿を現さないわ」


 手に特上寿司と日本酒を持って現れたのは前髪で目を隠した鍛冶の神であるカイーズがダンジョン農法神の横に腰を下ろす。


「前はウイスキーを奉納して頂きありがとうございます。あのお酒は素晴らしいですね! 豊潤な香りと喉を通り過ぎた時の情熱……あれほどのお酒が異世界にはあるのですね!」


 丁寧に頭を下げたカイーズは顔を上げるとウイスキーの素晴らしさを語り、エルフェリーンに顔を近づけ手を取り固い握手を交わす。


「ああ、僕も初めて飲んだ時は驚いたよ。あれほど完成された酒はこの世界にはないからね! 味も香り素晴らしいね!」


「に、日本酒の方が素晴らしいですわ~痛っ!? わっわっわ~~~~揺らさないで~~~~」


 ウイスキートークに混じった宙吊りの武具の神フランベルジュは大きな声を上げた所で女神ベステルに尻を勢いよく叩かれ体を大きく揺らす。


「ふわぁ~楽しそうです!」


 下から揺れる女神フランベルジュを見つめるアリル王女。それを微笑ましく見ていいかわからずに困った表情をするダンジョン農法神とクロ。エルフェリーンは大爆笑しながら日本酒を口にし、鍛冶の神であるカイーズもご機嫌で日本酒を煽り寿司を口にする。


 クロも魔力創造を続けお礼を言って受け取る神や、微笑みを浮かべ受け取る神に、涙を流しながら受け取る神など色々な神に礼を言われ、愛想笑いを浮かべつつ創造を続け最後の一人に寿司を渡し終わるとその場に座り込みながらも聖女とアリル王女付きのメイドに寿司と日本酒を創造し、その後ろで物欲しそうな瞳を向ける女神ベステルと女神ウィキールに女神フウリンにも創造するとその場で横になる。


「私たちも宜しいのですか?」


「食べなさい、食べなさい、あんたら二人も、こんなしょうもない事に巻き込んでごめんなさいね~寿司の味は保証するわ! あむあむ」


「聖女とメイドも口にするといい。生の魚を使っているが腹を壊すことはないはずだ」


「これはクロの魔力百パーセントで作られています~食べられるのも一生に一度あるかどうかですよ~」


 聖女は以前にもクロが想像したお菓子やおつまみにお酒を口にしたが、寿司という生魚の乗った料理は初めてであり手を付けるのに戸惑うが、神からのお墨付きがある料理という事もあり手を伸ばす。

 アリル王女のお付きのメイドは女神ベステルから食べなさいと言われた瞬間に中トロを口に入れ満面の笑みで固まっていた。


「生の魚を魔力で創造した料理……あむあむ、これは……」


「どうよ!」


「なぜ、ベステルさまがドヤ顔をするのですか……これは日本と呼ばれる国で切磋琢磨した和食の最上級料理で寿司という。

 その寿司の中でも特上に位置する最高級の料理だ。三種の赤身は脂の乗り方と部位で名称が変わるマグロと呼ばれる魚を生で調理し、米という穀物を炊き酢を加えた調味料で味付けをして酢飯にし、二つを合わせた料理だ。上の魚はもちろんのこと、下のシャリと呼ばれる米には空気を含ませながら握ることで口に入れたらシャリがほどけ魚の味を邪魔することはないのだ。

 それにつける醤油も魚との相性がよく、添えられた生姜は口直しに最高なのだよ」


 長台詞で寿司を説明する叡智の神ウィキールもまたドヤ顔であった。


「とても美味しいですね。それにしてもこの緑色したものは? あむあむ……ひぃぃぃぃぃ」


 添えられたワサビの塊を口に入れ悲鳴を上げる聖女の姿に意識を取り戻したアリル王女付きメイドは、何事かとゴロゴロと転げまわり口を押える聖女を見つめ、自身の特上寿司が被害を受けぬよう持ち上げるのだった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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