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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第四章 増えた仲間と建て直す家
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順調に進む家造り



 晴天に恵まれ家造りは急ピッチで進み、アイリーンが魔力で生成した糸に細かな結び目を作り高速で動かすとチェーンソーの様に丸太から板を切り出し事に成功する。


≪これからはチェーンソーレディーを呼んで下さい≫


「それは構わないけどクロがシールドで台を作って固定している事に私は驚くのだけれど……」


 キュロットはクロがシールドを複数枚使い、長い台と丸太を固定する台を作った事に驚いていた。


「よくある裁断機をシールドで再現しただけだが……」


「シールドを直角に曲げたり、大きくしたり、ましてや家一軒分の大きさに作り空間に固定するのは、どうかしてると言ってるのよ!」


 ビスチェと同じような口調で声を荒げるキュロットに親子だなぁと思うクロ。過去に同じようにシールド魔法の使い方をビスチェに声を荒げられたのだ。


「何、笑っているのよ……」


 キュロットの隣にいたビスチェが視界に入り訝しげな瞳を向けられる。


「いや、何でもないよ。それよりもこの板を柱に打ち込むんだよな?」


「そうですよ。柱と梁の間の間柱に平行に打ち込みます。それには釘を使用しますがこの魔槌で板に穴を開け、木製の釘はパーシモの木を加工したこれですね。硬く丈夫な木材ですし、傷みづらい事で有名なものです。木剣の素材にもなります」


 ルビーが連日加工していた木製の釘を大量に見えるとキュロットは口角を上げる。


「へぇ~やるじゃない。素材もいいし丁寧な加工が施されているわね」


「ママは板を打ち込んで、私が板を運ぶわ」


 ルビーが手にしていた釘を受け取り動き出す親子。フランとクランは二階の床に板を打ち付けている。オーガのチームも朝食前には帰ってきており数名増え、大きな男よりも小回りの利く女性が増員されラライと協力して一回のトイレまわりやキッチンまわりの床板を張っている。


「ボロボロになって帰ってきた時は心配しましたが、やっぱり親子ですね……」


「ああ、そっくりだよな……」


 やや嚙み合っていないがその会話に突っ込む者はおらず、クロは大鍋を前に野菜を刻む。


≪クロ先輩は炊き出しマンですね~≫


 板を量産するアイリーンに苦笑いしながらも見慣れた野菜をカットして一口大の肉が煮える鍋に投入する。


「何だかいい香りがしてきましたね~」


 板に魔槌で穴を開けてゆくルビーは鼻を動かし流れてくる香りに鼻をヒクヒクとさせる。同じく鼻をヒクヒクとさせているのはクロの足元で火加減を見る白亜。火加減を見るといっても薪を投入したりはせず、燃える薪を寝転がりながら見つめているだけである。


「そろそろ野菜も煮えたかな~あとはルーを入れて弱火だな。白亜、ちょっとずれてくれ」


 クロの言葉に三回転ほど横に寝返りを打つ白亜。


「ありがとな。美味しいカレーを作るから食べてくれよ~」


「キュウ!」


 嬉し気な鳴き声を上げる白亜は寝転がりながら尻尾をバシバシと地面に叩きつける。この行動はドラゴンやリザードマンが取る喜びの行動で、強く地面を叩きつけることで相手に感謝や愛情を伝えるとされている。反対に尻尾で地面をグリグリと押したり足で地団駄を踏んだりする行動は怒りを表しており、それを通り過ぎると明確な攻撃へと向かうのだ。


≪懐かしい香りですね~給食を思い出しますよ~≫


 大鍋をかき混ぜるクロの目の前に文字が停止し、アイリーンへと振り向くと満面の笑みを浮かべながら木材をカットし、その横では魔槌を使いながらお腹を鳴らすルビー。


「今日はカレーだ! よ~し、気合を入れて炉を作るぜ~」


 エルフェリーンは家から少し離れた場所に建設している鍛冶場の炉を作っており耐熱性のレンガを組み上げていた。家と鍛冶場へは長い渡り廊下を作り防音の魔術を施すが鍛冶場での火事が飛び火しない為にも少し離れた場所に建設している。


「なんかいい匂い~」


「こりゃカレーの香りだね。クロが一生懸命料理してくれているからな。お前たちも頑張りなよ!」


「はいっ!」の声が重なり作業に集中するオーガの娘たち。


「本当に変わった香りだけど……癖になるわね」


「カレーの香りね! クロの特性カレーはとっても美味しいのよ! 驚いて腰を抜かさないでよね!」


「どうしてビスチェがドヤ顔をするのか疑問だけど、早く板を渡しなさい」


 こちらの親子も仲良く作業を進め壁に板を打ち付けている。


「ん……また未知の料理……」


「この香りは胃にくる……」


 キッチンで作業するフランとクランにもカレーの匂いは届き、鼻をスンスンさせながらもキッチンまわりの床に板を打ち付ける。


「カレーは完成だな。あとは米が炊ければ昼食だけど……」


 焚火台の上で湯気を上げる複数の鍋からは米の香りも混ざりはじめ、クロは村氏の作業へと移行する。鍋を持ち上げ枯草を強いた場所に下ろし蒸らす。


「よし、十分は蒸らしたいが、白亜は勝手に開けるなよ」


 寝転んでいた白亜はいつの間にか火から下ろした鍋の前におり手を伸ばそうとしていたが、クロに指摘され慌ててその手を引っ込める。


「火傷するからな」


「キュウキュウ」


 ドラゴンは火に耐性があるとでも言いたいのか、抗議の声を上げる白亜の頭を優しく撫で抱き上げるとカレーの鍋の前に下ろし「内緒で味見するか?」と声を掛けると尻尾を地面に叩きつける白亜。


 軽く混ぜたカレーにお玉を入れ木皿に入れるとスプーンで味を見るクロ。それを見上げる白亜の目はキラキラと輝き、その後ろにはラライが同じようにキラキラと輝き、更にはエルフェリーンが同じような顔をして列を作っている。


「ラライと師匠も並ばないで下さいよ……」


 口に入れようとしたが一匹と二名の列に、口に入れることなく声を出すクロ。


「クロだけズルい~私も食べる~」


「そうだぜ~僕も食べたいぜ~」


「キュルキュル!」


「もう内緒にできないな……」


 クロの漏らした言葉に肩を落とす白亜は口を開けたまま固まる。


「でも、味見はしないとな」


「キュル~」


 あんぐりと開けた口から歓声を上げる白亜の口に冷ましたジャガイモを入れてやるとハフハフとしながら咀嚼し尻尾を揺らす。


「あ~ん」その後ろではラライとエルフェリーンが大きく口を開け、続々と集まってくるオーガにエルフたち。


「まったくラライは……」


「ビスチェは行かなくてもいいのかしら?」


「なっ!? 何で私があ~んされなきゃならないのよ!」


≪私はあ~んして欲しいですね~≫


「カレーといいましたか? あれにもウイスキーが合うと思うのですが……」


「お腹が減った……」


「早く食べたい……」


 ラライが頬を両手で押さえて「おいひぃ~」と叫び、エルフェリーンが後に続くと、クロは米の炊き具合を確かめ皿に盛りアイリーンに声を掛けると、素早くカレーを掛ける作業を手伝い振舞われるカレーライス。


「これはまた変わった料理だね」


「米にかかっているのがカレーよ! クロの得意料理ね! おかわりもいっぱいあるから沢山食べなさい!」


 ドヤ顔で仁王立ちするビスチェを余所にカレーを口にするオーガやエルフたち。

ルビーもカレーを口に入れ味わいながら食べつつも勢いよく食べ始めたオーガの乙女たちに、これはすぐにおかわりしなければ無くなると頭を回転させ匙のスピードを速める。


「おかわり!」


 ラライが一番におかわりを宣言すると続けざまにオーガたちが声を上げ、フランとクランも立ち上がる。


「早食いは体に悪いから、いっぱい噛んで食べる!」


 クロから声が飛ぶがカレーのおかわりを用意する手を動かし、あ~んの列のように並ぶ乙女たちにおかわりのカレーを用意するのだった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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